3. 努力のコツ
ある時気づいた。寝る時間がもったいない。
僕は毎日きっちり8時間は寝ていたけど、世の中にはショートスリーパーなんて人達がいるらしいじゃないか。
僕はショートスリーパーのなり方を調べた。
全然情報がない。
嘘かホントかも分からない。
やれることを全部試した。
いろいろと仮説を立てて実験して、上手くいかなくてまた最初から。
しばらくそんなことをやっていた。
すると、ある時から段々できるようになっていった。
寝る時間が短くなっていった。
どれが効いたのかはわからない。
何か一つだったのかもしれないし、それまでの全部が合わさったのかもしれない。
高校に上がる頃には1日2時間の睡眠で快適に目覚められるようになっていた。
これは大きい。これで、もっと勉強できる。
最初の頃の10倍くらいは勉強しているだろうか。
なんとなく掴んできたぞ。
努力って素晴らしい。
3年生に上がる頃には、平田くんの背中もあと一歩というところだ。
「お前、才能ないのによくそんなに努力できるよな。俺お前に追いつかれそうで焦ってきたわ。」
平田くんは珍しく焦っていそうだ。
「才能が無いからね。努力することしか出来ないよ。努力の仕方、教えてあげようか?」
僕は立場がいつもと逆だなと思いながら、にやにやした。
「なんだよ、コツでもあるのか?」
「うん、もちろんあるよ。簡単さ。今よりもっともっと、ひたすら頑張るんだよ。」
「…」
「遊ぶ時間削って、テレビを見る時間を削って、寝る時間も削って、ただひたすら頑張ればいい。ほら、誰でも出来る。」
「…お前やっぱり馬鹿だな。」
「知ってる。」
「…まあ、努力の才能があるのは認めてやるよ。根性は呆れるほどだな。」
「うん、多分僕が持ってる唯一の才能だね。」
「俺も、ちょっとはお前を見習ってみるさ。」