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十五話 魔王の兄弟1

 それは、裂け目からぬるりと体躯を現した。

 先ほどの魔獣よりさらに巨大で、視界すべてが漆黒の闇に包まれたように感じる。

 闇にパカァと赤い三日月が浮かんだかと思えば、てらてらと黄ばんだ鋭い牙が覗いた。


『ァハァ……ヨ……モ……』

「え?」

『ヨォクモォ……アタシノカァイイコドモ達ヲォ……!』

「こいつ喋れ……ッ⁉」


 驚愕したマリアに、ぬるりとしていた魔獣が突如狙いを定めて突進してきた。


(速い!)


 さっき相手にしていた二頭の比ではない。

 左に飛び、眼前からの突進からは逃れたが、相手の反応が速かった。

 血のように真っ赤な三日月が、マリアの青い瞳を覆い尽くそうとする。


「⁉」


 が、体に当たった衝撃の主は、別だった。


「イェシカ⁉」


 二人で地面に倒れ込む前に、マリアはどうにかイェシカの体を支えて体勢を立て直そうとした。

 しかし、地面に伸びた根に踵が引っ掛かってしまった。


「しまっ……!」


 その隙に片目の魔獣が左から飛び掛かってきた。


(剣が振れない! でも、ここで諦めたら……!)


 剣を振ろうと、不安定な位置から体を捻る。が、間に合わない。

 魔獣の爪が、二人の体を引き裂く――前に、魔獣の体が真っ青な炎に包まれた。


「えっ?」


 ギェエエェ! と不気味な断末魔と共に、マリア達を片目で睨みながら、魔獣は焼失した。

 勢いで倒れかかっていた体が、不意に軽くなったかと思えば、足の裏が地面にしっかりと着く。それは、イェシカも同様だった。


「あ……」


 見上げれば、そこにアリスィアの端正な顔があった。

 マリアは固まった。

 アリスィアに表情はなかったが、放たれる気は明らかに怒りを孕んでいた。

 イェシカもそれを感じ取っているのだろう。真っ青な顔で俯いた。

 深い青の瞳がそんな二人を一瞥して、巨大で恐ろしい魔獣へと視線を移した。

 狂気に満ちた鉛色の双眸が、三人を凝視している。


『ナゼダァ? ナゼオ前ガ人間ヲ……?』


 放たれる言葉に狼狽の色が滲んでいた。

 が、アリスィアは何も答えず、無表情に魔獣を見据えるだけだった。

 そのオーラはまさに魔王のそれで、助けられたはずのマリアとイェシカも委縮してしまうほどだ。


『グゥ……』


 無言の圧力に耐えきれなくなったのか、魔獣が背を低くし、再度身構える。黒い炎のような毛並みが激しく揺れた。


(まだ戦う気⁉)


 マリアも剣を握り直したその時、真紅の矢が魔獣の目の前に勢い良く突き刺さった。


『グオォ!』


 怯んだ魔獣に、追撃する影がある。マリアには、赤い残像のように見えた。


『ギッ』


 歯軋りをして、魔獣はその場から飛び退いた。

 魔獣がいた地にめり込んだ大剣をいとも簡単に肩に担いだその赤い影は、マリア達に背に、敵へと向いた。

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