24「学校で口封じを徹底する」2
「な、何が口封じだっ!いくら未成年だからと言ってもお前は探索者。ここまでの行き過ぎた虐殺をしたのならば、法律のもと極刑は免れないぞ!いや、その前に公安に抹殺されることもあり得るぞ!我々の前で自白もした以上、言い逃れも出来ないいと思え!」
何だよ、まだごちゃごちゃ喋れる気力あんじゃねーか。
「ああ?何が言いたいわけ?」
「い、今ならまだ、お前の罰を軽くさせられる余地があると言ってるんだ。我々を殺さず、警察に大人しく自主すれば、極刑を免れるよう我々が口添えを……弁護してやって良い。
さあ、このまま踏みとどまって、この先の人生少しでもマシな“終わり”を迎えられるよう、こんなイカれた事は止め――」
「――るわけねェだろが、クソ眼鏡。テメェが俺にそんなお情けをかけるタマじゃねぇってことくらい、とっくに分かってんだよ」
学年主任の生野の胸倉を掴み上げて、ギリギリと締めてやる。生野は「ぐえぇぇ」と醜い呻き声を上げて苦しそうだ。
「さっき俺のこと、この学校の生徒ではないとか大量殺人鬼だとか言って、警察にもソッコーで通報しようとしてたくせによォ。見え見えの手のひら返しが僕に通用すると思ってんじゃねぇぞ?ぶち殺すぞテメェ。
ま、この後すぐ殺すんだけど」
「ぐぅおおぉぉっ、ま……待てぇ!私は本当に………」
「つうか、僕はテメェのことも憎く思ってるからな?僕を一方的に退学処分を突き付けやがったんだからなァ」
怒りに任せてさらに強く締め上げる。生野はもうまともに言葉が出せなくなり、苦しみの呻きしか出てこない。
「僕を退学処分にした理由が、成績があまりにも悪いから、だったか?ならフツーさぁ、追試とか設けるとかの救済措置の一つくらい入れるだろーがよォ!
それをテメェは僕に何のチャンスも与えず、テメェら大人だけで勝手に全部決めやがって…!
勉強疎かにしたくれェで人を勝手に退学にしてんじゃねェよ!!」
ブン、ドキャッッ
怒りを爆発させ、胸倉を掴んだまま生野をブンと振り回……そうとしたのだが、近くの壁に頭をおもっくそ衝突させてしまった。
生野の頭から血がどひゃッと出て、首がぶらーんとなって、身体から力が抜けて、舌がだらりと出てきて……つまり死んだ。
「あーあ。もーちょい痛めつけてから殺ろうと思ってたのに、うっかりしちまったぜ……へへ」
「クスっ、そんなおっちょこちょいな咲哉様も素敵です」
スノウの褒めてるのか分からないフォローにどうリアクションしようか考えていると、クラス担任の坪井が立ち上がって、廊下に出ようとする。
「「逃がさないにゃ(逃がしませんよ)」」
ドアの前にミィが立ち塞がり、坪井の腹を蹴とばして、中に追いやる。スノウは超能力でドアをロックさせた。
「坪井せんせーよォ、口封じしなきゃならねェつったよな?テメェもここでぶっ殺されなくちゃならねーの!」
「がはっ、ごほ……っ た、頼む!見逃してくれぇ!僕はこれをやったのが霧雨だってこと絶対話さないって、誓うから!」
「へぇ~~?もうじき退学する生徒の僕の味方してくれんのか?」
「あ、ああ!するとも!僕は霧雨の味方だ!今までだってそうだったように」
ドゴン!近くの机に拳を振り下ろす。机は縦に割れて壊れた。
「馬鹿が!どの口がほざいてんだ…!僕が間野木に虐められてたのをずっと見過ごしてやがったくせによォ!」
「あ………そ、それはっ、間野木たちがそんなことしていたとは、知らなくて………」
「先生が嘘ついちゃいけねぇだろがよォ!?テメェはとっくに分かってたはずだぞ!何故なら僕が直々にテメェに相談したんだからなァ!間野木どもに虐められてるって。
なのにテメェの答えはいつも決まって、“ほんとに虐めなのか、仲良くじゃれあってるようにしか見えない、そのじゃれあいが嫌ならそう言ってみればどうだ”――だったよな!?」
もう一つ机を殴って、ぶっ壊す。机の足がひしゃげた。
