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23「学校で口封じを徹底する」


 「ひぐ……ぇぐ…!」


 伊藤の端正な顔は、恐怖と涙でぐしゃぐしゃだ。目の前でクラスメイトたちが惨殺されたから、無理もないか。


 「き、霧雨くん………」


 僕を見る彼女の表情からは恐怖と、生理的嫌悪も若干感じられた。以前なら僕にも柔和な眼差しを向けて、笑顔で話しかけてたこの女も、醜くおぞましいものを見る目しか向けてこなくなっている。それほどまでにこのスキルの副産物…僕を醜悪なものとして他人に映す力が強いらしい。


 「酷い、酷すぎる…!いくら馬鹿にされたからってどうしてこんな、平気で人を殺しちゃうの?こんな残虐行為が出来ちゃうの…!?」

 「ああ?何を言うのかと思えば……。ンなもん、テメェらが僕に酷いことしやがったからに決まってんだろうが!

 僕が間野木どもに虐められてても、無関係を決め込んで無視してただろ?」

 「そ、それは………」

 「あの花瓶だってそうだろが。間野木たちが僕の机に悪意で置いた、弔いの花瓶。僕がここに来るまで誰も取り除こうとしなかった。テメェも含むクラス全員が僕への虐めを見過ごしてたと言って良いよなァ?

 全員同罪だ、ぶっ殺しルート確定だろが」

 「う、うぅうう……。私は、霧雨くんへの嫌がらせを止めるよう、以前から間野木くんたちに呼びかけたりしてて……。ずっと、霧雨くんのこと何とかしようって……!」

 「ケッ、ンな言い訳聞く気ねーよ。どっちにしろテメェも口封じしとかねーとなんねーんだよ。ここでのことを公安とかにチクられちゃあ面倒なんでな」

 「い、いやあ!?言わない、この事は先生にも公安にも、誰にも言いませんから!だからお願い霧雨くん、もうこんな惨たらしい人殺しは―――」


 ザシュ! 伊藤の言葉に耳を貸すことなく、その喉をガラスで引き裂いた。


 「ば~~か、テメェらの言葉なんかを信じるかってんだ」


 引き裂かれた喉から大量に血を流しながらも、伊藤は涙を流し口をパクパク動かして何か言おうとしている。だがすぐに力尽きて、動かなくなった。

 これで、僕のクラスメイトは全員片付けれたな。間野木グループには惨たらしい死を与えてやったし、公安に漏れないよう口封じも出来た。


 といっても、それはあくまでこの教室内に限った話であり、ここから早く出て行かないと学校内の誰かに―――


 「咲哉さまー!誰かこの教室に入ろうとしてますにゃ!」

 「な、何だこの猫耳の女は!?いやそれより、この教室の窓ガラスはいったい…っ」


 ミィの合図と同時に、大人の男の困惑した声も外から聞こえてくる。この声は聞き覚えがあるぞ。確か、勝手に僕の退学を進めやがった――

 考え込む間もなく教室のドアががらっと乱暴に開け放たれる。大人の男が二人入ってきて、中の光景を見るなり顔を盛大に歪めて狼狽する。


 「な、な、何だこの血まみれの部屋はーーーっ!?」

 「ひぎぃ!?せ、生徒たちがち、血を流して倒れてる……いや、死んでるぅ!?」


 教室に入ってきたのは僕をはじめとするこのクラスの担任教師…坪井つぼいと、3年生の学年主任…生野いくのだった。二人ともクラスメイトたちの惨死体を目にして、気が動転してやがる。


