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38「ミヤマキパーティを分からせる」


 「小恋乃さん……もう先に行っちゃってるんだ。早く合流しないと“この私を待たせ過ぎるとは大した重役出勤ですこと”って感じの小言を言われちゃいそう……」


 今日は探索者ギルド南関東支部に所属している女性探索者…宮木小恋乃みやぎここのさんとそのパーティ「ミヤマキ」とのコラボ探索配信をすることになっている。年は私より一つ上の高校3年生。

 小恋乃さんも私と同じように、ただの探索者業だけでなくアイドル寄りの探索配信の活動もやっていて、配信歴は私よりもまだ浅い。国内の探索者ランキングは100位の上位ランカー。

 高飛車で子供っぽい言動がネットだけでなく世間全般でも絶大な人気を勝ち取っていて、正直私よりも知名度も人気も高いと思ってる。


 ただ……小恋乃さんは私のことやたらとライバル視してきて、事あるごとに競い事を仕掛けてくることもあるから、ちょっと苦手だったりする。悪い人ではないことは分かってるんだけど、けっこう憎まれ口を叩くところが、ちょっと……。


 「……それにしても、追伸の…職員がみんな不在だったって……いつからみんないなくなったんだろう。探索エリアへ出発する前に、ちょっと館内を見て回ろうかな」


 そう思い、上の階に行った途端、思いもよらないものを目にした。


 「ここって確か、お金と買い取った物を保管している、ギルドの金庫となっている部屋よね………。扉が開けっ放しになってて、中も………めちゃめちゃに荒らされてる!?」


 ここの職員でも一部の者しか立ち入りを許されてない部屋だけど、事態が事態なので入らせてもらう。保管棚にはどれも鍵穴がついており、厳重に施錠されていたはず。それがどれも壊されている、むりやりこじ開けられたのが明らかだ。分厚い金庫は汎用スキルを用いても壊れない特別製の造りをしていると聞いたことあるけど、それすらも何か途轍もない力で無理矢理こじ開けられている。

 当然、どの保管棚にも素材は無く、金庫にもお金は残っていない。


 「うちのギルドが………強盗の被害に?そんな、戦闘のプロが集う探索者ギルドを襲う人が、世の中にいるはずが……っ」


 そうは言っても現実にこのギルドから金品が大量に盗まれているという事態が起こっている。


 「それに、上の階にも誰もいない……。強盗の件といい、何がどうなってるの?」


 小恋乃さんはこの事を知らないと思っていい。でなければ置き手紙に何もこの事について何も書かないはずがない。


 「あと行ってないところは………地下の訓練エリア」


 一階に戻りエレベーターを操作しようとしたところで、操作盤が壊れていることに気付いた。なので階段で降りようとしたのだけど、降りる先が瓦礫の山で進めなくなっていた。


 「な、何これ…!?どうしてこんな………ギルドで何があったの!?」


 ここまでくるとただ事でないことが起こったのは明らかだ。それに何だか、嫌な予感がする……。


 「公安に通報しなきゃ……。いえ、それよりも先に、小恋乃さんと合流するのが先かな?事情を話して一緒にここに戻ってから、通報するのが良いような………うぅ、立ち止まって考えるよりも、動きながら考えよう!」


 まとまらない考えを抱いたまま、私は小恋乃さんがいる探索エリアへ駆け足で向かった。







――咲哉視点――


 Bランクのダンジョンから出てきた僕が出くわしたのは、水色のドレス衣装を装備した黒い髪の少女を中心とした若い男女のパーティだった。

 大きな胸の谷間が少し見えて、割と際どいドレスだな……その女を一目見て最初に思ったのがそういう感想だった。

 それにしてもこの女、どこかで見たような気が……


 「そこのあなた、今このダンジョンから出て来られまして?」

 「そうだけど。そういうあんたは、どこかで見た気がするんだけど、どちらさんで?」

 「これはこれは、名乗りもせずに失礼しましたわ。私は南関東支部から参りました探索者、宮木小恋乃と言いますわ。

 どこかで見たというのは、ネット配信などではございまして?私、女子高校生でありながらも、国内ではトップの人気を誇るアイドル的存在の配信探索者のですので!」

 

