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31「長下部を分からせる(復讐)」2


 「オラ、いつまで倒れたままピクピクしてやがんだ?僕に落とし前をつけさせるんじゃなかったのか?余裕ぶって僕に攻撃を譲っておいて、まさか今ので終わりだなんて言わねェだろな?」


 嫌味たっぷり含んでそう煽ってやるも、長下部はいつまで経っても起き上がってこない。倒れたフリでもしてるのかと不審に思い、近づいて様子を見ると……オイオイまじかよ。


 「こいつ、今の一撃で失神しちまってるぜ!?立会人もこっち来て見てみろよ!」


 立会人のオッサンは僕に呼ばれるままに駆け寄り、長下部の容態を確認する。


 「ま、まじだ……失神してやがる…っ」


 立会人の呟きにリングの外が騒然とする。スノウだけは「当然です」と言わんばかりのどや顔をしていた。


 「あーあ。こんなあっけなく終わっちまうのか~?全然足りねぇんだが?まあ判決は立会人に任せるぜ。こんな戦い、どうなったって構わねェしよ」


 白けた表情でそう言うと、立会人のオッサンはあたふたしていたが、止む無しといった顔で僕に手を向けた。


 「え、えー勝者、霧雨さく―――」


 とその時、ダン!と地面を叩く音がした。見ると長下部が失神から立ち直り、起き上がっていた。


 「ふ、ふざけるな!!勝手にそいつを勝者にしようとするな!!」


 耐え難い恥辱にひどく憤ってる感じで、体を震わせながら長剣を構える長下部に、立会人は慌てて「し、仕切り直し!」と判決を撤回して席へ下がった。


 「はあ?オイオイ、今完全に僕の勝ち判定が宣言されようとしてたのによ。まだ続けるつもりか?」

 「ああ!?当然だろっ、さっきの判決は無効だ。俺がハンデとしてお前に攻撃を譲ったせいだからな。不覚をとっただけで、俺はまだ負けてない!」


 ……………はあ??こいつ、今の本気で言ったのか?


 「テメェ、まじか?これがルール無用の本物ガチの戦場でも、敗れた後にそんな見苦しい言い訳をするつもりか?」

 「うるさい黙れ!何わけ分かんねぇこと言ってんだ!?とりあえず、お前にハンデが要らねぇってことは、十分に分かった。

 こっからは俺が攻めて攻めて、攻めまくってやるからなーーーーーっ!!」


 そう吠えた次の瞬間、長下部はもの凄い速さで僕の目の前まで駆け寄り、両手で握られてる長剣を振り下ろした。

 とても速い一閃―――が、ひょいと躱してみせる。固有スキル「卑屈症候群」により身体能力が異常に発達していて、長下部程度の移動速度も、振り下ろす剣の動きも、余裕で見切ることが出来る!

 

 「な……!?霧雨如きが、俺の剣を躱した!?」


 僕に剣を躱されたことに長下部は表情を歪ませる。


 「ま、まぐれだ。まぐれに決まってる……!」


 僕の実力をまだ認めず、長下部は長剣での剣技を次々繰り出す。やみくもに剣を振るってるように見えて、実際はちゃんとした技となっている。無駄のない剣の振りかぶり、突き、薙ぎ、足払いなど…どれもが一流クラスだ。国内上位ランカーと呼ばれるだけあって、剣の腕は流石と言ってやってもいい。

 ――が、


 「当たらなけりゃあ、どれだけ綺麗に剣を振っても、意味無ェよなーー、長下部せんぱ~~~い?」

 「はあ、はあ……っ くそくそ、何故だ!?何故掠りもしない!?何故お前如きが僕の剣技を見切ってるんだ!?」

 「何故何故うっせーなァ。つうか避けてばっかなのも飽きたし、俺も剣を出して戦ってやるか」

 

 長下部から一旦距離をとり、スキル「収納」で何も無いところから剣(長下部のよりも厚い刀身で重量ある大剣だ)を取り出してみせる。すると長下部と外の連中から驚愕の声が上がった。


 「そ、それはレベルMAXの収納スキル!?最低級のお前が何故レベルMAXのスキルを使ってんだよ!?」

 「また何故か……聞き飽きたんだよっ」


 今度は僕が間合いを詰めに出てやった。さっきと違う点は、長下部が僕の動きを全く捉えていないこと。なので、どこでも斬り放題だ――――!


