Shadow Nexus and Dark Prince Aether 【闇の組織と魔界の王子】
ハーベルたちと別れた僕は、【MACOK】たちの隠れ家である魔法学院高等部の旧校舎の地下室へとやってきた。
「やはりここにいたか!」
「レオン!」
トリガーが、襲いかかった。
レオンは、空間魔法陣で軽くかわした。
「まあ、話を聞いてくれ•••」
レオンは、申しわけなさそうにうつむいた。
「うるさい!この裏切り者が!」
「そうよ、よく顔が出せたものね」
「あきれた•••」
「レオン、何か事情があるんじゃないの?」
ミリアが、みんなを抑えてレオンに問いかけた。
「ミリア、みんな、本当にすまなかった」
「レオン、話して、みんなもまずは、レオンの話を聞いて!」
ミリアが、大声で言った。
みんなも黙り込んでしまった。
「実は、闇の大精霊の「ルナシェイド」が、俺たちの前に現れたとき、すぐに騙されていることに気がついていた。でも、その場でばらすよりも、利用した方がいいのではと思ったんだ」
「どうして?」
「ルナシェイドが、悪魔の手先だと言うことに気がついたからだ」
「悪魔の?」
「ああ、実は、昔ハーベルと僕は親友だった。その頃はまだなにも分かっていなくて、無邪気に遊んでいた。そんな時、悪魔召喚に巻き込まれた。それがすべての発端だ」
「そのときの悪魔が?」
「ああ、サリエルは、倒すとかそんな次元じゃないんだ。あいつだけは、なんとしてでも消さなくてはいけないんだ!」
「レオンが言うんだから、大概なんでしょうけど、それにしても、私たちに教えてくれてもよかったんじゃ?」
「あの、ルナシェイドは、闇の大精霊だ。気がつかれたら、お前たちに危害が及ぶかもしれない•••」
「私たちをなめてるの?」
「いや、お前たちが強いことは十分に分かっているさ、ルナシェイドにばれるよりも、僕だけが、サリエルの元に下る方が安全だと思っただけだ」
「レオン、しかしだ•••」
トリガーが、口ごもる。
「まあ、納得は行かないけど、俺たちのことを考えての行動だってことは分かったよ」
「私は、薄々勘づいていたわ」
ミリアが、自慢気に言うと、
「ウソつけ!」
「ははは、」
少し場がなごんだ。
「そう言えば、ソーサリーエレメントは、結局どうなったんだ?」
「サリエルを消し去るためには、神様が作ったという石板に、六種類すべてのソーサリーエレメントをはめ込む必要があった。結局、ソーサリーエレメントは、石板と共にくだけ散った。そして、サリエルも消えた。ハーベルが、やってのけたのさ」
「どうやって、レオンが味方だって分かったの、ハーベルは」
「僕たちだけの合い言葉があるんだ。あいつなら気づいてくれると•••」
「なるほど•••」
「それにしても、これからどうするつもり?」
レオンが、真剣な顔になったかと思うと、
「まだ、他の「魔法陣使い」に強いたげられている
【MACOK】たちが、いるはずだ。そいつらを、救出して【MACOK】だけの組織を作ろうと思う」
「なるほど、それはいいな!」
「どちらにしても、私たちは裏の世界でしか生きて行けないしね•••」
リセがそう言うと、みんながうなずいた。
「組織の名前はどうするの?」
「ソーサリーエレメントでいんじゃないか?結局手にできなかったからな」
トリガーが提案した。
「俺は、賛成だ」
「私もそれでいい」
「異議なし」
「そう言えば、レオンがいない間にいくつかの情報を集めておいたぜ」
「なんだ?」
「どこかの村にさっき言ってた「神様」とやらがいるらしいぜ、ちょっと怪しいがな•••」
「そこには、お宝があるらしい。それを頂こうじゃないか!」
「分かった、僕たちは、今日から「ソーサリーエレメント」として活動をする。まずは、【MACOK】の仲間を集める。それと同時に「神様のお宝」とやらを頂くとしよう!」
「そうと決まれば早速行動ね!」
相変わらず、行動が素早い。
あっという間に、全員が方々へ散っていった。
その頃、ハーベルの以前のギルドマスターであるマクリアが、ザイール砂漠のホーリードラゴンの遺跡で、ある事件に巻き込まれてしまっていた。
ハーベルは、事件の真相を調査するためその神殿までやって来た。
そこで、事の真実を知って驚愕してしまうのだった。
「あれが、ハーベルさんですか、なるほど、メルキドが熱を上げていたのも理解できます」
陰から様子を伺っていた深緑のローブのフードを目深にかぶった男が呟いた。
「シグマ、見ましたか?」
「はい、大したことありませんね」
シグマの左手の魔法陣が、緑色に強く輝いていた。
「マリフィス様、今度の召喚もうまく行きましたね」
「今回は、上出来でしょう。なんせ、魔界の王子ですからね!」
「はい、おめでとうございます」
「シグマ、ダリアン王子の動向をしっかり追ってくださいね」
「かしこまりました」
シグマは、植物系の魔法陣を使いこなす【MACOK】だった。
