ちゃぷ4
それから約一ヶ月が経った。
みんなに手伝って貰いながら、何とかして中学校に上がって初めてのテストを、赤点ギリギリ回避という結果で終わらせることができた。
そしてついに……。
「春休みだぁああ〜♪」
こまちが部屋の周りをスキップする。
「確かにそうですね。もう本格的に春ですね……そういえば皆さん……」
リビングに偶然、あの六人の方が揃ったタイミングで、わたしは話を切り出した。
「……ずっとここに住むつもりですか」
そう、この一ヶ月間、私の家はうるさいほど賑やかだった。朝りくに叩き起され、昼から皆さんによるわたしのお勉強手伝いの会。夜は外に出かけたり、雨の日は家で遊んだり。
一人暮らしの頃の、朝昼晩ぼうっと世間を眺める生活とは比べ物にならないくらい変わっていた。
一人でいる時間はトイレのときくらいしかなく(それはそれでなんかなぁ)、大体は誰かがそばにいてくれた。
そしてその間。
わたしはみんなのことを───お話で上がって来たところだけだが───知ることができた。
「あ、別にダメとは言いませんが…狭くないですか?二階建てとはいえ、部屋は少ないので。」
「確かに七人の間としては少々窮屈か。では────またあの時同様、戦って勝者のみが残るというのは…」いりあが前に一歩出る。
が、「「拒否」」「「やだ」」とキッパリ返されて、やはりダメなのか、とため息をついた。
このメンバーで、ここの環境で戦ったらどうなるのか。あるいはわたしがそれを知る前に皆さんに首を持っていかれているのかもしれない。
ありんさんは本名伊達ありん。ここに移ってくる前までは人をばさばさ斬っていたらしい。妖刀という、なんらかの魂が宿った刀剣を使い、敵と闘っていた。
実は移転直前まで、全身に変な生物が生えた半人類の大群に囲まれ、ピンチだったという。
「私は別に可愛いお洋服を来ていられるなら、あと楽器があればどこでもいいけど、もうちょっとひとつくらい部屋が欲しいよね」
共感、とあすくはこまちを抱いてソファーに寝っ転がっていた。
あすく、本名振琴あすく。いままでは普通の女子高校生として、のんびり学校生活を送ってきたらしい。わたしの理想に最も近い形だ。
それに加え、音楽を二歳頃から叩き込まれ、某音楽強豪校に入っていた。その中でもトップクラス(本人曰く)で、前話題に出ていた「そると」はあすくの好きな人「流奏そると」で、同い年の隣のクラスの子だ。
幼なじみで、あすくさんをずっと支えてくれた男の子らしい。
彼女が移ってきたということは、わたし的に高確率で「そると」さんも移ってきているはず。会ってみたいですね、会えるのなら。
「あたしはもっとオシャレなお部屋が欲しいなぁ〜」
緒野こまち。普段は普通の小学五年生として学校へ行き、「オドロ」と呼ばれる怪物が出現した時はもうひとつの本職「でざいな」───いわゆる「魔法少女」に変身し、戦うらしい。
ただし本人だとバレるのはまずい。
なんでですか、と前に尋ねたら、りくが口を突っ込んだ。
「ったく、そんなのもわかんねぇのか。家にまぁテレビすらないならしょうがねぇな。───つーまり、こまちがそのなんつったっけ、『でざいな』?って知った相手はまず学校をぶっ壊しに来るだろ?人質でも取られたらまためんどくせぇからだよ」
世界観が違うからなんとも言えないが、わかりやすい説明だった。
相当そういう系のゲームやり込んでたもんね、ととほに言われ、りくはうるせぇ!とそっぽを向いた。
あれ、おふたりってずっと戦っていたんじゃ……。
りく、季白りく。荒れ果てたとある街で戦い続けてきたという。魔術を具現化して、「感情」から「冷徹機械」を生産。それを使って戦う。
かっこいい。一度見てみたいですね。
とほ、杜浦とほ。前も語ったが、防御特化型。ただし詠唱を必要とする。
これも見てみたいです。
このお二人は、基本的にずっと口喧嘩もしくは戦闘を繰り返してきた。原因はまだ教えてくれませんが、確かに摩擦が無くなった生活の中でも、二人の間になんらかの壁を感じます。過去に何かあったのかな。
そして最後にありん。(詳細はほぼ教えてくれませんでした。一度転生して、また今回移転してきたみたいですが。)
無口で、必要最小限に行動を抑えているような、不思議な彼女だが、すごくわたしからすると優しい人。
そういえばこの一ヶ月間、ありんさんはずっとそばにいてくれましたなぁ。心理的にヒールを受けてきた、といえばいいのかな……
「なら……引っ越す?」
ほかならない、あのありんがそう切り出したのを聞いて、その場にいた全員が驚く。
「おいおい、まだはえーだろ。新築どこにするんだよ」
「そうだね、まだ完全には落ち着いていないし。もう少しいてもいいんじゃないかな」
「あー、新築はもう決めた。というか────買った」
…………え!?!?!?