表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/96

4−9 騎士に習う (1)

 ランバート王子が無表情な侍女を連れてフォーウッド家にやって来た。

「子爵には話を通してある。後学の為に話を聞きに行くぞ」

「為になるなら行くけど…拒否権ないんだよね」

「俺とそいつの思いやりだ。有難く受け取れ」

「否定しないから肯定、って答え方はずるいと思うんだよ」

「これも貴族のやり方だ。覚えておけ」

「むしろ強引な騎士のやり方…そうか、手ほどきを受けられると」

「そういう事だ。お前は武芸を教わった事が無いとこちらに来る時に言っていただろう」

「よく覚えているね」

「人の話は覚えておけ、と子供の頃に教わっている」

「なるほど、王家って言うのは人の話を聞く仕事だからね」

「騎士の方が向いているとは思うのだがな」

「なるほど」

「何がなるほどなんだよ!?」

「同意しているんだから有難く受け取ってよ」

「何がなるほどだか気になるじゃないか!」

「下々の言う事などお気になさらずに」

「こんな時だけ敬語使うな!」


 そうしてランバートはキアラを騎士団の練習場に連れて行った。女騎士の案内で女性用更衣室に着いたキアラは、付いて来た侍女に騎士見習い用の練習用の服に着替えさせられた。令嬢に侍女がつくのは悪い噂にならない為の予防線だが、見習い騎士の練習服など男が一人で着替えられるものだ。王城の侍女等と言う最上級の侍女に手伝わせるのは心苦しいが、お互い気にしないのがルールだろう。だから着替えが終わった時に「ありがとう」とだけ伝えた。無表情な侍女は会釈をしてそのまま付き従って来た。


 屋根の高い室内練習場に女騎士の案内でやって来たが、女騎士は室外で待機する事になっている様だ。機密保持の為だろう…近衛も第一騎士団にも暗殺者が混じっていた。王弟ヴィンセント以下の反国王派に情報を与えない為に、ランバートも気を使ってくれている様だ。


 そしてランバートが紹介する男は、目つきが鋭くどことなく悪者臭が漂う男だった。つまり、精悍な騎士と言うより酒場の用心棒の様な、きっちり感より少しだらしなさを感じる男だった。ランバートの印象も同じらしく、紹介が杜撰だった。

「マーク・カミングス、こう見えて正騎士だ」

「おいおい、公務ならちゃんとしてるだろう?」

「公務じゃない時もしゃんとしてるのが正騎士ってもんだろう」

「そんな奴もいるな。貴族出ならな」

どうやら平民出で腕一本で騎士になった男らしい。なるほど、手ほどきを受けるならこういう男にすべきだろう。

「キアラ・フォーウッドです。養女な為、出は平民です」

マークはそこは気にしていない様だった。

「出身は関係ないぞ。お前に人の話を聞く耳と頭があるかが問題だ」

「仰る通りです。未熟者ですがお話を伺いたく、よろしくお願いします」


「突きが見たいって話を聞いたが、それで良いか?」

「まず突きですが、その他の動きの流れも見せて頂けると有難いです」

「ちょっと待てよ」

そう言ってマークは手に持つ木剣を軽く振り回した。体のどこかに力が集中する事も無い、上手いウォーミングアップだった。

「ちょっと突いてみるぞ」

「お願いします」

やはり体全体に力がかかった突きだった。体の中心から上腕までの力が強い。この調子で本気の突きをやって貰えば、参考になるのではないか。

「この辺りに相手がいると考えて、突き破るつもりの突きをお願い出来ますか?」

キアラは手で『この辺り』を示した。

「殺る気の突きって訳か」

「言葉は悪いですが、そういう突きを」

「分かった」


 マークは息を吸い、吐き、もう一度吸って一瞬間を開けた。瞬間的に太腿から背中、肘までに力が漲って行く。

「はっ!」

日中でも常人には目で追えない速さの突きだった。流石に王子が連れてきて見せるだけの事はある。だが、マークは顔を顰めた。

「何をやった?」

キアラを見て言った。そりゃあ言うだろう。

「前回、相手がその防御膜を破ったんですよ。だからどのくらいか比較する為に空気の防御膜を作りました」

「グラハムと比べてどうだ?」

「同じ様に一枚目は破りましたよ。人間辞めてませんか?」

「馬鹿な特訓は死ぬほどやったが、まだ人間だろうよ。噂になるほどの剣は使えてない」

「そうですか…」

このレベルの剣士はまだいると言う事か。乱戦になった時は大分上手く立ち回らないと簡単に殺されてしまう、とキアラは落ち込んだ。


 それを見てランバートが口を開いた。

「そいつは態度が悪いから出世しないだけで、第一騎士団では一番の使い手だ。そう落ち込むな」

「悪いのは口だけで態度はそれほど悪くないぞ」

「口が悪いと態度も悪く見えるから安心しろ」

「そうか。じゃあ黙ってれば良いんだな」

「口の減らない性格で何を言うか」

…顰めっ面をする事が多いランバートだが、こうして見ると仲間同士では気安く喋っている様だ。何か安心したキアラだった。

 行数で管理していると実際に投稿しようとした時に意外と少ない文字数の事があります。今回は文字数が少なく申し訳ありません。明日も更新します。


 本作と関係ない話で申し訳ありませんが、フランシスコ教皇の御冥福を心からお祈りします。私はどちらかと言うとプロテスタント寄りですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