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【MACOK】  作者: 吾妻 八雲


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Luminous Reverie and Dimensional Grimoire 【白昼夢魔法陣と空間魔法陣】

その日から、レオンはミリアを助け出す方法だけを考えていた。


白昼夢魔法陣を使うのはいいが、リスクが大きすぎる。


まず、白昼夢魔法陣を使うと、ミリアも睡眠状態になってしまうため、僕が起こせるように、すぐ近くにいる必要がある。


エリスを眠らせた後の処理も考えなくてはいけない。

エリスが、死んでしまっては、ミリアの命も失われてしまう。

それでは、意味がない。


つまり、生きたまま封じ込める能力が必要だが、それが思い浮かばない。


あと、ミリアを助け出したとしても、肝心の自分がこのままでは、元も子もない。


結局、ミリアを助けるなら「魔法陣使い」自体を全員、殺さずに無力化できる方法を考えなくてはならない。


「そんなことは無理だ!」

レオンは、頭を抱え込んでしまった。


数日経ったある日、盗みの依頼が舞い込んできた。


「レオン、首都マルカスへ行って国立魔法美術館に展示されている。国宝である「神器:漆黒の鎧」を持ってきてください」

「了解しました」


「鎧か•••」

早速、マルカスの美術館の前に移動した。


「おっと、先客か?」

影から様子を伺っていると、


美術館へ忍び込もうとする獣人の娘を見つけた。

彼女は、慣れた手付きでカギを開けると、完全に気配を消して中へ入っていった。


レオンも中へ移動すると、美術館の奥にある国宝級の杖である、「神器:エーテルウィスパー」の置いてある部屋へと忍び込んだ。


エーテルウィスパーは、古代の魔法使いによって作られ伝説として語り継がれている。

星々の力を宿し、夜空を舞うような輝きを放つ杖で、その先には、無限の知識と創造力が秘められている魔石が埋め込まれていると言われている。


「また、大層なものを盗むな!」


そのまま、観察していると、彼女は手から大きな布を広げた。


「あいつも、【MACOK】か•••」

「でも、あの魔法陣•••使えるかも」


「おい、大層なものを盗んでるじゃないか!誰の依頼だ?」

獣人の娘は、身構えた!


