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悪者は僕だ  作者: ブルーノート
第一章
3/5

第三話 桃色の告白

 「リア充は爆発してください。」

 虹村沙絵(にじむらさえ)は言う。

 「けっ。あいつら、ふざけるな。」

 沙絵の口調は偽ヤンキーみたいに悪い。

 「あー、本当にイライラする」

 

 さあ、仮想OSを閉じて、と。次は何をしよう。

 市内放送の次は…

 

 毒島くんのパソコンかな。

 

 独自に開発したハッキングプログラム。

 高性能、広範囲のWiFiルータに毒島のパソコンを強制的に接続させる。

 

 「あいつら二人を引き離したい。あいつが嫌いだ。」

 

 仮想OSを開き、毒島のパソコンを遠隔操作する。

 錯乱目的の仮想OSだ。

 

 カタカタカタ。

 「……」


 「……これで毒島は立派な犯罪者だ。」



 「ねぇねぇ毒島くん?」

 黄子は言う。

 

 「なんだよ」

 

 「さっきの話なんだけど…」

 

 

 

 

 ピコン、ピコン。

 突然、人間が本能的に嫌うような音が聞こえてくる。


 「なんだ?地震か?」


 いや、これはミサイルのサイレンだ。


 「ただいま、北朝鮮から核弾道ミサイルが発射されました。予想着弾地点は、日本、山梨県昆布市付近です。近くにお住まいの方は、直ちに避難してください。」


 「またいたずらだろ。」

 「それな。」


 だが、そうではなさそうだ。

 

 「生徒の皆さん、よく聞いてください。」

 あれ、校長だ。

 「現在、ミサイルが発射されました。現在、県に確認したところ、デマではなく、正しい情報であるようです。この付近は着弾が予想されるので……」

 

 嘘だろ?死ぬのか僕。

 やりたいこと何もできてないのに。

 


 「着弾まであと30秒です。直ちに避難してください。」

 

 毒島だけでなく、生徒のほとんどが動揺し、混乱している。


 ああ、僕、死ぬんだな。


 「あと20秒です!急いで!」


 西の空にはもう飛翔体が見えている。


 ああ。


 死ぬとしたら……俺にはやらなければならないことが一つだけ残っている。


 絶対にしなくてはならない。心残りがないように。




 

 「桃山さぁぁぁあん!……」

 

 結局僕の命も終わる。

 

 「あと10秒!」


 「毒島くーーーん!」


 僕の名前を呼んでくれた。


 「あと5秒です!4、3…」

 

「今までありがとう。僕は、桃山さんのことが好きだ。」

 胸が張り裂けそうになる。


 「私も、だよ。」

 

 香子は涙を流す。

 そして、毒島の世界は桃色に染まる。

 

 ああ、桃山さんも僕と同じ気持ちだったんだな。

 もしこの、二人の世界が続いたら、どんなに幸せだったんだろう。

 終わると思っていた世界が始まった途端に、潰される。

 結局終わるんじゃないか。

 なら、もう終わっていいや。

 君がいるから。

 だけど、あと一秒だけ…

 

 毒島は香子を強く抱き締める。

 

 香子はそれに応えるようにして、抱き締めて、涙を流す。

 

 「ありがとう。」


 

 「2、1、」


 二人で終われるなら、これが本望だ。


 「、0。」







 あれ?  

 もう死んだのか?

 痛みも感じていない。

 毒島はゆっくりと目を開ける。

 「あれ、?」

 

 柔らかい感触に包み込まれている。

 「あれ、俺、、死んでない?」


 死んでいない。

 ミサイルは落ちなかった。


 「ごごごご、ごめん!桃山さん!……え?」

 

 体を離そうとすると、寄りかかってきた。

 香子は立ったまま気を失っている。

 その目には涙が浮かんでいる。


 「大丈夫?桃山さん。」


 


 少しして、おもむろに目を開け、香子は周りを見渡す。

 

 「あれ、生きてる?」

 「死んじゃったのかと思った。」香子は言う。

 

 「僕も。」

 

 「助かったんだね。本当に良かった。」

 香子は、お母さんとまた会えた迷子のように、安心感をにじませて声をあげて号泣した。

 毒島は、その涙を胸で受け止め、桃色に混じる紺色を拭い続けた。

 

 

 

 しばらくして正気を取り戻し、香子は何かに気づく。

 「……!?」

 

 「ご、ごめん!私、ずっと毒島くんに寄りかかってたんだね。」

 「恥ずかしい。」


 「ああ、大丈夫だよ。」

 

 甘い桃色。

 ずっとこの色に染まっていたい。

 ずっとこの色を愛していたい。


終わると思い込んでいて、実際には終わらない場合。

 その場合、映画を考えて見ると分かりやすいが、浮遊感を感じる。

 きっと二人はその感覚を感じたのだろう。

 

 リア充羨ましいなぁ。(作者)

 ふわふわどきどきしたいなぁ。(作者)


ミサイルは、実際には、予想地点と全く違う場所に落ちました。毒島がみた飛翔体は、北富士演習場の訓練機で、毒島の勘違いでした。


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