 ガギィン! 「ぐぅお……!?」


 剣を当てたとは思えないような鈍い音。長下部は体をよろめかせながら後退した。こいつの身体を今すぐぶった切っても良いんだが、先に力の差を分からせたいってことでわざとこいつの剣に当ててやったぜ。

 こいつには、負の感情でブチ強くなった僕の力と恐ろしさを、骨の髄まで染みるくらい分からせてやりたいからな……!


 「オイオイ、ただ雑に振っただけの剣に何ふらついてんだよ!?俺と違って剣の才に恵まれ、充実した鍛錬を受けて育った温室育ちくんは、この程度でふらついちまうのかーー?」


 盛大に煽り散らしつつ、相手の剣ばかりに剣を当ててやる。振るう剣の重量と僕自身のパワーが相まって、一撃一撃が上位ランカーでもふらつく程に重い。


 「ぐ……ぅおおおおおーーーっ」

 「あっはっは、どーしたァ?いきなり大声出した割にはちっとも僕を押し返せてねーなァ?つうか、さっきからずっとその細長い剣で僕の剣を受けてやがるが、大丈夫かそれ?これ以上の攻撃に、耐えられんのか?」


 実際はわざとその長剣に当ててんだけどな。理由は単純、こいつが絶望する顔になるのを見たいからだ…!

 

 「こうやって―――」


 片手で持った大剣をゆっくり掲げたところで、


 「もう一度、強い一撃を叩き込まれちまったらよォーーーーーっ!!」


 豪速球の如く大剣をブンと振り下ろして、長下部の長剣にモロにぶち当てる!!


 ガ―――――ッ、パキィィィン!


 「な――――――っ、ぁ……!?」

 「ぎゃっはっはっはーーーっ!ついに折れちまったなぁ!?テメェのご自慢の長剣ちゃんが、ポキィって折れちまったなーーー!

 以前僕にこれは国内に数本しかない希少なシリーズだ何だと、えらっそうに自慢してた大事な長剣が、お れ ちゃっ た、な~~~~~~~~っ!?」


 柄から上半分以上が折れてしまった長剣を呆然と見つける長下部を、盛大に嘲笑ってやった!


 「いやいや、まさかあんなテキトーに振った剣で、こんなあっさり折れちまったその長剣、実は全然大して希少じゃなかったんじゃねーのか?脆くてよっっわい剣だったなぁ?

 いやまてよ?弱いのはその剣じゃなくて、テメェの方じゃないかァ?テメェの身体があまりに弱っちくて剣をしっかり持ってなかったから、今のでポキッってへし折れちゃったんじゃねーか?

 や、それも違うな。テメェが弱っちい以上に、この僕の力が強過ぎたのが原因かもなァ!?絶対そうさ!僕のパワーが、テメェの自慢の剣をへし折ってやったのさ!!」

 

 長下部が呆然としているのをいいことに、戦いの最中だと言うのに攻撃するのも忘れて、好き放題にくっちゃべってしまっていた。

 それにしても、長下部のさっきから見せているその面、ケッサクだ……!


 「あーーっはっはっは!ご自慢の剣が折れてショックを受けてるテメェの面、マジで面白れェわ!テメーのそーいう面を見ることが出来て、修羅場を潜り抜けて強くなった甲斐があったってもんだぜ!」

 「ふざ、けるな……!何が、修羅場だ……っ」

 「あァ?何か言いたげだな?」

 「き、汚いぞ!?お前、何か薬を使ってるな?ドーピングで不正に強くなったに違いない。でなきゃ短期間ででこんなデタラメな力がつくハズが無い!」


 剣をへし折られ窮地に立たされた途端、こいつ…僕がズルだ不正だと糾弾してきやがった。ムカつくことに、外野からも僕の不正を疑う野次が飛んできた。

 ああ、ムカつくなァ。そうやって数にものを言わせて、一人を囲って威圧するさまは、何度受けても不愉快だ……!


 「自分のへなちょこさ・実力の無さを棚に上げて、根拠の無いやっかみを言ってんじゃねェ!!」


 怒りに任せた一撃…大剣の峰の部分で長下部の腹を、折れた長剣ごとぶっ叩いてやった。鈍い打撃の音と、奴の体のどこかの骨が折れた良い音が鳴った。


 もっとだ……もっとこいつを甚振ってやるぞ!こいつにはまだまだ苦しんでもらわねーとな!

 僕には絶対に敵わないと思い知らせて、こいつの顔を絶望でもっと歪ませてやるぜ!


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