第四話 悪者
「毒島くん!」
「……」
黄子は、その様子をみて、立ち尽くすしかなかった。
うわ。
黄子は、毒島と香子のもとに駆け寄るが、何も言葉を発することができない。
私の恋、終わったの?
そうだ。
よく考えてみたら黄色と紫色は相性が悪い。
叶うはずなかったのかな?
そうだとしたら、好きになったのは間違いだったんだ。
自分で自分を傷つけただけだった。
悪者は私だった。
◆
「ミサイルは予想地点と全く異なる、中国、北京に落ちたそうです。今回は非常事態だったので、体育祭を明日へ持ち越そうと思います。……」とあのパンツの件の女教師が言う。
まあ、そうだよな。
もう少し桃山さんと居たいけど、仕方ない。
「また明日!桃山さん。」
「うん、毒島くん!」
こんな些細な会話でも、まだ心が浮き浮きしてしまう。
悪者は君だ。
◆
「速報です。中国、北京に落ちた核弾道ミサイルによって、推定で約200名が死亡、約1000名が重軽傷を負っているようです。核ミサイルなので、その近辺に近づくことはできず、推定人数となりますが、……」
でも、なんで突然。
「北朝鮮は、何者かのサイバー攻撃によってミサイル発射が行われた。と言及しています。」
国際的に信用度が低い北朝鮮がそんな言い訳で逃れられないだろ。
だけど、中国と北朝鮮ってそんなに仲悪くないはずなんだよな。
そうなると意図的に発射したとは言いにくい?
まあ、自分には関係ないしいいか。
さあ暇だし、YouTubeでも見るか。
毒島はパソコンを開く。
あれ?電源ついてるぞ?
(新着メッセージがあります。)
誰だ?
「虹村さんから?珍しいな」
(これで、もうあなたが黄子に近づかなくて済むんだ。本当は殺したいほどだったけど、これくらいで許してあげる。多分社会的に一生死ぬんだろうけど。)
「どういうことだ?訳が分からない。」
もう一度メッセージを読もうとする。
「あ、あれ」
そのメッセージは消えてしまったようだ。
さすがにこれには意味を感じる。
殺したいってどういうことだ?
まず虹村さんってこんな人だった?……
「ピンポーン」
こんな昼間から誰だ?
「はーい」
ガチャ。
「すみません。毒島紫穏さんについて伺いたいことがあるのですが。」
「あ、僕がそうですけど。」
「私は警視庁の高天原という者です。毒島さんに国際指名手配が出されています。署まで連行します。あと3分だけ待つので、その間に家族への連絡を済ませてください。」
国際指名手配?俺何もしてないぞ。何かの間違いだ。
「多分、人違いです。僕は国際指名手配されるようなことをする勇気があったとしても、その能力はありません。とにかく僕は何もしてないんです!」
「黙れ。話はあとで聞く。」
これはまずい。絶対に連れて行かれる。
でも仕方ない。
「もしもし母さん、ちょっと用事があるから今日帰れない。」
「あれ?どうしちゃったの?紫穏もついに女の子と…」
「そんなんじゃない。緊急事態なんだ。とにかく、今日は帰れない。」
取り調べもすぐ終わるだろう。
「わかった。楽しんで来なさいよ♪」
楽しめねえよこのクソババア。
一応…連絡しとくか。
「も、もしもし、桃山さん?」
「あ、も、桃山です。」
「え、ええと…そ、その、やっぱなんでもない!」
切ってしまった。
よく考えたら指名手配で警察に連れて行かれるとか言ったらただの犯罪者だと思われるだけだった。あぶなっ。
「毒島さん、行きますよ。」
毒島は静かにパトカーに乗る。
僕は悪者なんかじゃない。
きっと何かの間違いだ。