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愛しい貴女と共に

作者:

森野美和モリノ ミワ

転校生。とても人当たりが良く、明るい性格のためクラスの人気者に。

ただし、有紗に一目ぼれし近づく。

有紗がいればそれだけで十分だし、有紗以外はいらない。


茅野有紗カヤノ アリサ

美和が転校して来るまでいじめられていた。

何か悪いことはしていなく、本当になんでいじめられているかわからない。

美和が来てから世界に色がついたみたいにキラキラし、美和のことが恋愛的な意味で好きになる。

美和と永遠に一緒にいたいと思うようになる。

あの日…、朝日が凄く綺麗な冬の日。

私と有紗は、始発の電車が来る踏切で手を繋ぎながら

一緒に飛び込んだ。

美和「有紗、ずっと一緒だよ…これからも」

有紗「うん…ずっと、ずぅっと…一緒」

カンカンと鳴り響く音と共に、電車の急ブレーキ音が

響き渡る。そして、ドンっと鈍い音が聞こえた。


事故が起こる3か月前。

泗水高校に一人の転校生が来た。名前を‘‘森野美和‘‘。

彼女はとても可愛らしく、人柄も良かったためすぐにクラスの人気者になった。

その彼女は一人のクラスメイトである‘‘茅野有紗‘‘に興味を惹かれた。

彼女は自分が転校してきた時も、こうやってクラスメイトの人と会話していても、一冊の小説をずっと繰り返し読んでいた。


その日の夕方。学校に忘れ物をした美和は急いで教室へと走る。

すると、有紗が一人本を見ながら泣いていたのだ。

その光景が、夕日の光と相まってとても美しく、幻想的な空間を作り出していた。

…美和はその雰囲気や有紗に見とれていると、有紗が美和の存在に気が付く。

有紗「いっ…いつからそこに!?」

彼女は顔を真っ赤にして制服の袖でゴシゴシと目を擦る。

それだと目が腫れる…。咄嗟にそう思った美和は、有紗の手を両手で包み込むように取る。

美和「強く擦ったら…腫れちゃうよ?」

そういい、美和は自分のポッケからハンカチを取り出し、有紗の涙を拭いてあげた。

有紗「あり…がとう。森野さん」

苗字で呼ばれることなんてめったになかった美和は違和感と共に、‘‘彼女には名前で呼んで欲しい‘‘。そう、無意識に思ったのだ。

美和「名前…名前で呼んでよ。有紗ちゃん」

有紗は美和に名前を覚えてもらえていたこと、そして

友人のように‘‘名前で呼んで欲しい‘‘という美和のお願いに対し、凄く嬉しくなっていた。

有紗「そ、その…おこがましいかもだけど、よろしくね、み、美和」

美和「! うん!よろしくね!有紗!」


...それからというもの、美和は有紗と共にいることが増えた。

最初は友人のように仲睦まじい姿が見られた。

しかし、だんだんとそれは‘‘友人‘‘と呼ぶには少し歪な関係になってきた。

それは、美和と有紗が友人になってから一か月ほど経った頃である。

朝、有紗が登校すると机の上に一凛の白い花が入った花瓶が置かれていた。

それを見た有紗は酷く、ショックを受けた。

…有紗がその光景を見ながら立ち尽くしていると、

ガラっと教室の扉が開いた。

そちらの方を見ると美和が立っていた。

美和「おはよ~有紗…って、どうしたの?」

美和の問いかけに上手く言葉が出なかった有紗は、

恐る恐る自分の机を指さした。

美和「机?…って、何、これ」

美和も驚いていた。そしてすぐに花瓶に手を伸ばし、

テキパキと片づけた。

美和「他に何かされてない?」

美和はいつもの明るく可愛らしい笑顔ではなく、

静かに怒っている…そんな表情で有紗に聞いた。

有紗は一生懸命首を横に振った。

有紗「何もされてないよ…!ありがとう、美和」

有紗は美和の優しさに嬉しくなり、涙ぐんだ。

…その騒動からほどなくして、別のクラスの女の子から

呼び出された有紗。

イジメられるのでは…、もしくは自分が何か気に障ることを

