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Shadowstrike and Luminary Vendetta 【闇の執行者と光の復習者】

「【MACOK】の素材もなかなか見つからないから苦労しますよ」

レオンは、メルキドの手伝いをしながら、眼を盗んでは【MACOK】の力を使えるように修行をしていた。


【MACOK】には、色々な種類の魔法陣を刻み付けることができる。

魔法陣の種類と刻む場所によって、効果が変わってくるのだった。


「魔法陣使い」であるメルキドは、もちろん詠唱や魔力なしで魔法陣の効果を発動できる。


そして、【MACOK】自身も同じ効果を発動することができるのだ、しかも詠唱も魔力もなしで、さらに命を削られることもない。


つまり、生きている限りは、「魔法陣使い」よりも優位に立てるのだ。


ただ、【MACOK】には、「魔法陣使い」を殺せない理由があった。


「魔法陣使い」と【MACOK】は、魔法陣を刻む度に、命の共有がつよくなっていく。


【MACOK】が死んでも「魔法陣使い」は死なないが、「魔法陣使い」が死ぬと、同時に【MACOK】も命が尽きてしまうのだ。


それは、【MACOK】であるレオン本人が一番よく理解していた。

表向きは従順でも、いつか逃げ出そうと画策していた。


普段の生活では、博士の偽装魔法陣によって、他の人たちからは別人に見えている。


施設の中では、他の【MACOK】たちの監視と世話をしていた。


相変わらず、劣悪な環境でただメルキド博士のエサとして飼われているだけの彼らたちを•••


レオンは、いつかメルキド博士をどうにか封じ込めて、自由を手にする方法をいつも考えていた。


一方、リナは案外この状況を楽しんでいるらしく、完全に割りきって助手として働いていた。


「教授、次の授業の準備が整いました。早く行きますよ」


「おやおや、もうすっかり助手気分ですね•••」


「どうせだったら、楽しまなきゃ損でしょ?」

「まあ、ポジティブなことは良いことです」


「では、レオン行ってきます。後のことは任せましたよ」

「了解しました。行ってらっしゃいませ」

レオンの顔は、うんざりして暗く沈んでいた。


「これで、しばらく自由に動ける」

レオンは、独り言をいいながら、普段の仕事を片付けていった。


【MACOK】の主な仕事は、暗殺や窃盗がほとんどで、メルキド博士が、どこからともなく受けてきた依頼をこなしていく。


暗殺術のトレーニングは、欠かすことができない。

だが、このお陰で体力的にも精神的にも強くなっていった。


ただ、任務をこなせばこなすほど、人ではなくなっていく気がしていた。


「任務完了。まだ、盗みの方がましだな•••」

そんな独り言をいいながらアジトに帰ってきた。


「メルキド博士、任務完了しました」

「ご苦労」

博士は、他の作業をしながら適当に相づちを打った。


「いつものことだ•••」

レオンの顔は、無表情で完全に生きる屍同然だった。


そんな殺伐とした生活の中で、ある任務を言い渡された。

「レオン、フィラルティア公国の最高機関の議長である。エリスの暗殺だ!」

「あ、それと、ソーサリーエレメントの情報があったらすぐに報告するように!」


「ソーサリーエレメントとは?」

「謎の精霊石で、素晴らしい力があるそうです。詳しいことは今調べているところです」


レオンには、依頼主はもちろん、暗殺の目的など一切は知らされない。ただ、ターゲットを殺すだけだった。


フィラルティア公国は、エルフと妖精の国で、美しい森に囲まれた土地にある。ターゲットのエリスは、金色の長い髪を棚引かせた。とても美しいエルフの女性だった。


「了解しました。早速実行に移します」

レオンは、サッと姿を消した。


ここは、フィラルティア公国付近の森の中にあるアジト。


ミリアは、フィラルティア公国にいる【MACOK】で、妖精族の少女だった。


ミリアには、幻惑や幻影よりも強力な白昼夢という魔法陣が刻まれていて、白昼夢が発動すると相手は、眠りに落ちて夢の中へ閉じ込められてしまう。


さらに、夢の内容は、ミリアが自由に設定できるのだ。

ただし、白昼夢を発動すると同時に自分も睡眠状態に落ちてしまう。


したがって、一人の時はかなり危険な魔法である。誰かにすぐ起こしてもらえば問題なく、自分が目を覚ましても魔法の効果は継続する。


その効果は、自分で解除するか、自分が死ぬまで解除されることはない。


その他にも精神系の魔法陣をいくつか持っているため通常の任務で白昼夢を使用することはまずなかった。


「エリス様、何者かがお命を狙っているという情報を得ました」

「またですか•••すぐに対処を」

「了解しました」


