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32「長下部を分からせる(復讐)」3


――長下部視点――


 どうしてこうなった――?


 今日は最近うちのギルドに加入した新米探索者……間野木つったか?そいつを連れ添って、そいつの仲間にも俺の凄さを見せつけてやるつもりで探索にきたんだ。

 ところが、最近見かけなかった万年最低級の霧雨咲哉ゴミクズが久々に顔見せてきたと思ったら俺クソ生意気な口を叩きやがった。なので活動の前に、この底辺弱者を決闘でぶっ潰してやることにした。

 皆が観てる前でどう甚振ってやろうと考えながら決闘のリングに立ち、いざ戦いが始まった途端―――。


まったく理解出来ない。いや、実際には分かってはいる。ただ、分かりたくないだけだ。

 だってそうだろ?今までずっと底辺を這いずってばかりいた、自分よりはるか格下なはずの奴に、俺は―――。

 失神させられ、長年にわたって鍛え上げた剣技が全て見切られ、さらには技とは呼べない雑な太刀筋に押され、信頼を寄せていた長剣をへし折られ、ぶん殴られて土の味を噛みしめさせられている―――。


 何故だ!?霧雨咲哉がこの俺に傷をつけて土に付けるなど、天地がひっくり返ってもあるはずが……どうなってるんだ!?

 昔から俺と奴の力関係は、前者の俺が絶対だったはずだろ!常に俺が奴を甚振る側・踏みにじる側の「捕食者」で、霧雨はその逆の「被捕食者」側だったはずだ!


 それなのに、実際はその真逆…。いつの間にか俺が喰われる側になってんじゃねーか!

 

 どういうことだよ。誰か、説明してくれ……っ


 あいつは……霧雨咲哉は国内ランキング圏外で、最低級のゴミムシのはずだろ?


 それがどうして、この俺を圧倒しているんだよ………………






――咲哉視点――


 武器を失い窮地に立たされた長下部だが、奴は負けを認めず、決闘は続行。見物人から受け取った剣を武器に、懲りずに僕に斬りかかってきた。

 さっきまでと違い、奴はスキル「エンチャント付与」でもらった武器を強化させた。さっきまで使っていた長剣と同じくらいの切れ味になってやがる。


 「――いいよなァ、俺もそこそこの汎用スキルを会得してはいるけど、そんな良さげなスキル、手に入れられなかったぞ!

 どぉ~~~して、テメェみてぇなクズ野郎が、そんなスキル使えんだよ!?」


 メキョ! 「ぷぐらぁ!」


 嫉妬を呼び起こし、僕の力がさらに増す。剣の柄で長下部の下顎を打ち抜いてやった。そのせいで手放してしまった奴がもらったばかりの剣を、大剣の一太刀でバキン!とへし折ってやったぜ!

だが長下部は外野からまた武器を受け取り、隙を見せた僕に刃を突き刺しに突っ込んだ。

 が、それが何だと言わんばかりに、空いてる方の手で刃を鷲掴みにして止めてやった!長下部がいくら身じろぎして力を入れても、俺の手から剣が放れることはない。

 剣を掴んだままゆっくり近づいてくる僕に、長下部の表情がだんだん恐怖に引きつっていく。その移りようが僕にはたまらなく悦楽だった!


 ドスッ 「ゔ……っ」

 「おっとォ、吹っ飛ぶんじゃねーぞ?まだまだテメェをぶん殴らせろよなァ」


 殴った衝撃で逃げないよう、相手の脇腹を空いてる方の手で添え、長下部の体をがっちり固定してやる。これで、このまま延々とブン殴れるってワケよ―――!


 「オラオラオラ、おぉるァ!げはははははァ!どこを殴ってもいい打ち放題、まるでサンドバッグだなァ!?」


 ガン、ゴン、メキャ、バキッ、ゴスッ……顔を中心に長下部の全身を、力士よりも大きく太くなった手で何度も何度も、執拗に殴ってやった!


 「ひゅ……がっ、あ゛……っ お、い……っ これい゛、じょうは、、、もぉ……やめ゛(ドスッ)ぅぐぇ………」


 聞く耳持たず。支えを外して、腹を踏んずけて地面にどしゃっと落としてやる。

 長下部の顔は蜂に刺されたよりも酷い腫れようで、眼鏡はグシャグシャ、下顎が歪に変形していて、前歯は半分以上欠けてやがる。へへ、今のこいつの方が僕よりブサイクに映ってるんじゃねーのか?




 

 ――長下部視点――


 こんな、こんなはずじゃあ………。国内150位の俺が、万年最低級の霧雨相手に手も足も出せないことなど、あっては、ならないはずなの、に……。

 

 何もかもが異常だ。クスリとかで説明出来る次元じゃねぇ……。こいつは本当にあの霧雨なのか?

