47「視聴者どもを分からせる」3
:え………
:うそ………
:これ、マジ?
:もうどこからツッコむべきなのか
:やばい、俺今吐いてたわ
:これってさ、ガチなやつ?ガチで人殺したやつ??
チャット欄の空気がガラッと変わった気がする。さっきから僕を罵倒し誹謗の限りを尽くしてやがった牧瀬のチャンネル視聴者どものコメントが、困惑一色となった。
虚空から知らない誰かが引きずり出されたうえ、そいつが僕にしこたまぶっ叩かれまくり、ついには動かなくなったところも見させられたのだから、無理もねーか。
「霧島先輩!その人はいったい?しかもその人……さっきから動かなくなってますけど、まさか……?」
「治癒」スキルでさっきのダメージから回復してまた立ち上がってきた牧瀬が、恐ろしいものを見る目で僕に問うてくる。体の傷は治ってるが、魔術使用による体力の消耗はかなりのようだな。
「オイオイ、こいつが誰かだって?つれねーこと言ってやんなよ!?テメェにお熱な支持者だってのに!」
「え……!?」
「同時に、さっきまでこのライブ配信にコメントをしてやがったテメェのチャンネル視聴者だよ。この俺を散々馬鹿にしてやがったゴミ糞視聴者、な の!!
虎狼丸ってUNのやつだよこいつは!本名は虎沢とか言うんだとよ!」
:え、虎狼丸さん?
:詩葉様のライブ配信には必ずコメントしてる人だったよね
:え、あの人が虎狼丸ってマ?テキトー言ってるじだけじゃあ
:虎狼丸さーん、さっきからコメントしてないけど、観てるなら何かコメントしてみてよ
:コメント出てこないね。トイレでも行ってんのかな
しばらく虎狼丸を呼び続けるリスナーどもだったが、当然奴のコメントが出てくるはずがない。だってここでぐちゃぐちゃに死んでるのが、虎狼丸だもんなァ!!
:あの……僕、前にオフ会で虎狼丸さんと会ったことあるんですけど、その人……虎狼丸さんで間違いないです
:↑え?マジですか??
:ちょ、本人知ってる人がいた。てことはマジで、霧雨に蹴り殺されてる人が?
:は!?さっきまで離れた場所で配信観てた人が、配信現場に引きずり出されたってこと!?
やっと事態を飲み込みはじめたリスナーどもが騒いでくれて、場がようやく温まってきたところで、そろそろ僕から種明かしといこうか!
「そうさ!その通りだ!!一部の勘の良いゴミ糞視聴者くんの言う通り、これも僕のスキルの仕業さ!レベルMAXとなった特定スキルと召喚スキルを組み合わせれば、このように遠く離れた奴を僕のところに引きずり出すことが出来るんだよ!!」
僕の説明に牧瀬はひどく衝撃を受けた顔になる。これを観てやがる視聴者どもも同じ反応してそうだぜ!
特にムカつくコメントを書き込んでやがったクソ視聴者をここに引きずり出して見せた汎用スキルの「召喚」……契約した眷属獣を呼び出すのが主な用途となってるが、こいつをレベルMAXにするともう一つ面白い特性がついてくる。
何と、スキル「感知/特定」で正体と居場所を突き止めた人物を、僕のところに引きずり出し、強制召喚することが出来るようになるのだ!!
どれだけ離れた場所にいようとも、そいつを無理やり僕のところに呼び寄せられる……逃がした獲物や手の届かない敵を捕まえるのにこれ以上無い神スキルだ!!
「と、いうわけだァ。次いくぜェ!えーと次はー、僕のこと最低級の雑魚だのクズだの底辺だの死ねだのと罵倒した他、僕を直接ボコってやるとかフカシをこいてもやがったあのクズ野郎。
そうだ、DQヌとかいうやつだ。こいつにしよう―――」
DQヌ:あ、ああ!?や、やれるもんなら……
そう宣言して、牧瀬のスマホを操作し、「DQヌ」のアイコンをタップし、スキルを発動。僕の目の前に再びウィンドウが現れ、そこにはDQヌの特定情報が記載されていた。
「よーし!テメェが誰で今どこに居やがんのかも、バッチリ分かったぜェ!?大阪市○○区の○○○○○に住んでやがんのかァ。
それじゃさっそく、僕にぶち殺されに来いやァーーーーー!!」
そう言って「召喚」を発動した直後、僕の周囲に火の包囲網が形成された。牧瀬の魔術…宮木どもを逃がした時にも出してきた足止めか!あの、クソアマが……ッ
「先輩……もう止めて、下さい!自分が何をしているのか、分かってるんですか!?探索者が一般人を殺害すれば……先輩は―――――っ」
「だ ま れ よ!!クソアイドルがァ、僕の邪魔をすんなーーーーーァ!!」
負の感情を呼び起こして、爆発的な力を引き起こす。歪に撓んだ巨腕によるただのパンチで、僕を囲っていた火は全て消し飛んだ!