 「そんなっ、私のクラスの生徒が、全員惨たらしい姿に………ひぃぃぃ」

 「いや……よく見ろ坪井君!一人生きている者が……この高校の制服を着た生徒だ!おい、お前、は………」


 生野は僕が霧雨咲哉であることに気付き、驚愕を露わにする。坪井も遅れて気付き、驚きの声を上げた。


 「あ~あ。見つかる前にずらかろうと思ってたのによう。見つかっちまった」


 手のひらを上に向けてやれやれ仕草をしておどけてみせる。ま、実はわざと見つかるようにしちゃってたり。


 「お前……このクラスの霧雨咲哉だな!?ここで何があったんだ?」 

 「そうだ霧雨君!いったい誰がクラスメイトたちをこんな残酷な目に……教室をこんな凄惨なものに………」

 「へははは……!センコー共よう、いったい誰がこれをやったんだと思う?」


 おちゃらけた口調で質問返しをしてやる。未だ握ったままでいる、血がべっとり付着しているガラスの破片をぷらぷらさせながら。


 「そ、その刃物………まさか、これをやったのは、お前なのか!?」

 「ピ~ンポーーン!大正解ーー!学年主任に1億ポイントーーー!なんつってな」


 そう言って僕はゲラゲラ笑ってやる。


 「こ、の……!探索者がこんな、生徒の大虐殺を行うとは…っ しかもよりにもよって、同じ学校の生徒のお前が…っ

 いや、お前はもうこの学校の生徒ではない!ただの大量殺人鬼だ!」


 生野は僕を指してそう言い放って、懐からスマホを取り出す。


 「あーだから、外にチクるのは、今はまだNGだっつってんだろ」


 ドガボガッ 「「ぐぼぁ」」


 二人同時に殴り飛ばし、壁に叩きつけてやる。二人とも手からスマホを放した。


 「今のうちに………スキル「召喚」――眷属獣スノウを、主人たる僕のもとに呼び出す!」


 再び「召喚」スキルを発動すると、ミィとは別の召喚獣が現れた。


 「――咲哉様の忠実なる僕の牝兎、スノウにございます。我が愛しのご主人、咲哉様。何なりとご命令を」


 頭にピンとたった長い耳、白い髪のセミロングの可愛らしい少女は、片膝をついて僕に頭を垂れてそう挨拶を述べた。


 「スノウ、お前の超能力で僕以外のスマホを使えなくさせろ。その後、この敷地全体にバリアーを展開して、誰もここを出入り出来ないようにしろ」

 「ご命令、承りました。(あぁ、咲哉様……今日も素敵なご尊顔で、胸がときめいてしまう………)」


 スノウはすくっと立ち上がると僕に背を向けて、丸くて白い尻尾を揺らして作業にとりかかる。後半何か言ってたような気がするけど、どうでもいい。

 

 「この施設に存在する、咲哉様の所有物を除く全ての電子機器の機能を停止―――」


 スノウがそう口にした途端、彼女から何か神秘的なオーラが発生する。すると、生野たちのスマホが突然ボン!と小さく爆発した。どちらも煙を上げて完全に壊れてるのが分かった。


 「続いて、この施設の敷地全てに、念力の牢獄を展開―――――」


 再び集中を高めて、超能力を発動する。グラウンド側の窓から外を覗いてみると、ピンクっぽい透明な膜みたいなのが、グラウンドを、校舎を、空を、全て覆い包み込んでいた。


 「咲哉様、全ての電子機器の破壊並びに、敷地内の完全封鎖を完了いたしました。当然ながら、咲哉様のスマホには手をつけておりませんので」

 「おう。ご苦労さん。相変わらずスノウの超能力は凄くて便利だな」

 「~~~っも、もったいなきお言葉…!」

 

 スノウは白い肌をピンクに染めて、体をくねらせる。傍にいるミィが「いいにゃー、スノウばっかりー」と頬を膨らせて文句垂れるのを宥めたところで、本題に入るとしよう。


 「よおし、これでもうだーれも外への連絡は出来なくなって、誰一人としてここから逃げることも出来なくなったわけだ。

 なあセンコー共よ、どうしてこんなことをしたと思う?」


 壁に背をつけてへたり込んだままの二人に問いを投げかける。どちらも痛みと困惑と恐怖にやられて、答えるどころじゃねーな、つまらん。

 

 「正解は~~~、口封じの為、でしたー!ここで起こったこと、僕がここにいたこと、僕がこのゴミクズどもをぶち殺したこと、全部外に漏らさないよう徹底的に隠蔽するためだ!

 テメェらをはじめとする目撃者は、全員ここで消しておかねぇとな!」


 今頃は学校中…特に職員室なんかは大騒ぎしてるだろうな。スマホも電話も、機械は何一つ使えなくなっててさぞ慌ててるだろうな。しかも学校の外に出ようものなら、バリアーに阻まれて出られなくなっちまってるときた!今頃もの凄く焦ってんだろうなぁ!


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