ダリアン王子には、すでに探知魔法陣により発動した、植物の種をしこんであった。
それにより、シグマの有効範囲内であれば、手に取るように行動が把握できるのだった。
「動きがあったらすぐに知らせるのです」
「かしこまりました」
一方ソーサリーエレメントのアジトでは、
「レオン、今いいか?」
「おお、トリガー、なんだ?いい情報でもつかんだか?」
「ああ、どうも悪魔召喚に、もうひとり「魔法陣使い」が、絡んでいるようだ!」
「まあ、そんなこったろうと思っていたけど、名前は分かるか?」
「ひとりは、メルキドだな、もうひとりがマリフィスって言うやつらしい」
「どこにいるんだ?」
トリガーの調べによると、マリフィスは、以前より魔法学会でも問題視されている存在で、魔法陣学において異常な執着と怨念にも似た思考や行動が問いただされていた。
表面上メルキド博士とは、対立関係にあるとされていたが、実際「魔法陣使い」としては、協力関係にあり、以前のサリエル召喚にも深く関わっていた。
しかも、レオンは、その事に全く気がつかずにメルキドに従っていたのだった。
マリフィスは、バルカ大森林の中にある大魔獣保護地区の職員として働いていたが、問題行動が著しいため解雇されたらしい。
その後の行方は不明とのこと。だが、ここに来て新たな悪魔召喚を行ったのではないかと裏の世界で噂になっているようだった。
「また、悪魔召喚を?懲りないやつだな•••」
「俺が絞めてこようか?」
「いや、悪魔を甘くみない方がいい、もしマリフィスと手を組んでいたら厄介だ。とても一人や二人でどうこうできるもんじゃない」
「了解」
「他のみんなは、情報のやり取りはあったか?」
「ミリアが、砂の国「サンドリア」に新たな【MACOK】をみつけて連絡を取っているらしい」
「じゃあ、一度全員を集めてサンドリアへ向かうとするか?」
「そうだな」
レオンたちは、集合するとサンドリアへと向かった。
「サンドリアってトリガーの故郷だよな?」
「ああ、サンドリアにもまだ【MACOK】がいたんだな」
「ミリア、この辺でいいのか?」
「そうね、あの迷宮付近にアジトがあるらしいわ」
ミリアが、【MACOK】のイツキに連絡を入れた。
「イツキ?手筈は整った?」
「はい、いつでも行けます」
レオンたちは、イツキのアジトに乗り込むと、手筈通り人員が手薄な時間帯で、ボスのサガンが一人で仕事をしているところだった。
「サガン!イツキはもらっていくぞ!」
「何だ、お前らは?」
サガンは、魔法陣を発動して砂の兵士を四体作り出した。
「くそ、厄介なもん出しやがった」
「兵士は、私とトリガーで相手をするから、レオンたちは、サガンに集中して!」
「分かった!」
砂の兵士は、トリガーの銃弾もアルカの鞭もすべて攻撃を吸収してしまい、効いている様子がなかった。
「なんだコイツら、効かないよ」
「俺たちは、足止めさえできればいいんだ。とにかく、攻撃あるのみ!」
そう言って、トリガーは銃を撃ちまくった。
その隙に、サクナがサガンの前にたちはだかると、
「おお、かわいい娘だな。俺のところに来ないか?」
サガンが、手を伸ばした。
「なあ、いいだろうーーーデヘヘ」
サクナに振れようとした瞬間、
魅了魔法陣を発動して、クラクラにしたところを、レオンが後ろから羽交い締めにした。
あとはミリアが仕上げの白昼夢を決めた。
最後に、リセの布陣魔法陣によって小さな繭のようにしてしまった。
その瞬間、砂兵士は崩れ落ちた。
「ありがとう、本当に助かったのね」
イツキは、涙を流して喜んでいた。
「ところで、イツキは、どんな魔法陣が使えるんだ?」
「私は、砂陣使いです」
「なるほど、砂のことなら何でもこいってことか」
「はい、結構いろんなことができるのですよ。ただし、水魔法にめっぽう弱いのが難点ですかね」
「まあ、得意不得意をかばい会うのが組織だ。その辺は心配いらない」
イツキは、安心した顔で微笑んでいた。
こうやって、レオンたちは、少しずつ仲間を集めて行った。
「もうそろそろ、本格的なアジトが、必要だな!」
「結構、人数も増えてきたし、何処かに人に見つからず、大人数でも問題ない建物はないかな?」
「そんな建物あるわけないだろ?」
「いや、うってつけの場所があるよ」
レオンは、サリエルの宮殿のことを思い出した。
レオンたちは、空間魔法陣で一気に移動すると、サリエルの宮殿はまだそのままだった。
「多少、修繕は必要だけど、十分使えそうだ」
「でも、寒いわね」
サクナが、ブルブル震えながら言った。
「辺境の地だから、誰も来ないのはいいけど、この寒さはどうにかならないか?」
「我慢しろ、そのうちどうにかする」
「そのうちって、いつだよ•••」
こうして、【MACOK】の組織である「ソーサリーエレメント」の本拠地が完成した。
次回 【Endgame and Genesis 】