してしまったのではないか、そう思いビクビクしていた。

その子に「誰にも見つからないように」とも言われていたので、人目を避けてその場所に向かった。

…呼び出された場所に行くと、女の子は木の物陰に隠れていた。

「こっち…!」

女の子は物陰に隠れるように手招きしていた。

それに従うと、女の子はまず急に呼び出してごめんと

謝ってくれた。

そして、ここに呼び出した経緯を話してくれた。

「実は…少し前にね。朝練があった時に茅野さんの教室の前を通ったのね。そしたら、茅野さんの机に花瓶を置く森野さんを見かけて…。」

あれは確か‘‘スノードロップだった気がするわ‘‘

なんて言葉は、有紗の耳には入らなかった。

美和が…どうして?その考えで頭がいっぱいに埋め尽くされた。


…その日の放課後。有紗は図書室に行き花について書かれている図鑑や書籍を探した

これでもない、あれでもないと読み漁っていると、一冊の本にたどり着いた。

その本は世界中に咲く花の花言葉について書かれている本だった。

有紗「スノードロップ…スノードロップ…。あった!」

スノードロップは、ヨーロッパ地方で自生されている花で、春を訪れを知らせる花として親しまれ、またの名を「春の妖精」と呼ばれているらしい。

…しかし、花言葉としては怖い意味を持つらしく、

そちらの意味は「貴方の死を望みます」というものらしい。

…あんなに優しく、私と友達になってくれた美和が私の死を望んでいる。それが真実なのか、私にはわからない。

でも、それが本当なら…私は。

図書室の窓から差し込む夕日の光が、有紗の顔を逆光で覆い隠す。

その様子を静かに見ている人影がいるとも知らずに…。


それから有紗は、美和と会話することはあっても以前のようにずっと、どこでも一緒という風ではなかった。

美和「有紗ー!お昼ご飯一緒に食べよ!」

有紗「ご、ごめん。先生から頼まれごとされてて…」

美和「そうなの?じゃあ待ってるよ?」

有紗「じ、時間たくさん使うから先に食べてて…。じゃあ。」

美和「…」


それから、ある日。また、有紗の机の上に一凛の花と花瓶に巻き付くように蔓が巻かれていた。

あれから花について詳しくなった有紗は一目見ただけで、何の花なのか、花言葉は何なのかわかるようになっていた。

有紗「花は‘‘莢蒾ガマズミ‘‘意味は無視したら私は死にます。そして蔓っぽく巻き付いてるのは‘‘アイビー‘‘意味は死んでも離れない…だったかな」

これを見た有紗は、どこか悲しく寂しそうな表情をしていた。そして、扉向こうにいる人影に声をかけた。

有紗「見ているんでしょう?美和」

そういうと、扉の向こうから美和が現れた。

いつもニコニコしているが、今の表情はどこか読めない無の表情をしていた。

美和「有紗…、貴女は私を疑うの?」

じっと有紗の目を見つめる。

有紗はその目を見つめた後、首を横に振った。

有紗「前回の花は美和じゃないと思う。ただ、今回は

美和かなって思ってる。」

美和は驚いた。確かに今回は自分がやったが、前回も疑われるものだと思っていたからだ。

美和「仮にそれが真実だとして、前回の犯人は誰?」

有紗は美和から視線を外し、窓の外を眺める。

有紗「その事実は…私にとってはどうでもいいこと。

美和がこの学校に来る前から、色々なイジメにあってきた私にとって、それは‘‘日常でしかない‘‘から。」

有紗の表情は見えない。けれど、声は震えていた。

美和はゆっくり近づき、有紗の隣に立った。

美和「有紗…」

有紗「きっと、美和が来てくれたことによってイジメが止まっていてくれたのに。美和と仲良くしていることが、気に食わなかったみたい。…美和は、人気者だから」

その表情は自傷的で、涙を流しながら笑っていた。

美和は自分の手を血が出るほどまで、ぎゅっと握った。

美和「有紗。試すようなことをして、ごめんなさい。

私、本当に貴女のことが大好きで…」

有紗「うん…、知ってるよ。今までの態度も、今回の