 ただ体がデカくなっただけじゃない、何だこの醜悪極まりない人相は?しかも醜いだけじゃなく、何か、寒気をおぼえる程の悪意が、こいつから―――


 や、ヤバい……っ 決闘どころじゃない。このままだと俺は、こいつに、


 殺されちまう―――っ


 ここは、どうにかして―――――


 「はぁ………はぁ………、たの、む゛……提案を、ぎいて、くれ……っ」






――咲哉視点――


 「はあ?提案だぁ?」


 怪訝に聞き返すと長下部は半泣き顔で頷きながら、僕にしか聞こえない声で話しはじめる。


 「霧雨、俺のパーティに入らないか……?それだけの力があるお前と俺が組めば、関東はもちろん、国内でも最強格のパーティに成り上がれるとお、思うんだ…。何なら世界へ進出することだってあり得るぜ……。

 もちろん、リーダーは霧雨にしてやってもいい。俺のパーティメンバーもきっとお前を歓迎してくれるさ!

 お前今まで金に困ってたよな?俺のパーティに加われば、数年後には一般企業の倍以上の月収がもらえるはずだ!」


 長下部の馬鹿げた提案に、ため息しか出てこなかった。そんな僕の反応を良く捉えたのか(何をどう解釈すればそうなんのか)、勝手に話を進めやがる。


 「そ、そうと決まれば、こんな決闘有耶無耶に終わらせて、浦辺所長に謝りにいかないとな……」

 「待てやごらァ、何で僕が謝らねェとなんねーんだ?」

 「ひ……っ それはだな、ほら!お前さっき、浦辺所長に暴力振るったそうじゃないかっ それはちゃんと謝った方が良いぞ。じゃないと今後お前がうちのギルドにいられなくなるだろうし」

 「はァ?意味不明なこと抜かしてんじゃねーぞ!これまでテメェらが僕にどれだけの理不尽な嫌がらせをしてきたか、分かったうえで言ってんじゃねーだろなァ!?」


 さらに怒りが呼び起こされ、身体が膨らみ、自身が醜悪かつ凶悪な存在に変貌した気がした。その証拠に、外野からは「何あれ!?」「醜い……怖い」「嫌悪感ヤバ過ぎて直視してられない……」など僕の容姿を蔑む言葉が飛び交ってやがる。


 「それと、決闘を有耶無耶にしよう、だァ?テメェ言ったよな、僕に落とし前をつけて、その後は僕の眷属獣を僕の前で犯すとか何とか。

 あれだけ悪意振りまいて、下っ衆い決意表明までしておいて、全部冗談でしたーって済ませる気か?それで決闘を無効にする理由になるかってんだクソが!」


 そんな馬鹿げた提案を通そうなら、僕の心に長年引っかかり続けてる、嫌で嫌で気持ちの悪いどす黒い感情をどこにやればいいのか。

 全部テメェらのせいで、こんなぐちゃぐちゃになっちまってんのによ……!


 「そ、そう言わずにさぁ?霧雨にとって悪い話じゃないのは確かだろ?

 ああ、そうだ。じゃあまず俺が霧雨に謝るから――」


 そう言って長下部は力を振り絞って立ち上がると、僕に頭を深く下げてきた。外野が騒然とする中、そのまま謝罪の言葉を告げた――が、


 「悪かったよ。今までのこと。この通りだ。

 でもよ、お前にも悪いところあったはずだ。そんだけ強い力あったんなら、もっと早く教えてくれればよかったのに。そうしてれば霧雨が今まで散々な目に遭わずに済んだろうし、浦辺所長との問題も起きなかった。

 こっちはちゃんと謝ったんだから、霧雨も浦辺所長にきちんと謝るべきだ。そうすれば、お前の今後の探索者ライフはバラ色―――」


 ガッ 僕は無言のまま、長下部の右腕を右手でがっちり掴み、左手でその体のどこかテキトーなところを鷲掴みにして、拘束した。


 「が……っ、なに、を―――」

 「いい加減、我慢ならねェわ。ざけてんじゃねェぞテメェ……」


 腕を掴んでいる方の右手を、最大パワーで握りしめながら捻じっていく。奴の腕からメキメキブチブチと折れる音と千切れる音が鳴る。


 「う~~~~~っ、ぐあああああ!?やめ、何をする気だーーーーー!?」

 「自分はさらっと謝っておいて、正式な謝罪の要求か………まだ僕を最低級だとかで見下す気か、アア!?」


 これ以上なく怒りが膨れ上がる。話を聞いた僕が馬鹿だった。もうこのクズ野郎の話に耳を貸す必要は無い。


 「ハナから決めてんだよ。ここでテメェの体をバラバラにしてやるって。

 ちょっとずつ、こんなふうになァ!!」


 超常的な力を発揮し、長下部の右腕を手の力だけで一気に引き千切った!!


 メキメキャメキョ、ベリ、ビチ―――――ブチブチ!!


 「~~~っぎゃあああああ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーっ!!」


 右肩から先を失った長下部は、拘束が解かれると同時に地面でゴロゴロバタバタのたうち回りやがった!


 「けひゃひゃひゃ!ひゃーーーはははははは!!サイコーだわこれ!長年ずっと僕を苦しめてきた憎い奴が、そぉやって顔を苦悶に歪ませて、激痛に泣き叫んでるところを見下ろすの、マジサイコーだわーーーーー!!

 ぎゃはははははははははーーーーーーーー!!」


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