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4−6 立ち合いの後 (1)

 何らかの官庁の敷地内を走ろうとしたが、体に異変がやって来た。怠い、眠い…いつものアクションの後の反動なのか。仕方なく空気の翼を伸ばし、飛ぶ事にする。足を使って走るより速く動けるが、なにしろ眠い。この様子でフォーウッド子爵家まで他人に見つからない様に辿り着くのは不可能だろう。眠気で注意力が無くなっていく…


 待てよ、官庁街の近くには官舎がある筈、コーデリアの部屋はそこにないだろうか。官庁内にはまだ少数の人が残っている建物がいくつかあったが、その北に人が多数いる建物があった。多分官舎だ。コーデリアの呼吸を思い出すが、どれがコーデリアの息か分からない…って、今見てる官舎は男性向けだ。凄く大きな音でおならをしている奴がいた。どこだよ、女性棟は…あ、鉢植えが沢山飾ってある建物、こっちは女性棟っぽい。


 安心して一瞬気を失ったらしい。地面に激突して転がってしまった。痛くて目が覚めた。とりあえず擦りむいた膝を治療する。よし、血が止まった。どこだよコーデリア…あ、これっぽい。鼻歌歌ってるから呼吸が違ったけど、肺から口に流れる空気に個性がある。痛、頭を打った。また安心して気を失って倒れたんだ。時間が無い。一息にコーデリアの部屋の窓の前まで飛び、窓の外に人が立てる空気の床をつくる。窓の閂を空気を操り引っこ抜き、窓を開けてそこに飛び込む。


 コーデリアは給湯室でお湯を貰い、寝室と小部屋の二室を備えた自分の部屋に入るところだった。小部屋の机にティーポットを置き、小暖炉の前に置いた鉄の台の上に置いたパイを皿に載せようとした。温め直していたんだ。そろそろ行き遅れ気味のコーデリアにとって、毎夜のお茶うけのスイーツが唯一の楽しみだった。色気より食い気になりつつあるのだ。


 そんな時、寝室から大きな物音がしたから、暖炉の灰かき棒を持って寝室の扉を開けた。

「何者!?」

空いた窓の下に蹲る人物を見つけてコーデリアは灰かき棒を向けた。

「…ごめん、コーデリア。フォーウッド家に連絡して…」

「キアラ!?」

キアラはコーデリアに見つかる前に蝙蝠女コーディネイトから部屋着に外見を戻していた。そんな部屋着を着て倒れこんだキアラに、コーデリアも何か緊急事態だとは理解した。

「怪我をしてるの!?」

「…してない。ただ、眠い…」

そうしてキアラは動かなくなったが、コーデリアが触診しても魔力はゆったり体内を循環している。つまり、生命維持に問題は無いんだ。コーデリアは少し迷ったが、死んでないなら数秒間を置いても大丈夫だろう、と判断した。つまり、温めたパイを紅茶で流し込むのを優先したんだ。うん、でも数秒だから問題ないよね?ちゃんと救護室には運んで貰うからね。


「キアラ、起きなさい」

頬をぺちぺち叩く感触でキアラは目を覚ました。見慣れない部屋に数人の人間が立っている。

「うん?コーデリア?どうしたの一体?」

「どうしたのはこっちのセリフよ。急に私の部屋に飛び込んできて、何があったの?」

キアラは暫く何も思い出せなかった。何だってコーデリアの部屋に飛び込んだ?つまり空を飛んでた?最近夜は部屋から出なかったぞ?…あ、蝙蝠先輩の呼び出しがあったんだった。

「コーデリア!不審者の集団が王城に走って行こうとしてたんだ!退却したかもしれないけど、遠回りしてまた進んでいるかもしれない!王城へ連絡を!」

それを聞いた部屋にいた男が声を出した。

「不審者の集団は消えてなくなった。王城の警戒態勢は上げてある。だから、何があったか教えろ」

見ると第三王子ランバートが不機嫌な顔をしていた。夜起こされたからかな?

「あ~と、え~と、呼び出しがあったんだよ」

「誰からだ!?」

相変わらず怒りっぽいぞこの男は。整理してから話さないと会話にならないな。

「部屋で地図を広げてたら、窓の外に蝙蝠が二匹飛んで来て、どこかに連れて行きたがってたんだよ。だから部屋から飛び出して、貴族街を迂回して官庁街に北上して行ったんだ」

「何の地図だよ!」

ランバートが興奮気味で会話にならないので、コーデリアが取り持った。

「ちょっと殿下、まず事の次第をキアラに話してもらいましょう。突っ込みなり説教なりはその後で」

「別に説教なんてしないぞ」

ランバートはコーデリアの言い様に不満を持った様だが、とりあえず黙った。

「じゃあ、官庁街に話を戻すと、30人くらいの集団が小走りに進んでいたんだよ。それで、蝙蝠達がどうやら私に何とかしろと言いたい様なので、後ろの二人をのしたら、先頭の方の男が制止させて、私を半包囲にしたんだ。その上で、指示を出した男とやりあった。大分危なかったけど、警備員か何かが声を出して集まってきそうだったんで、連中は退却した、と思う」

「危なかったって、どういう事だ!?」

だから興奮しないでよ、と言っても仕方ないんだろうなあこの男は。

「相手は長剣で突いて来たんだけど、私の防護膜を突き破る様な達人だったんだよ。そうなると長剣対素手では反撃のし様が無かったんだよ」

「だから何でそんな危ない相手とやりあったんだよ!?」

「だから、私の上司は何も言わない。蝙蝠に連れて行かせて、見たままで判断しろって言うのが上司のやり方だから、多分、こいつらを阻止しろって意味だと思ったんだよ。ただ、私には手に余る相手だったと言うだけ」

「だったらさっさと退けば良いだろう!?」

「だーかーら、相手の方が速度も力も上なんだよ。迂闊に逃げられないんだよ」

「だから何でそんな相手とやりあうんだよ!?」

流石に話が進まないと思った王子の護衛のジミーが発言した。

「殿下、それは後で。まず戦闘の詳細を確認し、相手を推測すべきだ」

コーデリアもジミーに追従した。

「殿下、まず相手のやり方から犯人を推測し、捜査するのが優先でしょう。まずキアラに詳細を喋って貰わないと」

ランバートは何とか感情を押さえて、情報を得るのを優先しようとした。

「…分かった。キアラ、相手との戦闘の詳細を言え」

うん、ランバートも納得してない様だが、私も納得しないぞ。でも王子相手に口喧嘩は不味いな。

「えーと、その、王子様は納得しないかもしれないけど…」

ランバートはキアラの発言を遮った。

「バートで良い」

「はい?」

「王子とか殿下とか言いたくないんだろうから、バートで良い。隣の家のクソガキだと思って話せと前にも言っただろう」

「別に言いたくない訳じゃなくて、機嫌を損ねたあんたにどんな呼び方をしても怒り出すかと思ったんだよ」

あんまりな言い方に却ってランバートは気落ちした。

「そこまでガキじゃない。以後はバートと呼んでくれ」

 『ガキじゃない』と言っている内はまだまだガキで、本当にガキでなくなると『俺も若い頃には無茶したもんだ』と昔話をする様になります。そうなると未婚の女性の恋愛対象にならなくなります。この話のテーマと全く関係ない話題ですが。


 明日はクリスティンの更新なんですが〜。文章が進んでくれない…

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