「おっと、待て待て!」

レオンは、手で制止した。

「殺ろうと思えば、いつでもできた。僕も【MACOK】だからね」

そう言って、右手の甲を見せた。


「あなたも、依頼を?」

獣人の娘は、戦闘態勢性を取りながら警戒している。

「まさか、被りの依頼?」


「いや、僕の目的は別のものさ」


「だったら、なぜ声をかけるの?やっぱり、殺る気なのね!」

そう言って、爪と牙を尖らせた。


「だから、違うって」

一瞬で彼女の背後にまわると肩をトントンと軽く叩いた。


「私の負けね。好きにしなさい」

彼女は、両手を挙げて観念した。


「だから•••僕の名前はレオン。君の名前は?」


彼女は、不思議そうに見ている。

「私は、リセよ•••」


「リセ、君に提案があるんだ」

「提案?」

まだ何かを疑っている様子だ。


「ああ、俺たちの仲間にならないか?」

「仲間にですって?」

「ああ」

「無理に決まってるでしょ!私は【MACOK】よ。マスターに逆らえるはずないことぐらい分かっているでしょ?」

「ああ•••」


リセは、まだ警戒している様子だった。


「今、君に出会って確信したよ。この作戦なら行けるとね!」

「何言ってるの!」


「まずは、要るもの頂いてここを出よう。捕まったら元も子もない」

「分かったわ」

そう言うと、僕は一瞬で鎧を盗み表の茂みに移動した。


「リセ、こっちだ•••」

「あなた、何者?すごいわね。戦っても全く勝てる気がしない•••」

「褒め言葉として受けとるよ」

少し照れてながら言った。


「リセ、さっきの話だけど、どうかな?」

「詳しく聞かないとなんとも•••」

少し警戒を緩めた様子で話し始めた。


もちろん、リセも今の現状には不満を持っている。

獣人ということもあって、かなりひどい扱いを受けているそうだ。


出身は、獣人の郷アルマニアで小さい頃に両親が殺されて、奴隷として今のマスターに買われたそうだ。


リセには、僕の現状と能力、そして、計画についても話した。


「そんなこと、私なんかに言って大丈夫なの?」

「ああ、信じてもらうにはこれが一番だろ?」

「ああ、もう負けたわ。協力してあげてもいいわ」

少し呆れたような表情で言った。

「ありがとう」


ここで、やっとミリアの存在を明かした。

ミリアの能力とリセの布陣ふじん魔法陣があれば、マスターたちを殺さずに無力化できる。


「ただ、三人では心もとない。せめてあと二、三人は仲間が欲しい」

「そうね•••」

リセが、考え込んでしまった。


「あっ」

「急にどうした!」

「そう言えば、少し前に他の国の【MACOK】とニアミスしたんだけど、その娘もひどい目に会ってたわ」


「国は、どこだ?」

「極東の島国、サンゴルド帝国」

「すごい遠いな•••まあ、僕には距離は関係ないけどね」

「なるほど•••」

「さすがに名前は分からないよね?」

「確か、サクナと呼ばれていたわ」

「リセ、ナイス!」

「ナイス?」

「ああ、気にしないで•••」


僕は、リセと約束をしてアジトへ移動した。


「メルキド博士、任務完了です」

「いいでしょう」

「ところで、レオン」

「なんでしょうか?」

「戦闘訓練は、しっかりできていますか?」

「問題ないかと•••」

「近いうちに、ミズリア王国の姫君を暗殺してもらいます。まだ時間はあるので準備を念入りにしておきなさい」

「了解しました」


その頃、レオンの幼馴染みのハーベルは、レオンの行方も探すことができずに諦めかけていた。


ハーベルは、師匠であるリーフィアと出会い。魔法とスキルの使い方を学んでいった。


リーフィアとの旅の中で、後天的に他の属性や血筋を無視したスキル獲得を身に付けることに成功した。


そして、修行のために訪れた。闇の神殿では、便利なスキルや神器などを手に入れて、どんどん成長していくのであった。


そんな中魔族に遭遇して、恐怖したハーベルたちは、さらに強さを求めて、次の目的地である水の神殿へと向かっていた。


ミズリア王国は、水の国とも言われ水産業で栄えた大国のひとつである。


大きな漁港や輸出入、観光産業などでも大きな利益を得ているため、非常に豊かな国である。


ミズリア王国の第一王女、アクシア様は、奔放な性格で目を盗んでは町におもむき探索をするのが趣味だった。


水の魔法の使い手で王国随一という噂だった。


「師匠、これからどうしたらいいのでしょうか?」

「このままでは、悪魔に全く勝てる気がしません」

「今は、修行で力を蓄えて魔族の襲撃に備えるしかないわ」


「師匠、恐らく私たちは悪魔の手下に狙われています、一ヶ所に留まらず移動し続けた方が得策かと思います」

「あらあら、同感です」


「そういえばクラリッサ、悪魔がいるってことは天使もいるのかな?」

「話には聞いたことありますが、私は見たことも会ったこともありません」

「そっか、天使がいたら味方になってくれないかなと思って···」


