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追放者ギルドの日常

「ええ!  たった1日でゴブリンを30匹も!?

…嘘!?  これゴブリンジェネラルじゃないですか!?

って ええええええええ!!!!

ゴブリンエンペラーまで討伐したあ!!!?」


冒険者相手に見事なテンプレリアクションをしてくれているのは、窓口職員のリア君である。

(彼女は生真面目な上に驚き方が大袈裟だったのでスカウトした。)

大きな袋を持ち込んで来たのは無自覚純真少年系の被追放冒険者で、某有名パーティーを追放されてこの《追放者ギルド》に移籍してきたとのことだ。


「ど、どうしてFランクのカール君がこんなに強いんですか!?

しかも《重力》なんて聞いたことも無いマイナースキルしか持ってないのに!?

しかもどうしてソロなんですか!?

それに! あのSランクパーティー《暁の牙》さん達が

『アイツは役立たずだから雇わない方がいい』

って言いふらしていたから、私てっきり!

で、でも急にこんな討伐素材を持ってこられても…

疑う訳じゃないんですけど…  カール君はまだ若いし報告書の信憑性が…」


リア君、ありがとう。

君の驚き声で大体事情は理解出来たよ。

俺は窓口まで行きリア君に一言労いの言葉を掛けると、カール君の討伐を正式に認定し、正規の支払いを行った。

カール君は満面の笑みでペコリと頭を下げると、どこかに走り去っていった。


次にやって来たのは、悪役令嬢系の被追放ヒロインである。

プロフィールカードを見る限り、部屋に閉じこもってアイテム研究をしていたら婚約が破談になった上に実家を追い出されて冒険者になったらしい。


「ええええ!!! 

エクスポーション!!!

それも30本も!!!!????

ヒルダさんて何者なんですかあああ!!!???

王都の錬金術ギルドでも月産5本が限界なんですよ!?

それをどうしてたったの3日で!?

し、しかし!

前例がありません!

鑑定機は本物と表示してますが、こんな数量を持て来られても

それで依頼完了とは…」


リア君の大袈裟な驚きに悪役令嬢ヒルダがドヤ顔で唇の端を歪める。

本人は「趣味の研究に没頭してたから破談された」と事あるごとに主張しているが…

そのドヤ顔とドヤ態度が嫌われたものと容易に推測出来る。



「あ、ギルド長権限で承認します。

ヒルダさんこれからも宜しくお願いしますね。」



「ふっw ここのギルドは才能に理解的で助かるわw

それじゃあ、次はエリクサーでも持ち込んでやろうかしらww」



俺が手早く承認印を押すと、ドヤ顔令嬢は嬉しそうに去っていった。

急がなきゃ行けない理由がある。

それはこの時間帯に多分あの男が…

あ、来た。



「フー。 

依頼、済ませて来たんだが。

…今、大丈夫か?」



「はい、先週討伐依頼を受諾して下さった新人のアランさんですね。

随分と早いようですが、どの依頼を完了して下さったですか?」



「ん?

全部だが?」



「は?

全部と言いますと?」



「あそこにあった張り紙に載っていたモンスター。

目に付く限り全て討伐してきたんだが?」



「あははは。

いやですねー。

あそこの特殊討伐コーナーは王国全体で懸賞を掛けてもどうにもなってない

S級モンスターばかりなんですよーww

からかわないで下さいよーww」



「そうか…

俺はそこまで強敵とは感じなかったが…

この辺ではそういう扱いなんだな。

まあいい。

とりあえず、討伐部位を提出させてくれ。

おっとお嬢さん、もう少し下がってくれ。

俺のアイテムボックスは特別なんでね(ニチャア)」



ドサア(お約束)



「きゃ、きゃーーーーーーーーーーー!!

何ですかこの量は!?

え? オーガキングの首級?

ゴールドタイガー? 

ってワイバーンが5体もあるじゃないですか!!

こんな所で広げないでくださーーーーい!!!」



「やれやれ、広げてみると結構カサがあるもんだな。

すまないすまない。 

裏の解体所でチェックを貰ってくるよ。

収納!

やれやれ。」



追放者ギルドなどという珍妙な名前とコンセプトのギルドが大成功を収めている理由を領都の連中は理解出来ていないらしいが、それは仕方ない。

俺は転移前の世界で腐るほど追放系のラノベを読み漁っていたのだ。

こういうチートキャラを一体でもギルド登録させれば勝確なのは最初からわかっていた。


俺はまずアランを労い褒め称え、ギルドの有り金を全て渡す。


『すまないな。

これでギルドの有り金全部なんだ。』


「おいおいギルマス。

別に俺は金額が足りないくらい構わないが、キャッシュが無ければ他の連中が困るだろう?」


『そんなこと言われてもオーガキングの懸賞金建て替えだけでも金庫が空になったからな。

当分、閉めるよ。』


「閉めたら困る奴も居るんじゃないか?」


『俺も含めてみんな困るだろうな。

でも仕方ないだろ現金が尽きたんだから。

ほい8億ウェン。 残りの30億ウェンはツケにしておいてくれ。

ちょっくら領都まで報告に行ってくるわ。』


「なあギルマス…

提案があるんだが…」



結局謎のFランク新人冒険者アランは、領都の開拓省まで自分で討伐部材や魔石を換金に行ってくれることになった。

『それならウチを通す必要もないだろ? 領都のギルドに登録してそこで売れよ。』

「こっちにも色々あるんだよw 追放者ギルドの名義を使わせて貰うだけでも助かっている。」

こんな遣り取りがあって、アランに換金を丸投げすることにした。

副ギルド長のポストを創設してやろうとするが難色を示されたので、《アドバイザー》の肩書を贈呈する。

以後、コイツは勝手に大物を討伐して勝手に領都で換金して勝手にギルドに莫大な手数料を落してくれる存在になる。

リア君は「こんなのアランさんの負担が多すぎです!」と大袈裟にリアクションするが、別にいいんだよ。

どうせコイツ、ワープかそれに準ずるスキルを隠し持ってるんだから。

それでさあ。

アイテムボックスも無限に入るんだろ?

知ってるよ、ラノベで見たし。




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