34「浦辺に復讐する」3
「ひぃぃぃ!?ゆ、許してくれっ、今まで散々馬鹿にしてごめんなさ―――(ドパン!)ぃぎ…!?」」
「たた助けてくれぇぇぇ!今までのこと謝るし、ここで起きたこと全部秘密にするから、見逃し―――(ズドン!)て―――ぇ(ドォン!)―――…」
「るっせえなァ。テメェら全員ぶち殺ルートを曲げる気は、微塵もねェ!今さら泣いて謝って許してもらえると思ってんじゃねーぞ!!」
ムカつくぜ!どいつもこいつも……僕がメチャクチャ強いと分かった途端に手のひら返しして、媚びるように謝罪と命乞いをしやがるから、無性にイライラしやがる…!こいつらも長下部と一緒だ、長年僕を追い詰めておいて、その場の簡単な謝罪で許してもらおうとしてやがる…っ
この期に及んで僕を安く見てやがるのが見え透いてんだよ、腹が立つぜ!!
「ひっ、ひぃぃぃ……もう誰もあんたを馬鹿にしたりしないし、トップランカー並みに強いことも分かったよ!だから、今まで馬鹿にしたこと、ちゃんと謝罪させ――もがっ!?」
「いいか!?この支部に所属しているテメェらは全員、謝ってきても許さねぇって決めてんだ!今までテメェらが僕を虫けらのように扱ったように、僕もテメェらを虫けらと同列に扱ってやるんだよ!
今まで僕を馬鹿にしやがった探索者は全員、ここで死んでもらうぜええええええ!!」
ズガン! 「ぺげれっ」
躊躇いなく引き金を引いて、長下部との決闘の立ち合人をしていたおっさんの頭を吹き飛ばした。
「へっ、ざまぁみやがれ!ミィ、スノウ!あとどれくらいだァ?」
確認出来る中だと、こっちは十人くらい撃ち殺したところだが、二人の方がもっと殺してそうだが。
「ほ~~い咲哉さまー!あたしのところには生きてる人はもういませんにゃ!」
「こちらも同じく、探索者と見なされる人間は、もう残っておりません」
それぞれそう報告するミィもスノウも、体には傷一つついてない。相手はほぼ全員戦い慣れした探索者であるにも関わらず、二人とも無双している。
僕が契約した眷属獣は全員が世界の「超人」探索者並みに強いからな、こんな民度が低いクソギルドの探索者なんざ片手でも足りただろうよ。
「えーっと、じゃあこっちにまだ誰か残ってんのか……………あ、いた」
階段の隅を見ると、長下部の女どもが身を寄せ合って震えてやがった。
「げははははァ、長下部を殺した仇が目の前にいるってのに、そこで情けなく震えてるだけかよ!それでも上位ランカーのパーティなのかァ!?」
目の間に立って顔を近づけてやると、女どもは嫌悪感と恐怖が混じった悲鳴を上げやがった。
「ちっ、耳元で叫んでんじゃねーよ!るせぇなァ!よけいにぐっちゃぐちゃに痛めつけたくなっちまうだろうが!」
「ひっ、ごごごめんなさいぃぃぃ」
「お願い許してください………!」
「な、何でも言うこと聞きますから、殺さないで下さい………!」
涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃさせながら、女どもは必死にお許しを懇願してきた。以前は長下部と一緒に僕を馬鹿にして、奴が僕を甚振ってるところを指差して嘲笑ってたこいつらが、今ではみっともない面で土下座してやがる。い~~~い眺めだぜ!
「んん~~そうかァ~~~何でも言うことを聞く、かァ?ほォ~~~お?」
露出が多い女の生足に視線を這わせて、下卑た表情を浮かべる。
「あーーーっ!?咲哉さまが人間の雌に誘惑されて、発情してるにゃーーー!」
「そんな!?咲哉様、お気を確かに!咲哉様はそのような下等で劣悪な人の雌にではなく、私やミィのような高潔でモフみがある獣人にこそ欲情がそそるのではありませんか!」
「おいゴラ。人を獣人の牝にしか発情出来ない奴にすんじゃねェ。第一、長下部のツバがついてるこんなクソ女なんざ犯す気になれねェよ!殺して肉餅にしてやりてェくらいだ…!」
二人の眷属獣にツッコミを入れつつ、長下部の女どもに殺気を放ってやる。女どもは恐怖と絶望でブルブル震え、泣きじゃくっている。
「………いやまてよ。面白れェことを思いついたぜ。テメェらは後回しだ。先に……そろそろどうしてもぶち殺しておかねーとならねェ野郎の始末をしておくか」
僕の視線は長下部の女どもから、数ある鍛錬ジムのうち一つ……近接武器が多く保管されているジムに移す。あそこから、長下部と同じくらい殺したいほど憎い奴の気配がするぜ…!