 そう自己紹介する宮木は胸元に手を当てて、自慢げにするのだった。そうそう思い出した、こいつも牧瀬詩葉と同じアイドル配信探索者で、その人気はあいつと同じかそれ以上だったりする。


 「ちなみに国内探索者ランキングは100位。世界ランキングは500位くらいでしたかしら」

 「今は499位となっていましたよ、小恋乃さん」

 「あら辰男さん、情報が早いですわね。この方たちは私のパーティ『ミヤマキ』のメンバー、私のお仲間でしてよ」


 宮木に話しかけた男と他男女数名を指してそう紹介する。そのミヤマキとやらのメンバーだが、さっきから僕に向けてる視線が全然好意的なものじゃない。


 「それで、あなたはどなたですの?」

 「僕は……霧雨。あんたと同じ探索者をやってる高校生だ」

 「霧雨………その名前、どこかで聞いたことがあるような。それに、そのお顔も見覚えが………」

 「小恋乃さん、そいつ霧雨咲哉ですよ!この業界の人間なら一度は聞いたことがある、あの“最低級の探索者”ですよこいつ!」


 その時、宮木に辰男と呼ばれた男が、薄ら笑いを浮かべながら僕を指しながら宮木にそう告げた。


 「最低級の探索者……?どこかで耳にしたことありますわね」

 「北関東支部で数年間ずっとEランクのエリアを満足に攻略出来ずにいる探索者がいるって話を、以前に長下部さんから聞かされました。その時に聞いた名前がその霧雨って奴だったんです。

 北関東所属の探索者たちは皆、奴を“最低級の探索者”と呼んでいるんですよ」


 あの金髪クソゴミ眼鏡、他の支部の探索者にも僕の悪評を広めてやがったのか…!あーくそが、何だかイライラしてきたなァ……。


 「ああ、思い出しましたわ。少し前に詩葉さんの探索生配信に出ていらっしゃった方ではありませんの!?その前にも確か、別の配信者の……カズキとかいう人の探索ライブ配信にも映っていた、あの情けない探索者でもありますわよね!

 Eランクの魔物相手に袋にされる探索者なんて、とても珍しいものを見たと鮮明に記憶してますわ!

 まあ、あなたでしたの。まさかこんなところで会うなんて」


 人気アイドル探索者の牧瀬詩葉や迷惑系配信者の吉原の切り抜き動画で、僕のことを知ったクチか。どいつもこいつも、僕を嫌な形で覚えてきやがる。


 それで、不名誉かつ屈辱的な称号を付けられているあなたが、どうしてBランクのダンジョンから出てこられましたの?パーティの方々は?まさかお仲間たちを置いて自分一人だけダンジョンから脱出してきたとか?」


 そう勝手に推測して、懐疑的で格下を相手するように突っかかってくる宮木にイラっとする。


 「パーティとか仲間とか、僕にそんなものはいない。僕は今日ずっと一人で活動していたんだよ。Ⅽランクのジャングルとか、このBランクのダンジョンとかをな」

 「な……っ!まさか、単独でBランクのエリアをうろついておられましたの!?」


 全員どよめいた。やっぱり一人でBランクの探索エリアを進むのは普通じゃないらしい。


 「ついでに言うと、僕はさっきのダンジョンを、一人で攻略してやった。お陰で売ればかなりの金になる鉱石や魔物素材がたくさん手に入ったぜ!」

 「はあ!?ウソを言うな!Eランクの魔物の群れにボコられてたような弱者が、上位ランカーのパーティすら苦戦する難易度のダンジョンを、たった一人で、そんな貧相な装備で攻略出来るはずがないだろ!」



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