この花たちのことも。凄く愛されてるなって、思ってる。

ありがとう…、美和」

有紗はぎゅっと、美和を抱きしめた。

美和は涙ぐみながら、有紗を力強く抱きしめ返した。


その日は、二人して学校をサボった。

ゲームセンターやカフェ、ショッピングモールと

たくさんの場所を巡った。

…二人の姿は、とても幸せそうだった。

歩き疲れた二人は、綺麗な海の見える浜辺に座って

地平線に向かって沈んでいく太陽を眺めていた。

有紗「ねえ、美和」

有紗は太陽から視線を逸らさずに、美和に話しかけた。

有紗「私ね、美和と一緒だったらどこにでも行きたいし、

何でもできる。でも、それは‘‘永久に‘‘って意味なの。

…重い、よね」

有紗は照れくさそうに、そしてとても慈愛に満ちた顔をしていた。

美和はその顔を見た後、決意した表情に変わる。

美和「ならさ、一緒に天国に逝けばずっと一緒なんじゃないかな」

それを聞いた有紗は名案だと言わんばかりの笑顔で、

美和の両手を握りしめた。

有紗「ねぇ、ならさ。今日、家来ない?」

美和はその意味がわかっておらず、コクンと頷く。

有紗は、美和の耳元で小さな声で言う。

有紗「両親、ずっと帰って来ないの。だから、何をしても大丈夫ってこと」

…理解した美和は頬を赤らめる。そして有紗の家に着くまで、お互い無言だった。しかし、恋人繋ぎをした手は離す事はなかった。


…有紗は4時頃に目が覚めた。まだ日が昇っておらず、暗い空に薄っすらと赤みがかかっていた。

有紗はぼーっと空を眺めていると、有紗を呼ぶ

美和の声が聞こえた。

有紗「おはよ、美和」

美和「はやいね…有紗」

裸の美和は布団を身体に巻き付けながら、こちらを恥ずかしそうにしながら顔を向ける。

美和「空、キレイだね。」

美和は窓の外を見ながら言う。

有紗「…‘‘可惜夜アタラヨ‘‘」

美和「あたらよ?」

その言葉を知らない美和は不思議そうな顔をしていた。

有紗「可惜夜。意味は、明けてしまうのが惜しい夜のこと。私は、今この状況がずっと続ければいいなって思う。」

そういう有紗の近くに下着を着た美和が近づき、触れるだけのキスを有紗の唇にする。

美和「私も、同じこと思ってた。」

ニコっと微笑む美和がとても可愛らしく、キレイに見えた。

有紗「そろそろ準備をしようか。始発の時間になっちゃう」

二人はいつものようにスクールバックを持ち、制服を着る。

そして、恋人繋ぎをしながら最寄りの駅へと向かう。


駅から少し離れた踏切。そこはほぼ建物がなく、見えるのは青く輝く海だけだった。

有紗「…ずっと、一緒だよ美和」

その問いかけに美和は微笑む。

そして、繋いでいた手をぎゅっと握り直す。

美和「うん。ずっと…ずぅっと一緒だよ、有紗」

だんだんと近づいて来る電車の音。

二人はとても、清々しい笑顔で踏切の中へと入る。

…ドンっと鈍い音と共に、生々しい音も聞こえてくる。


…その日のニュースは、女子高生二人の死亡ニュースで埋め尽くされた。

そしてそのことからイジメが明らかになり、首謀者はあの有紗に情報を教えていた女の子だった。

しかし、彼女は言う。

「確かに、森野さんが転校してくる前まではイジメをしていた。けれど、森野さんが来てからは茅野さんに異常に執着していて、それからはイジメていない。

そして、話題となっていた‘‘花瓶‘‘について。あれは、全く関与していないし、茅野さんには‘‘本当のこと‘‘を話していた。確かに見たの。狂気じみた笑顔を浮かべながら、花瓶と花を準備する森野さんを。そして、花言葉について調べていた茅野さんにもう一度教えようと図書室に行ったら、その場所を守るように凄く怖い表情をした森野さんと、全て理解して高揚とした表情を浮かべている茅野さんを。あの二人は、だれがどう見ていても‘‘おかしい関係‘‘だった」と…。

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