「隠れても無駄なんだよ、老害がァ!!」
怒鳴り声とともにジムのドアをぶち破り、中に入る。明かりはついてないものの、化け物みたいに強くなった僕の目は暗い場所でもはっきり見えている。
だから―――
「~~~っ」
視界の端から猛然と襲い掛かってくる中年男の動きも、ばっちり捉えてるぜ!
スカッ 肋部分を狙った一撃を躱した後、襲撃者にわざと背中を見せてやる。何の為に?決まってる、力の差を徹底的に分からせる為!
「ぜぇい!!」
ガンッ! 後頭部に範囲狭めの衝撃がきた。ハンマーや金棒じゃねーな、人の拳サイズの何かだな……。
「おらぁ!!」
三度目の攻撃、そろそろウザったいので、とんできた攻撃を片手で鷲掴みにして止めてやる。
「ば、馬鹿な…っ 二回目は後頭部にモロに入ったはずだろが…っ」
闇討ちの正体は当然というか、浦辺だった。両手には金属のガントレットが嵌められてて、汎用スキル「エンチャント付与」で殺傷能力も上がっているようだ。
「ああ、さっきの。ハリセンで叩かれたのかと思ったぜ。で、探索者を引退して何年も経ったテメェごときの拳で、僕の頭を割れるとでも思っていたのか?エエ!?」
掴んだままの浦辺の右首を万力で握りしめると、ボキメキと奴の手首が砕けた。
「~~~ぃぎやあああああああ!?」
絶叫を上げながらも武装した左拳を振るってくる浦辺。だが狙いは完全に外れ、空ぶってやがる。
「どこ狙ってんだよ、引退探索者が、よっ」
ドゴッ 隙だらけのどてっ腹に、硬く固めた拳をぶち当ててやった。内臓のどれかが潰れる音がした。浦辺は血反吐を吐いて、その場にどさりと倒れた。
「がふっ、おえぇ……っ」
「オイ、これで終わりになると思うなよ?テメェは間野木や長下部と同じように、死ぬほど後悔させてから殺してェんだからよォ」
うつ伏せで倒れてる浦辺に耳元でそう宣言して、ガントレットを嵌めた左手をグシャっと踏みつけてやる。ガントレットは壊れ、中の左手にも痛みを与えてやる。
「が……ああっ」
悲鳴を上げる浦辺を嗤って見下しながら、左手を何度も踏みつけてやった。
「がっ、ぎゃあああああーーー!!」
何度も踏みつけてるうちに、奴の左手はぐしゃぐしゃに壊れた。物を握ることも出来まい。
「あーあ、テメェの手、どっちもイカレちまったなァ?そういやテメェ、現役の頃はそのガントレットを用いた徒手格闘で名を上げてたんだよな?昔事あるごとにテメェにマウントとられる中で、何度も聞かされたなァ。
げははは、その両手じゃあ人を殴るはおろか、いつものように鞭でぶっ叩くことも出来ねーかもなァ!?何なら鞭も握れねェんじゃねーか、オイ!」
「ごふっ、げほ………っ おの゛、れぇ……霧島ぁ」
「あ?何だよその目は。まだ僕を見下そうとしてやがんな?これだけ力関係が逆転したことを教えてやってんのに、立場はまだテメェが上だとか思ってんのか?」
浦辺の面が心底カンに障テメェがこんな目に遭ってるのがテメェのせいだってことをまだ理解してねーのか。
「だったら、徹底的に仕置きしてやらねーとなァ」
汎用スキル「錬成」で、鉄の鞭を生成する。それを手にして嗜虐的な笑いを浮かべながら、浦辺の背中を鉄の鞭で思い切りぶっ叩いてやった!
「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーっ!!」
断末魔を上げた浦辺の背中は、ぶたれた箇所の服だけでなく、背中の肉もベロンとめくれて、裂傷が刻まれていた!