「テメェはいつもいつも、僕の虐めの相談をめんどくさそうにあしらって、腫れもの扱いして、わざと遠ざけてやがった!虐め問題という面倒ごとから避けてたんだろ!?間野木どもの虐めは分かっていた、だがその問題に首を突っ込むつもりなんて最初からさらさらなかった。違うか!?」
今度は椅子を掴んで、壁や黒板に投げつける。
――咲哉の指摘は、全て的を射ていた。坪井はただ面倒ごとから避けていた。
教師が口を挟んだところで虐めは解決しない、それどころか事態が悪化しかねない。生徒間での虐めなど、当事者と他の生徒たちだけで立ち会って、解決すれば良い。
坪井は間野木たちの虐め行為を見て見ぬふりして、咲哉自身に問題を解決するよう全部丸投げしていたのだ。あえて突き放すことで、咲哉に困難や理不尽に打ち勝つ精神を培ってもらおうとしていた。
だから、自分は何も悪くないのだと、坪井は己を正当化させている。こうして命の危機に瀕している今でも…。
―――――――
「生徒一人にすら真摯に向き合えず、責任を持とうとしないテメェなんかが、教師なんざやってんじゃねぇぞ、ゴミカス!!」
投げつけた椅子が岡や城山の死体に命中した。坪井は顔や身体にかかった生徒の血にみっともなく喚く。
「ぼ、僕がしてきたことがは、薄情に思ったかもしれんが!お、お前のことは気掛かりだった!伊藤からも間野木たちの霧雨への嫌がらせのことは度々聞かされてたからな。
霧雨たちで解決出来なかった場合、どう解決させようかと裏ではちゃんと考えてはいたんだ!本当だ!!」
殺されたくない一心で、僕の怒りを宥める言葉を探しては、思いついた言い訳を咄嗟に発しているのが見え見えだ。
助かる為ならどんな出まかせも臆面無く言う。こいつは自分の保身のことしか考えてない、教師の風上にも置けないクソっタレ野郎だ。
「もういい。テメェの言い訳はもう聞き飽きた」
椅子を引きずりながら坪井のもとに移り、すぐ前に立ったところで椅子をゆっくり持ち上げる。
「ま――っ、待ってくれ霧し―――――」
ガン!ゴン、ガンガンガン!ドゴン!
椅子で坪井の顔や体を何度も殴りつけてやった。夢中で殴り続け、スノウに「その人間、もう死にましたよ」と言われるまで、ずっと続けていた。
「ふう………。ミィ、スノウ。ここに誰かまた近づいてる気配はあるか?」
「それにゃんだけど、さっきから廊下で人がいっぱい、この教室を見ているにゃ」
「私の超能力でドアを開けることはもちろん、こちらの様子も見ることが出来ないようにはしています。とはいえ、窓ガラスに付着した血の隠蔽や、中で発した声や音の遮断は出来てませんので、色々勘付かれてしまっているかと」
「そうか。事がバレちまってるのは仕方ねェとして、中に僕がいるってことまでバレてると思うか?」
「咲哉様が殺した人間のほとんどが咲哉様の名を叫んでましたから、その可能性はあり得るかと。少なくとも、この両隣の部屋にいる人間たちには気付かれているでしょう」
スノウの冷静かつ明晰な推察に少し思案した結果、
「――よし。だったらこのフロアにいる奴らだけでも全員消しておくか。二人とも、今から外にいる連中を《《静かに》》ぶち殺していけ」
「りょーかいにゃ!」
「咲哉様のご命令のままに」
ミィとスノウは元気よく返事すると、ドアを開けて、廊下で集っている生徒や教師ら、僕の目撃した奴らの口封じにかかった。
僕も廊下に出て、僕を目撃した奴らを片端から消して回った。3階の廊下の壁と窓ガラス、床と天井がたちまち人の真っ赤な血で汚れていく。
「わああああ!?何だこの化け物はあああああああ」
僕を前にした奴は皆、僕を化け物呼ばわりしていた。固有スキルで顔が醜悪に映り、身体もデカくなってるから、そう思うのは当然か。
こいつらは僕がこの高校の3年霧雨咲哉であることに気付いているのだろうか。気付いてないにしてもクラスメイトや担任教師どもが散々僕の名を呼んでた以上、こいつらの誰かが僕の名前を警察に出すかもしれない。
今はまだ、警察や公安に僕の大量虐殺を知られるわけにはいかねぇ。まだまだ好き勝手に暴れたいからな…!