「それは難しいかと、天使は気位が高く人間やエルフなどとは格が違うと考えているため、相手にもされないと思いますよ、聞いた話ですが···」

「そうなんだ···」


ハーベルたちは、水の神殿付近に着くと近くの町で情報を集めることにした。


腹ごしらえに立ち寄った町は、活気がなく寂れた様子だった。


「食べるものとかあるのかな?」

「あらあら、寂しいとこね」

「すいません、近くに食べるところなどありますか?」


「あんたら何しにきたんじゃ、こんなところに来たところでなんもありゃせんぞ」


「おかしいわね、ミズリア王国は、水産で栄えた豊かな国だって聞いたことがあるけど?」

「これは、ダメですかね···」


諦めかけて歩いていると、海辺に女性が腰かけていた。


「すいません!」

びっくりしたらしく海へ潜ってしまった。


「今のって人魚ですか?」

「そうみたいですね!」

「人魚も居るんですね、ちょっと驚きました」

「じゃあ、そこの岬の上に家を設置しますか」


早速、家を設置すると師匠とクラリッサで食事の準備を始めた。


次の日、ハーベルたちは、人魚であるアクシアと仲間となって一緒に水の神殿へと向かっていた。


「レオン、ミズリアの姫君は人魚だ」

「人魚ですか?」

「そうです。人魚と言っても半日くらいは、人間のように行動できるらしいのです。その時を狙うのです」

「了解しました」

「今度は、くれぐれも失敗のないように頼みますよ」

「承知しました、メルキド博士」


レオンが、水の神殿付近に潜伏していると、ちょうどハーベルたちが水の神殿へ挑戦するところだった。


「あ、ハーベル•••」

つい声をかけそうになったが、思い止まった。

「今、声をかけるわけにはいかない。自分が生きていることを伝えたいのは山々だが、かえって迷惑をかけてしまう」


レオンは、そのままハーベルたちの後をしばらく追跡した。「隠蔽いんぺい」スキルがあるので、こうした時は結構役に立つ。


ハーベルたちの今回の目的は2つ、「人魚の涙」をゲットすることと、15階層のボスの確認、倒すことができればそこまで行くこと。


「ダンジョン内は、一度スキャンしているのでトラップはあまり気にしなくても大丈夫だよ」

「えっ、ちょっとおっしゃっていることが分かりかねますが···」


「ああ、ごめん。アクシアさんには分かりにくいか!」

「私にも分かりにくいですよ」

「ああ、ごめん」

「ダンジョン内をスキルで一度確認しているから、罠があっても分かるようになっているから大丈夫だよ、ってことです」

「了解」

クラリッサが、クスクス笑っている。


「スキャンとかトラップとか何ですの?」

「この方たちは、転生者であちらの世界でしか通じない言葉があるらしいです。私は少し慣れましたが···」

「そうなんですか、だから変わった道具や変わった家に住んでらっしゃるのですね、ちょっとスッキリしましたわ」

「分かりにくかったら聞いてね!」

「分かりました」


闇の神殿で慣れているので、15階層まではすぐにこれた。扉には、サメの絵が刻まれていた。


「サメか?でも、水がないのに?」

水の神殿内は、水自体はないが、海洋系のモンスターは、泳ぐことができるらしい。


「行ってみますか?」

「了解」

扉を開けると以前同様やはり開かなくなった。


大きなサメが悠々と空中を泳いでいる。メガシャークは、こちらに気づいて突進してきた。


「ここは、俺に任せて!」

「サンダーストライク!」

ハーベルは、「零式ゼロしき」でメガシャークの背後に付くと、雷を一撃浴びせた。

そのまま、ひっくり返って宝箱になった。


こんな具合で、水の神殿を攻略していった。


「今、アクシアって言ってたな。じゃあ、あれがターゲット•••」

レオンは、眉を潜めた。


「チッ、タイミングが悪すぎる。今回は、アクシア暗殺は断念するしかないか•••まさか、ハーベルたちを皆殺しにするわけにも行かないし•••そもそも勝てる気がしない•••」


レオンは、そんな独り言を言いながら早々に立ち去った。


「メルキド博士、申し訳ありません。ハーベルが、姫様の護衛についていました」

「そうですか、ハーベルがね」

「まあ、いいでしょう。依頼主には、私が上手く話をしておきます」

博士は、意外と上機嫌のように見える。


「ところで、ハーベルの様子はどうでしたか?」

「はい、かなり手強そうに見えました」

「あなたとどちらが強いでしょうね•••楽しみです」

博士は、ニヤニヤしながら何かを想像している様子だった。


レオンは、なんともいえない気持ちになった。

「ハーベル•••」

「しばらくの間は、ハーベルたちの監視を続けなさい。まだ、決して手は出してはいけませんよ」

「了解しました」

レオンは、少し安堵していた。

次回 【Artillery Sigil and Allure Sigil 】

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