拠点
カリブ盗賊団の幹部だった若旦那が街の警備隊に捕まったことで、ニコラス達は自由の身となり若旦那の屋敷は取り潰されることとなった。
「おい、聞いたか!ここら一帯を縄張りにしていたカリブ盗賊団が一夜にして壊滅だってよ。」
「あぁ、俺も聞いた!あいつらがいなくなって、ここに来る商人達も喜んでいた。俺たちもあいつらには困っていたから助かったぜ。だが警備隊もなかなか手出し出来なかったってのに一体誰が壊滅させたんだろうな・・・」
道の往来で昨夜の事がすでに知れ渡り噂になっていた。ニコラス達は僕に恩を返したいといくら追い払っても後を着いてきて無碍にするのも悪いと思い食堂で自己紹介も兼ねて名前と男達の職業について聞くことにした。
左目に刀傷のある厳つい顔をした筋肉質の男がニコラス。職業は魔法剣士で元々は騎士団に所属していて100人将の経歴を持つ。以前からそりの合わなかった上司に愛想を尽かし自分から退団したという。
顔の細長い体がひょろっとした男がケビン。職業はシーフでニコラスと出会う前は貴族を狙ってスリを生業にしていたそうだ。一度ドジを踏んで捕まりそうになったところをニコラスに助けてもらったことがあり、その日以来ニコラスの事を兄貴と言って慕っている。
少し小太りのおっとりした顔の男がハスラー。職業は戦士で村の守人をしていた。ある日、村を魔物達に荒らされ村は壊滅し生き残ったハスラーは偶然その村に訪れていたニコラス達に助けられたが行く当てのないハスラーが仲間になりたいと懇願し今に至る。
3人の経歴を聞きこの街の拠点を考えている僕は仲間にすることを決めた。3人とも根っからの悪人には見えなかったというのも理由の1つである。
「僕は光輝。小さな村で父から幼い頃より剣術を少し囓っている。まだ成人していないから職業にはついていないけど少なくとも貴方達よりは強いと自負しているから裏切ったらどうなるか分かっているね。ま、僕への認識は少しばかり強くて金持ちの生意気なお坊ちゃまくらいでいいよ。」
自分で生意気って言うか?3人とも顔を見合わし少し呆れていた。
「僕はここに拠点を作って将来の足がかりを作りたいと思っている。貴方達にはその協力をして欲しいんですけど頼めるか?」
「光輝さん、どうしてここを拠点に?具体的には俺たちは何をしたらいいんだ?」
「僕は年下なんだから光輝でいい。拠点については今の所は秘密にするけど時期がきたら話す。あと貴方達にも、これからは敬語を使わないからそのつもりで頼む。」
最初っから使ってなかったよな?また3人はそれぞれの顔を見合わせる。
「そうだな。まずはお前達にはこの町の情報収集をしてもらいたい。誰が利権を持ちその繋がりなんかをな。あと非合法で行われている事なんかも調べてくれ。必要なら信頼できる仲間を集めてもいい。その資金は僕が用意する。あとお前達は今寝泊まりするところがないだろう?ティナさんには僕が話をしておくから、きらりの宿の僕が借りている部屋を使え。僕はこれから用事でこの街を何日か空けることになるけどティナに迷惑はかけるなよ!」
「光輝、この街のことは俺達に任せろ!」
「あとこれは活動資金だけど管理はティナに任せるから情報収集や仲間を集める資金に使うといい。」
そう言って僕は一旦宿へ戻りティナに事情を話し金貨でいっぱいになった布袋を渡すと快く了承してくれた。僕は遠くにいても街の状況が分かるように遠隔からの監視ができる魔方陣を街の上空に張り遠距離での会話が可能な通話石をティナさんに渡した。そして僕は父さんに動きがあったので引き続き追跡するためにこの街を一旦離れることにした。
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