四十話 おかえりとただいま
マリアが、アグノスとクレメントと共に魔王の城に戻れば、アリスィアが門の前で待っていた。
弟のアグノスを見た瞬間、安堵の表情を見せたが、マリアに視線を向けた途端、頭を下げた。
「え……?」
「……すまなかった」
絞り出すような声。
それに、マリアだけでなく、アグノスも目を丸くする。
「兄貴?」
「ど、どうしたの?」
弟とマリアの反応に、アリスィアは気まずそうに顔を上げた。
「マリアを追い出したの……俺だし」
そういえばそうだった、とマリアは思う。
でも、あれは仕方のないこと。弟を思えばこそ、だ。
「もう終わったことよ、アリスィア」
マリアはそう言って、アグノスと苦笑した。
それを見たアリスィアは、クレメントに説明を求めるように青い視線を向けたが、友人が肩を竦めるだけなのを見て何かを察したのか、それ以上は何も言わずに、巨大な門を片手で開けた。
城に入れば、マリアにイェシカが真っ先に抱き付いてきた。
が、マリアの右腕を見てハッとし、離れる。傷に気が付いたようだった。
「イェシカ、大丈夫よ」
そんなイェシカを今度はマリアから抱き締める。
「ありがとう」
イェシカも、優しくマリアを抱き締め返した。
そこに、バタバタと慌ただしい足音が複数聞こえてきた。
「マリア!」
「帰って来たか⁉」
マリアがそちらを見ると、リリィとバリー、城の住人達が駆けてきた。
「よっ、良かった……」
リリィがマリアの顔を見て、ホッとしたように呟いた。が、すぐにいつもの生意気そうな顔に戻り、腕組みをする。
「なっ、なんだ、無事だったんだ」
「ったく。まだかまだかと一番言ってたのは誰だったか……」
「ちょっと! バリー!」
バリーの言葉に、リリィが慌てた。
それを見た周りがまたリリィを囃し立て、マリアも微笑む。
と、また奥から小さな足音がした。
「マリア―!」
「戻ってきてくれたのね!」
「きゃっ⁉」
双子がマリアに飛び付いた。
よろけるマリアを、アグノスが慌てて支える。
「おい! ユグ、ユノ! マリアは疲れてんだぞ!」
「えぇ⁉」
「アグノスばっかり、マリアに引っ付いてずるいぃ」
「ひっ……引っ付いてって……!」
双子に言われ、顔を赤くするアグノスだったが、マリアの体からは離れようとしなかった。それがむず痒いような、嬉しいような、そんな気分でマリアは彼に体を預けていた。
「なんだなんだ? ちょっと見ない内に、イイ感じになったかぁ?」
「ちょっと! いい加減離れなさいよ!」
リリィの調子が戻った時。
柔らかくもしゃがれ声が、皆が集まる広間に響く。
「これこれ。皆がここにおったら、マリアがゆっくりできんよ」
「ソフォス」
「おかえりなさい、マリア」
皆の歓迎だけでなく、好々爺の微笑みに、マリアも自然と頬が緩む。
「ありがとう。ただいま」
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