Artillery Sigil and Allure Sigil 【砲弾魔法陣と魅了魔法陣】
「レオン、依頼が来ました」
「はい、メルキド博士」
「サンドリア国にあるベルメール地方の新興貴族であるバルムント男爵だ」
「他国からも狙われているとの情報もある。早いとこ片付けなさい」
「承知しました」
「ああ、待て、今回はリナも同行させます」
「レオン、よろしく」
「ああ•••」
レオンは、リナの手を掴むと、早速ベルメール地方へ移動した。
「相変わらず、便利な能力ね」
「ああ、さっさと片付けるか!」
「そうね」
「僕ひとりでも充分だが•••」
「貴族の屋敷は、結構厄介なのよ」
「そうなのか•••」
「警備も厳重で手練れも多い」
「まあ、僕には関係ないけどね•••」
レオンは、男爵の隙を狙うためにしばらく観察することにした。
リナは、手伝いと言うよりも監視役のようだ。
「いつ実行するの?」
「まあ、待て」
リナに声をかけられて少し目を離した隙に、
「シュッ」
「あ、殺られた!」
「狙撃?」
リナが呟くと、レオンはそこにはもういなかった。
「今のは、お前か?」
男の首もとに剣を突き立てて言った。
「う、何だお前、いつの間に•••」
「いい腕してるな」
「あ、ありがとう•••」
男は、怪訝そうな表情で呟いた。
「名前は?」
「トリガーだ、お前は?」
「レオンだ」
一瞬時が止まった気がした。
トリガーが、魔法陣でバリアを張ったかと思うと、レオンと距離を取った。
次の瞬間、アサルトのような銃で連射してきた。
レオンは、すべて交わすと、一気に距離を詰めた。
トリガーは、一瞬で姿を消すとかなり遠くに移動していて、今度はバズーカのようなもので攻撃してきた。
爆発範囲は、思った以上広くレオンも気づくのが遅れたら危なかった。
トリガーは、慣れた感じで距離を取りながら色々な銃で攻撃してきた。
レオンは、紙一重で交わしながら、トリガーの動きにあわせて飛んだ。
「そこまでだ」
「くそ、やはり接近戦には弱いか•••」
「殺れ!」
トリガーが、観念したかのように叫んだ。
「お前、強いな!」
「殺される相手に言われても、嬉しくもない!」
そう言い放つと、レオンの腕を掴んで体制を崩すと、首もとにナイフを突きつけた。
「分かった、俺の敗けだ」
レオンが、少し嬉しそうに言うと、
「トリガーって言ったか、お前、僕の仲間になれ」
「は?嫌だが•••」
「まあ、そう言うわな•••」
「お前も【MACOK】だろ?」
「ああ、なぜ殺さない?」
「お前こそ•••」
お互いに認めた相手には、二度と負けたくないと思っていた。
「次は、ないぞ!」
「こっちの台詞だ」
トリガーは、警戒しながら闇へと消えていった。
「レオン、急にいなくならないでよ」
リナが、急いで駆けつけると、
「ああ、悪い」
「悪いと思ってないくせに•••」
「敵国の【MACOK】ね」
「ああ、手合わせしたが強敵のようだ。今回は見逃してもらった形になった」
「あなたが?珍しいのね」
レオンは、少し嬉しそう笑った。
「まあ、いいわ。結果は私が報告しておく」
「頼んだ」
レオンは、リナの腕を掴んでアジトへと移動した。
「メルキド博士、暗殺は成功しました」
「ご苦労、変わったことはありませんでしたか?」
「これと言って、取り立てることはありませんでした」
「分かりました。下がりなさい」
「レオンもご苦労」
「はい•••」
部屋へ戻る途中
「リナ、なぜ報告しない?」
「なんのこと•••」
「敵国の【MACOK】のことだ」
「ああ、今はこれでいいの•••」
「相変わらず、何考えてるか分からない奴だな•••」
リナは、ひとりでニヤニヤしていた。
「トリガーの魔法陣は、銃か?この世界では珍しい。面白い能力だ。ぜひ、仲間にしたい•••」
レオンも思わずニヤニヤしてしまった。
トリガーの魔法陣は、正確には砲弾魔法陣といって、近距離から遠距離攻撃まであらゆる銃弾を撃ち出すことができる。近接では、防塵魔法陣でバリアを張ることができ、体術とナイフで応戦できるが、レオンのような近接特化型には弱い。
レオンの計画もようやく先は見えてきたようだった。
ここは、極東の島国、サンゴルド帝国である。
「アルカ•••」
「サクナ•••」
二人は、姉妹だった。
幼くして、母を亡くした二人には、酒を飲んでは暴れる最低の父しかいなかった。
「サクナ!酒買ってこい!」
サクナの顔を殴り付けながら叫んでいた。
「サクナに何するの!」
アルカが、止めに入るが腹に蹴りを入れてまた叫んだ。
「うるせー!」
父に見きりをつけるのには、それほど時間はかからなかった。
二人で家を出ることに決めたまでは良かったが、行く宛もなく彷徨い歩いているところを運悪く人さらいに捕まってしまった。
「お客様、こちらへどうぞ•••」
「ほ~、これは美しいな」
「お客様、少々お待ち下さい。ご準備を•••」
サクナが、そう言ってその場を離れようとすると、
「準備なんていい、さあ、こっちへ来い!」
その男は、手荒にサクナの腕を掴んだ。
「ああ、お客様•••」
「あ、あれ、あれ、なんかフラフラするぞ?」
客の男が、突然フラフラしながら歩き出した。
「サクナ、良くやった」
「アルカ!」
アルカに、嬉しそうに飛びかかった。
「待って、こいつを始末してからだよ」
「そうだね」
アルカの腕から、長い蛇のように鞭が現れ、男の身体を締め付け続けた。
男は、気持ち良さそうにヨダレを足らしながら、息絶えた。
「後始末は、私に任せて、サクナは少し休んでおいて」
「この豚やろう、サクナに触れやがって、絶対に許さない」
「もう、死んでるよ•••」
「確かに•••」
「ハハハ•••」
ここは、この国で一番の歓楽街、アルカとサクナを【MACOK】にしたマスターはヨイザクラという、ここらを牛耳る大元締めで、容姿は巨漢でお世辞でも美しいとは言えなかった。
ヨイザクラは、裏の世界でも大物で、殺しの請け負い、盗み、賭博なんでもこいの根っからの悪党だった。
「ヨイザクラ様、任務完了しました」
「このブス、拾ってやったんだからしっかり働きな!」
「はい、申し訳ありません•••」
「チッ、ヨイザクラの奴、サクナにひどいことしやがって、絶対に許さない」
アルカは、ブツブツ文句を言っていた。
サクナの能力は、魅了魔法陣でサクナ本人の美しさも合間って、男性に対する効果は絶大だ。
アルカももちろん美しい女性であるが、負けん気が強く攻撃的で、蛇鞭魔法陣という無限に伸びる鞭を使える。
「アルカ、もう逃げたい•••」
「ああ、でも、マスターを殺したら私らも•••」
「うん、分かってる•••」
二人は、抱き合いながら悩んでいた。
「レオン、以前言っていたサクナの件で新情報があるよ」
「突然なんだ•••」
「急に、連絡してごめんなさい。早く伝えたくて•••」
「ああ、リセそれで?」
「サクナは、双子の姉妹でアルカという姉がいるみたい。やっぱり、かなりひどい扱いのようでこのままだと自分で命を•••」
「くう•••急がないと•••」
次回 【Elysian Enchantress and Sowbane Sorceress】