十四話 闇が裂ける時
恐怖を顔に貼り付けたイェシカ・オーバリーを背に庇い、マリアは剣を構える。
「イェシカ、隠れてて」
マリアが言えば、戸惑いながらも頷く気配がした。
狼のような獣は、鉛色の双眸に怒りを滲ませ邪魔者を睨み付けながら、自らの体の黒い炎をさらに燃やした。
どうやら相当ご機嫌を損ねたようだ。
「見たことない魔獣ね」
魔獣でも、敵は二頭。普段のマリアなら造作もない。
しかし、今はイェシカが背後にいる。
(まっ、やるしかないか)
先に仕掛けてきたのは、魔獣二頭だった。
タイミングをずらして、マリアに飛びかかってくる。一頭がマリアの気を引き付け、もう一頭がイェシカに襲いかかるつもりだろう。
「あら、結構頭がいいのかしら?」
マリアは一頭目の爪をかわしながら、自分を避けていく魔獣に左手を素早く振る。と、投げナイフが二頭目の鉛色の片目を貫いた。ギャアァ! と恐ろしい咆哮を上げ、それは蹲った。
マリアに襲いかかったもう一頭が、仲間のその様子に怯む。
その隙にマリアは剣を薙いだ。斬った感覚はなかったが、魔獣の黒い頭が横にすっ飛んでいき、黒い炎に包まれていた体躯は消えた。
仲間を殺され、片目でマリアを睨む一頭を、マリアも怯まず見据える。
そのまま飛び掛かってくるかと思いきや、片目を失った魔獣は天に向かって咆哮した。
「?」
マリアも天を仰ぐ。
朝陽を遮るように空を覆う枝葉が、不気味に揺れていた。
咆哮の余韻がなくなり、一瞬静寂に包まれた森。
が――
「ッ⁉」
唐突に肌が粟立った。脳内に警告音が鳴り響く。
(なっ……なに……?)
次の瞬間だった。
「えッ?」
ビキリッと音を立てて、枝葉の空が裂ける。
そして、その裂け目から禍々しい鉛色の双眸が光った。
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