表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マーリンを訪ねて   作者: 青沼サイ
3/18

少年の誠意

レナードはオーウェンに(ともな)われたリリベットを見るなり彼女を抱きかかえ、足ばやにどこかへと向かい始めた。オーウェンはそれについて行きながら、奇妙なサボテンのこと、そのサボテンの棘がリリベットを刺したことをレナードに動転気味に伝えた。そして、

「あの、病院行きますか!?」

と尋ねた。するとレナードは、

「いや、これは普通の医者じゃ無理だよ。大丈夫、僕が解毒できるから。まず僕らが泊まってるホテルに行く。」

と言った。解毒という言葉にオーウェンは、あの棘には毒があったのか、とショックを受け、

「毒!?そんな!?サボテンに毒なんて聞いたことない!」

と言った。それにレナードは、

「普通のはね。君たちが見たのは普通のサボテンじゃない。この毒は大人なら3日くらいで死んじゃうくらい強いものだ。多分、この祭りの騒ぎに寄せられて来ちゃったんだろうね。」

と答えた。その言葉にオーウェンは(なか)茫然(ぼうぜん)とする。もしリリベットが止めてくれなければ、自分が刺されていた。

(俺のせい。)

そうした思いのなか、オーウェンは気づけばホテルの前に着いていた。ホテルの部屋に入るなり、レナードはリリベットをすぐベットに寝かせた。そして彼女の腕に残っていたサボテンの棘を手を触れずに抜きコップへと入れた。宙に浮いてひとりでにコップへと入っていく棘達。これはレナードの魔術なのか、とぼんやりと理解したオーウェン。棘を抜き終わったレナードはオーウェンの方へ向き、

「セージ、乾燥ラベンダー、紫と白のヒヤシンスの球根、ヤギーのレバー。これらが手に入る場所、わかる?」

と聞いてきた。

「は、はい!多分、この近くの雑貨屋と、花屋。あと少し離れてるけど、肉屋に行けば全部揃うと思います。」

と答えるオーウェン。それにレナードは満足したように頷き、

「OK。じゃあ、案内してくれ。」

と言った。オーウェンはそれに頷き、ベットに寝ているリリベットを見る。苦しげに目を閉じている様子に思わず、

「あの、ごめん!俺を(かば)ってこんな目に・・ほんとごめん!」

と謝罪の言葉を口にした。するとリリベットは、

「ちょっと、やめてくれる?それじゃあ私、まるでもう助からないみたいじゃない。」

と薄く目を開け言った。それにレナードが、

「はいはい、大丈夫だから。この天才魔術師である、お兄ちゃんがついてるからね。リリベットは絶対僕が助けるから、安心してここにいなさい。」

といいながら、彼女の頭を撫でて軽くキスをした。リリベットはそんな兄に

「ウザイ・・・。」

と眉間に(しわ)を寄せながら返した。どうやら兄からのスキンシップは嫌がる微妙なお年頃のようだ。そんな妹の反応には気にせず、

「さぁ、行こう。」

とレナードはオーウェンに声をかけ部屋を出た。


2時間ほどでオーウェンとレナードは材料を全部揃え、リリベットがいる部屋へと戻ってきた。まずレナードは理科の実験用具のようなもの達をスーツケースから取り出した。小さな壺、アルコールランプ、小さな三脚、小型ナイフ、そしてガラス製の棒。次にレナードはアルコールランプに手をかざし火をつける。それから揃えた材料をナイフで刻みながら、小さな壺へと入れ、火にかけ、ガラス棒でかき混ぜていく。しばらく彼が壺の中身をかき回していると紫色の煙が出てきた。最後にレナードがツボへと手をかざし何か(つぶや)いた。すると、ポンっと音とがして紫の煙が消えた。レナードがその壺の中身をコップへと注げば、ラベンダー色の半透明の液体が出てきた。それをリリベットへ飲ませるレナード。すると彼女の腕の真っ赤な腫れがみるみると引いていった。彼女も苦しくなくなったようで、表情がずっと柔らかくなっていた。それを見たオーウェンはホッとし、改めてリリベットへと謝罪する。

「ごめん。俺のせいで大変な思いをさせちゃって。レナードさんも、すいませんでした。俺のせいで・・・妹さんにもレナードさんにも迷惑をかけました。」

それにリリベットは、

「もういいわよ。治ったんだし。」

とややぶっきらぼうに答えた。それを見てレナードは、

「はいはい、照れないで素直に受け取ろうね、リリ。まぁ、君がいなかったら解毒剤の材料もあんなに早く揃わなかっただろうし、そしたら手遅れだったかもしれない。君のせいでもあるけど、君のおかげでもある。とりあえず、結果的に君がいてよかったかな?」

と微笑みながら言った。その言葉にオーウェンはあることを決意し、レナードに伝える。

「あの、さっきは断ったけど、俺手伝います!マーリン探し!・・・どこまで役に立てるか分からないですけど。」

そのオーウェンの申し出にレナードは笑顔となり、

「ああ!よろしく頼むよオーウェン!」

とオーウェンへと手を差し出した。そしてオーウェンはその手をしかっりと握り返した。

補足

セージ・・・古来から万能薬用ハーブとして西洋で使われています。高い殺菌作用があります。

ラベンダー・・・鎮痛効果

紫のヒヤシンス・・・西洋での花言葉は「I am sorry」(ごめんなさい)

白色のヒヤシンス・・・西洋での花言葉は「I’ll pray for you」(あなたのために祈ります)

ヤギのレバー・・・栄養価が高く、疲労回復、新陳代謝を促進。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