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ティモール城塞②

「いらっしゃいませ」


宿へ帰ってきた僕は今後の計画を考え旅に必要なアイテムは随時購入することにした。一仕事を終えたので風呂に入ることにし夕食はここの料理を食べることにしたので予め頼んでおく。この宿は岩盤浴、サウナ、露天風呂と言った風呂が自慢で好評な宿だそうだ。僕の部屋からは庭園が見え静かでとても居心地が良い。


「やっぱり一日の疲れをとるには風呂が一番だよな~♪」


風呂を堪能した僕は部屋に運ばれた料理を口にする。先代の代から地産地消に心がけていて地元の人達とも凄く関係が良好ということもあり時々ただで食材を持って来てくれるそうだ。そのお礼に無料で露天風呂を貸し出す日もあるという。


「光輝さん、今日は本当にありがとうございました。こちらは私からのサービスです。私が作った物ですがお口に合えば幸いです。」


「ティナさんの手料理ですか。遠慮なく頂きます。」


それは筑前煮であった。


「ティナさん、この筑前煮すごく美味しいです。」


「フフフ、お口にあったようで良かったです。」


何でも死んだ母から教わった料理でそれを忠実に再現しているそうだ。何処か懐かしくまた食べたくなるようなそんな味。


「ティナさん、明日僕が若旦那に話をつけますので安心してください。」


「光輝様はまだお若いのに頼りになりますわ。でも危ないことはしないでくださいね。いつか私も貴方のような旦那様が・・・」


最後の方の言葉をうまく聞き取れなかったがティナさんは少し頬を赤く染めていた。少しの間、雑談をしたところでティナさんが席を立つ。


「それでは私はこれで失礼致します。」


「はい、ではおやすみなさい。」


座椅子で寛いでいたら何だか眠くなってきたので僕は部屋の明かりを消して寝ることにした。


午前2時。誰もが寝ている時間なのだが僕の魔力感知で宿の裏に潜む不審な人物を感知したのでリアリゼーションで拡大してみると、どうやら昼間の3人組の1人で体のひょろい奴だった。どうやらこの宿の別館に火を付けるつもりなのかもしれない。すぐに現場へ駆けつけひょろい男を取り押さえる。


「ま、待ってくれ。俺が何をしたっていうんだ!」


「じゃ、その後ろに隠している物はなんだ!」


「こ、これは・・・」


観念して男は後ろに隠している物を出すとそれは一通の手紙だった。中の手紙を読んでみるとそれは恋文のようだった。


「実はここに住み込みで働いている萌さんに一目惚れしてしまったんだ。だが若旦那様はここのティナさんをカリブ盗賊団に売り渡すために経営が傾いた時期を見計らって近づき借金をさせた。俺はニコラスの兄貴に恩があるから手伝ってはいるが本当は真っ当な職について萌さんと結婚したいと思っているんだ。それで今の仕事を終えたら足を洗うから結婚しようと前に出した手紙でプロポーズしたんだがその返事がこの手紙なんだ。」


「そんな事のためにこんな夜中に宿へ来たのか。」


内心呆れてしまったが敵地と言ってもいいこの場所に単独で来た度胸だけは認めた。


「そんな事ってことはないだろ。惚れた女の為なら俺は命だって投げ出せる覚悟もある。」


「・・・」


僕は黙って目の前の男をじっーと見つめる。


「お前、今までに人殺しの経験はあるか?」


「いや、俺たちは基本何でも運ぶ運び屋って奴だ。だから殺しはしない。今ティナさんを脅しているのだって俺たちの命が懸かっているから仕方なくだ。カリブ盗賊団って知ってるか?若旦那がその幹部であいつらに俺たちは手足のように働かされているんだ・・・」


ここで先日、僕が全滅させたカリブ盗賊団の名前が出てくるとはな。


「そのカリブ盗賊団って何人くらいの組織なんだ?」


「俺も詳しくは知らないが支部がいくつもあり各地に点在していてこの近くにも潜んでいるはずだ。そいつらと今、俺たちは取引をしている。」


あれで全部ではなかった。


「わかった。じゃ明日借金の件も含めてお前達の若旦那の屋敷へ話をつけに行くからその時までにお前が足を洗うって言うなら覚悟を信じてやる。その時は僕が何とかしてやるよ。」


「いいのか?」


「あぁ。ところで名前を聞いておこうか。僕は光輝だ。」


「俺はケビンだ。」


「よろしくな、ケビン。」


そこで僕達は分かれた。翌朝、屋敷へ1人で向かった。


「いるかー、約束通り来たぞ!」


「これは、これはお坊ちゃまではありませんか?今日はどのようなご用件で?」


「単刀直入に言う。ティナの件から手を引け。」


「手を引けと言われましても、こちらとしては元金と利子も含めて完済していただければいつでも手を引かせていただきますよ。」


「ケビンから話は聞いた。ティナをカリブ盗賊団に渡さないとお前達の命が危ないってな。」


「ご存じでしたか。お分かりいただけますか?何の力もない私達が強い圧力にどのように抗えるでしょうか?」


「それならそれに負けない力を手に入れればいいだろう?」


そこへ例の3人組が帰って来てケビンが話に割って入ってきた。


「若旦那様、俺はこの件から手を引きます。カリブ盗賊団が何だっていうんだ!恩のある兄貴のために今まで必死に我慢してきましたが今ではあいつらの言いなりで手足のように扱き使われるのはもうごめんだ!」


「私は貴方達を今まで誰よりも可愛がっていたのにとても残念です・・・組織を裏切った者達がどんな末路を辿るかお忘れですか?」


「けっ。俺たちを散々扱き使ってきたくせにどの口が言ってるんだ!」


ケビンが若旦那に対して啖呵を切っていた。


「あー話の途中で悪いがティナの件は手を引くのか引かないのかどっちだ?もしも引かないのなら、こいつらと同じ運命を辿ってもらうことになるけど恨むなよな。」


そう言って光輝はマジカルバックから盗賊団の死体を全部その場に出した。


「なんだ、このたくさんの死体は?一体何処から出てきたんだ?」


ケビン達が死体をじーっと観察すると一斉に叫んだ!


「カリブ盗賊団!!!」


声がぴったりとハモり相変わらず息の合った3人組であった。


「兄貴・・・」


盗賊団のお頭の近くまで来て若旦那が抱きかかえる。どうやらカリブ盗賊団のお頭が若旦那の兄だったようだ。


「誰が兄貴を殺した!」


若旦那が目を血走らせて叫んだ。


「僕はここに来る途中で害虫を駆除しただけだ。」


若旦那が僕をきっーと睨み詠唱を始めると細身だった若旦那が筋肉隆々とした体つきとなった。


「楽には死なせません。じわじわと苦しませてから殺さないと私の気が収まらないですからね。」


僕はすかさず若旦那の後ろに移動して首筋にちょんと手刀を当てるとバタリと倒れた。この後はこの町の警備隊にでも任せればいいかと念のため縄で縛り上げて柱にくくりつけておいた。こいつは他にも悪事を働いていそうだからな。こんな感じでティナの事は一件落着した。


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