王立魔導学院
後日ギルドマスターから小包が届き、その中には手紙と王立魔導学院宛ての推薦状、腕輪が入っていた。
-何の後ろ盾もない平民志願者は特殊な職業でもない限り書類選考で落とされてしまうから儂が書いた推薦状を一緒に添付しておいた。それと降霊術師は過去に何度も自分の意識を乗っ取られて度々問題を起こして社会問題にもなっているから万が一に備え減衰の腕輪を今日から肌身離さず装着しておくように!減衰の腕輪とは装着した者の魔力を70%低下させる変わりに精神異常耐性50%向上が備わっている。君はもともと精神異常耐性が高いようだけど念のためだ。あと降霊術の使えない君では実技試験の突破は難しいだろうからシェリルに力を貸すように頼んでおいた。だから身体能力の低い君でも問題なく通過することはできるだろう。ただ光の精霊の加護を受けた聖職者や聖騎士には精霊視があるから、くれぐれも降霊していないということはバレないように注意し調子に乗ってあまり派手な魔法は控えるように!学科試験については猛勉強をして己の力で解決するように。尚、王立魔導学院に合格できなかった場合は私のギルド職員見習いとして手足のように働いて貰うことになるからそのつもりで!健闘を祈る。-
ギルドマスター ガゼル
「お兄様、それは何ですか?」
陽葵が僕の後ろから顔を覗かせて聞いてきた。
「僕、王立魔導学院に行くことにしたんだ。小包の中にギルドマスターからの推薦状と腕輪が入っていた。それともし入学したら全寮制だから3年間は家には帰れないけど手紙を送るから次に会った時は元気な笑顔で迎えて欲しい。」
「お兄様と離ればなれになるなんて嫌!それにどうしてお兄様がギルドマスターから推薦状をもらえるのですか?」
「そ、それは・・・」
陽葵に降霊術士の職に就いたこと、過去に問題を起こした先輩達がいて危険視されていること、世間からの印象が悪く不遇職であることを話した。
「つまり、私だけのお兄様を束縛なさるおつもりなのですね。許せません!今から抗議に行って参ります。」
陽葵は本気で僕のために怒ってくれている。でも陽葵が本気で暴れたら王都が地図から消滅してしまうかもしれない。
「ありがとう。ただ僕も納得していることだから陽葵にも理解してほしい。僕の言っている意味分かるよね?」
「は、はい、お兄様・・・」
まだ腑に落ちない陽葵だが、これで少なくとも王都で暴れるような事はしないだろう。
「ではお兄様!私も王立魔導学院に入学します。これは決定事項ですから反対は、なさらないでください。」
陽葵は僕の予想をはるか斜め上の発言をした。
「陽葵・・・確かに就業前の優秀な人材確保のために特別枠があるけど、狭き門で倍率が150倍はあると聞いている。いくら陽葵でも難しいかもしれない。無理だと分かっている事で陽葵に挫折なんて味わわせたくはない。」
「受けてみなくてはわかりませんわ。」
「分かった。両親が賛成したら僕も陽葵のことを応援するよ。」
「分かってくれたのですね。さすが私のお兄様です。」
陽葵は僕を後ろから抱きつき、やや膨らみかけている胸の感触を僕の背中に伝えて女性であることを主張してきた。




