人間観察
美しく輝く夕日が頬を照らしていた。
立ち並ぶビルディングたちは照らされ、街をゆく人々は美しく照らし出されている。
そんな雑踏の中で、人々の流れに逆らって歩いてゆく一人の老人がいたんだ。
俺はその背中を見て、思った。
「あんた、今までどんな人生を送ってきたんだって、今なんでそんな服を着て、なんでそこに歩いているんだって、手には買い物袋をぶら下げて、夕飯の支度をする光景が思い浮かぶ。どこにでもある家庭。老夫婦二人で会話もあんまり多くなくって、今の生活に満足しているんだろうか。俺にはそうは思えなかった。今までどんな人生を送ってきて、どうしてその生活を送っているのだろうか。すべてを知りたい。あんたの人生の全てを。」
俺は同時に色んな感情が吹き出してくるとともに怖くなった。俺もいつかそうなってしまうのだろうかって、俺が今までしてきたことなんて誰もかれもがしてきたことで、結末は変わりゃしない。
街をゆく人たち。しがらみを抱えて生きていくこと。
時には思い悩み、愛を育んで一生を終えてゆく。当たり前の生活、当たり前のこと。
「変わらないもの」本当はあるのかもしれない。俺はまだなんにもわかっちゃいないのかもしれない。
街をゆく人々に俺も混ざって歩いてゆく。未来を探しに。