「そん、な!?私の全力の火が―――」
「テメェよぉ、僕に負い目があるんだよなァ?だったらこれ以上僕の邪魔してくんじゃねーよ!」
「転移」で牧瀬の目の前にワープし、呆然としてるこいつの顔を力いっぱいぶん殴る。牧瀬は地面を何度もバウンドしながら転がり、手にしていた魔術杖を手放した。僕はその杖を拾うとバキッと割りばしみたいにへし折ってやった。
「これでご自慢の魔術はロクに撃てなくなったよな~~?テメェ自身にも深手を負わせたことだし、邪魔はもう出来ねぇだろう。
さあて、そろそろ出てくる頃かァ?」
僕だけが見えるウィンドウから裂け目が生じていく。そしてそこから叫び声とともに誰かがずるずるっと出てきやがった!
「なああああ!?んだよこりゃ!さっきまで自分の部屋にいた、はずじゃあ―――」
剃り込みが目立つ髪の筋肉質のタンクトップと若い男が、自分が探索エリアに来てるという現実を受け入れられずにいる。
んなことはどうでもいい!!こいつがそうか、僕をボコってやるってほざいてやがったイキったクソ視聴者は!ネーム通り、DQNっぽい見た目してるな。僕がとても嫌いな見た目をしてやがる、もっと殺したくなってきた…!
「よおDQN野郎……いや、藤林」
「ひっ!?き、霧雨咲哉ぁ!?」
僕が間近まで迫るとDQN野郎は短い悲鳴を上げて、後ずさってへたり込みやがった。ネット上ではあれだけ強気で偉そうにイキり散らしてやがったくせに、いざ対面するとこんなビビりを晒すとか!なんて腰抜けな小物だ!!
「何だよ悲鳴上げやがって!オラ、かかってこいや!牧瀬をぶん殴った僕をボコりてーんだろ?目の前にいるぜ、ほら、かかってこいやクソゴミ野郎が!!」
だが小物だろうと、子犬みたいにギャンギャン吠えて、僕を馬鹿にしやがるのなら、徹底的に潰すけどな!!
「く、くそぉ、くそおおおおおおお!!お、俺を誰だと思ってやがる!?関西支部所属の探索者だぞ!?Ⅾランクのエリアを探索してる俺が、て、てめーなんかにやられるはずが―――」
やけくそ気味に殴りかかってきたDQN野郎の拳を、ハエ叩きみたいにバシッとはたいてやる。奴の右手が上方向に折れ曲がった。
「ぎゃああああああああ―――ガッ――!?」
手をおさえて悲鳴を上げてるところを、後ろに回り込んでその後頭部を掴み、ダンジョン前の硬い壁に顔を強くぶつけてやった。
ガン!血しぶきが舞う。返り血がついたがお構いなしにそのまま壁に何度も何度も強く、強く強く強く叩きつけまくる!!
ガン!ゴン!ガンガンガン!ゴシャ!!
最初はじたばた暴れていたDQN野郎だったが次第に抵抗を止め、されるがままとなる。途中で地面に変えてガンガンとやり続けてたら、頭がタコみたいにふにゃふにゃになった。どうやら頭蓋が全部割れて、骨が砕け散ったみたいだ。あーあ、顔の原型完全に崩れてらぁ。
「そうだ、せっかくのライブ配信だ。テメェらにも見てもらおうぜ?僕を馬鹿にして侮辱し煽りまくった愚かなクソ視聴者2号くんの、無残な末路をなァ!!」
そう言って牧瀬のスマホ画面に、顔がぐちゃぐちゃに潰れて無くなったDQN野郎を映してやった!
直後、チャット欄のコメントが滝のように流れはじめ、阿鼻叫喚のコメントで埋め尽くされ、大炎上した!!
ウケる!マジウケる~~~~~~~~っ!!