実は、エリスも「魔法陣使い」だったのだ。

国の最高機関の議長を務めながら、裏では国の害となる輩を抹殺する指令を出していた。


「まったく、厄介な輩が多すぎます」

うんざりした顔で、仕事を片付けていった。


「あなたですか?」


「はっ!」

レオンは、気配を察知されたのは初めてだったので、驚いてしまった。

それで、一瞬行動が遅れてしまった。


「あなたが、エリス様を狙っている暗殺者ですか?」

ミリアは、レオンの首もとにナイフを突きつけながら尋ねた。


「なぜ、殺さない?」

レオンは、瞬間移動で交わそうとしたが、なぜか発動しなかった。


「殺す理由が、ありません•••」


「お前、何言ってるんだ?」

レオンが、ゆっくりと振り返った。


そこには、緑色の短髪の可愛らしい妖精の少女が悲しそうな顔をして立っていた。


見た目ですぐに【MACOK】であることは分かった。


「お前、何言ってるんだ?」


「お前では、ありません。私の名前はミリアです」

レオンは、不思議そうな顔をしている。


「僕が、エリスを暗殺にきた【MACOK】って分かっているのに殺す理由がないとはどういうことだ?」


「もう、疲れたのです。あんな奴の言うことを聞いて、何者かも知らない人の命を奪うことに•••」


レオンは、思わずミリアを抱き締めていた。


「うう、あなたの名前は?」


「ああ、レオンだよ。見ての通りきみと同じ【MACOK】さ•••」

両腕に刻まれた魔法陣を見せ付けた。


「レオン、助けて•••」

ミリアは、今にも消えてしまいそうなか細い声で呟いた。


レオンは、ミリアをさらに強く抱き締めていた。


「エリス様、任務完了しました」

「ご苦労、ミリア」

ぶっきらぼうに言うと、忙しそうにどこかへ行ってしまった。


ミリアは、レオンと約束をしていた。


「いいかミリア、僕がきっと君のことを助けに来る。それまでは、今まで通りに振る舞うんだ。もし、他の【MACOK】に会っても極力戦闘は避けるんだ。相手の能力が分からないうちは手を出さない方がいい」

「分かったわ」


「どうしても避けられないような状況になったら僕に連絡するんだ。耳の音魔法陣で連絡はとれる」

「うん」


なぜか急にミリアのことが愛おしくてたまらない気持ちになった。


その時に、ミリアの能力である白昼夢魔法陣のことを打ち明けられた。


「今回は、僕を殺したことにして任務完了と報告してくれ」

「でも、それじゃレオンが任務失敗でマスターにひどい目に会うんじゃ?」


「ああ、そっちは心配しなくていいよ。僕のマスターは優しいからね」

レオンは、少し悲しそうな顔をしてミリアを勇気づけた。


ミリアもそれを察したのか、それ以上は、何も聞かなかった。


少しの間、二人は森の中にある美しい湖畔に、ただただ静かに座っていた。


「レオンのことを信じると決めた。それまでは、今まで通りに悟られないようにしなくちゃ•••」

ミリアは、アジトへと戻ると自分の使命を黙々と真っ当していった。


「メルキド博士、任務は失敗しました。申し訳ございません」

レオンは、初めて失敗報告をしなくてはならなかった。


「レオン、状況を」

「はい、エリスは、「魔法陣使い」でした。手下の【MACOK】は、非常に強力で精神支配系の魔法陣を使うようでした。なんとか、逃げ切りましたが、止めを刺すまでには至りませんでした。申し訳ありません」

レオンは、床に頭を擦り付けて謝罪した。


「なるほど、まあ今回はその情報だけでよしとしましょう。ただし、失敗は、二度と許しません。それを肝に命じるように!」


「ありがとうございます。ありがとうございます•••」

レオンは、何度も呟いていた。


アジトに戻ると、ミリアのことをリナに相談するか迷っていた。


「レオン、任務失敗なんて珍しいのね•••」

「ああ、リナ、相手が悪かった•••」

「相手も【MACOK】だったんでしょ?」

「そうなんだ」

「詳しく聞かせてよ」

「ああ•••」

レオンは、少し息を整えると、

「相手の【MACOK】は、精神系の魔法陣を使うようだったが、僕では倒せないと思ってすぐに撤退したから、あまり詳しくは分からなかった」

「そっか、残念•••」


レオンは、自分の部屋に戻ると、

「リナには、言わない方がいい気がする•••」

全く信じていないわけではないが、そんな気がした。


「メルキド博士、レオンはあれ以上の情報は持っていないようです」

「そうですか、まあ、あなたには嘘はつかないでしょう」

レオンの勘が当たってしまった。

次回 【Luminous Reverie and Dimensional Grimoire】

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