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1−3 冷たい町人

 港湾都市の繁華街の外れの公園に降り立つ。人気は無い。ここは街娼達が客を取る場所だが、今は船が少ない。客はいないのだろう…つまり街娼達は凍えて飢えている。こと切れる者も出ている事だろう。月が開けて私達には月給が出たので多少の金はあるが、本当に多少の少の方だ。


 とりあえず夜の街である繁華街から一般の商店街に小走りで向かおう。繁華街自体に客が少ない。やはり港に入る船が少なくなっていて、船員の客が少ないんだ。客が少ない以上、マフィアの下っ端の見回りも少ない。空気の流れで人の流れを読むが、マフィアらしき者はちょうどこちらにはいない。繁華街を抜けて商店街に入る。そろそろ店じまいをする頃だから急がないといけない。なんとかまだ営業している古着の店を見つけて入る。


 薄暗い店内は衣服の良し悪しを見難くしているのだが、能力を回復した私なら夜目が利く。外套はいくつかかけてあるが、ボロから選ぶ。何せ持ち金が少ないのだから外套にかけられるお金は限られている。穴は開いていないがシミが付いている物、袖が擦り切れている物、何か所が破れている物を選んで主人の前の台に持っていく。

「それぞれいくらになる?」

主人は一目私をみた後、値段を告げる。多分、吹っ掛けても分からないと思われたのだろう。

「銅貨20、15、10だ」

私としては溜息を吐くしかない。

「こいつはこことここにシミがあるよ。それで銅貨20はないだろ」

「じゃあ、18だな」

話にならない。新品でもない平民向けがこれでは。

「こいつは袖が擦り切れてるよ。15はないだろ」

「シミがあるのが18なんだから、まけても14だな」

「こいつはこことここが破けているんだ、10はないだろ」

「だからまけて10なんだよ。下げられないね」

くそう、もう閉店間際で他所の店も閉まるだろうからあせって買うと思われているな。実際、今日買って繕いたいし。そうなると擦り切れよりは破れの方が良い。ツギをあてて縫えば良いのだから。

「じゃあ銅貨10のを買うよ」

「まいどあり」

見慣れない若い女は工場を解雇された女である事が多いのだろう。だから街の商品の相場が分からない。繊維工場の女性労働者は工場から出してもらえないから世間知らず揃いだ。こうして工場を出た女達はなけなしの金を剥ぎ取られて急いで街娼として客を取るしか無くなる。街娼の上前をはねようとするマフィアの下っ端もやくざだが、商店主達も堅気とは言えないよ。困った女達を死に追いやって何とも思わない鬼畜揃いなんだから。


 さて、この小汚い外套をそのままツギをあてて着るのも嫌だ。街娼の女達の住む廃屋の方に洗濯用の用水が無いか見てみよう。繁華街から公園を抜けて廃屋のある地域に向かう。廃屋の向こう側に小川が流れているのが空気の流れで分かる。廃屋の北の方、つまり上流で洗おう。


 ざぶんと買ったばかりのボロ外套を水に浸ける。手が冷たい!なんとか水の中で揉んで、洗った事にする。ぎゅっと絞って水分をなるべく落とす。短時間の作業なのに手が痺れる様に冷たい。外套を木の枝にかけ、治療魔法で何とかしよう。右手のひらを左手の甲に付けて左手の血行を早める。何とか左手の感触が戻ってきたら、逆に右手を治療する。とりあえずあかぎれにもしもやけにもならずに済んだ様だ。


 蝙蝠達は我関せずで外套と同じ枝にぶら下がっている。まあ、上司の指令がない事をやっているのだから手伝ってくれる筈が無い。

「帰るよ」

外套を手で持って飛び上がろうとすると、蝙蝠達も先に大岩の方に飛んで行く。私は外套だけ風の膜で覆わずに飛んで行く。これで少しは水も飛ぶ筈だが。

 

 大岩の近くで蝙蝠達は脇に逸れて飛んで行ってしまった。もう私は寮に帰るだけだから監視は不要になったんだろう。お役目ご苦労様だ。私は大岩に降りる事無く工場の壁を越えて敷地内の林の間に降りる。外套は殆ど乾いていない。この温度じゃあねぇ…


 寮の自分の部屋に窓から入り、窓を閉める。真っ暗だが私は夜目が利くので、縫い物をするのも問題がない。部屋の中で籠に入れて置いてある裁縫用具を机に載せる。練習用に貰った端切れを破れ目にあてて縫いつける。湿った衣類と乾いた布を縫いつければ乾いた後で皺が出来るがしょうがない。廃屋に住む女達は明日にでもこと切れるかもしれない。助けたいなら一日も早く差し入れを持っていく必要がある。もっともこちらも金が無いから数人分しか差し入れられないが。それでもしないではいられない。何せ彼女達は数年後の私達なのだ。

 進行が遅いかな…明日も更新します。

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