信託の儀
「父さん、母さん行ってきます。」
「あぁ、頑張ってこいよ。」
「気を付けてね」
僕は12歳となった。この世界では12歳となった者は教会で信託の儀を受ける事が義務化されており職業を授かる事で才能を幼い頃から知ることができ、適正によって戦士、魔術士、回復術士、鍛冶職人、商人等様々な職業の中から選択することとなる。レアな所では竜騎士、召喚術士、精霊術士などがあるが、それらは本当に稀で10年に1人輩出されるかどうかと言った具合だ。
「お兄様、本当に私が付いて行かなくてもよろしいのでしょうか?私は凄く心配です・・・」
「いや、さすがに妹に付き添われて教会に行くのは恥ずかしいし僕だって少しは成長したから大丈夫だよ。でも、ありがとな。」
「お兄様・・・」
「行ってきまーす。」
「いってらっしゃい」
家族が見守る中、僕は街にある教会へと向かった。
「次の方どうぞ」
教会へと足を運びそこには50人ほどの同期と思われる子供達がいた。皆、神託の儀を受けに来た者達だ。銀髪の長い女の子が神からの啓示を受けることのできる聖女からの神託を受ける。
氏名:シルフィー
年齢:12歳
種族:ハーフエルフ
性別:女
HP:358/358
MP:1250/1250
力:155
魔力:369
魔法適正:火:D 水:C 風:A 土:D 光:C 闇:F 無:F
体力:285
知力:365
敏捷性:283
器用さ:227
運:248
職業適正:精霊術士、弓術士、回復術士、賢者
「こ、これは!精霊術士と賢者のレア職業が2つもあるなんて驚きです!それで、どの職業を選択致しますか?普通は一生に1つの職業を極められるかどうかなのですがハーフエルフならば寿命がヒューマンよりも長いですしデュアルマスターになることも夢ではないでしょう!複数の職業適正をお持ちの方には必ずご忠告をしているのですが1つの職業を極めた後に転職をするようお薦めしています。極めないうちに転職されますといわゆる器用貧乏になってしまいますから困難な状況に陥った際、それを乗り越えられない場合が多いからです。」
「ご忠告ありがとうございます。私は精霊術士を選択します。」
「そうですか、分かりました。それではゆっくりと目を閉じてください。」
魔方陣の上で神託を受けると彼女の周りに光り輝く球体が踊るように飛び回っていた。
「次の方どうぞ」
氏名:アンドリュー
年齢:12歳
種族:ワーウルフ
性別:男
HP:728/728
MP:125/125
力:583
魔力:169
魔法適正:火:C 水:D 風:D 土:D 光:E 闇:D 無:F
体力:485
知力:162
敏捷性:363
器用さ:157
運:138
職業適正:戦士、盗賊
「俺は戦士にする。」
「貴方も将来有望ですね。応援していますよ。」
男の体が目映い光を放つ。神託を受ける前よりも明らかに筋肉が隆々としている。
「次の方どうぞ」
ようやく僕の順番が回ってきた。
氏名:成神光輝
年齢:12歳
種族:ヒューマン
性別:男
HP:105/105
MP:18/18
力:87
魔力:73
魔法適正:火:D 水:D 風:E 土:D 光:D 闇:E 無:C
体力:65
知力:88
敏捷性:67
器用さ:69
運:78
職業適正:降霊術師
「は~っ?何なんですか?あなたのこの能力の低さは・・・しかもよりにもよって降霊術師だなんて厄介な職業一択だなんて・・・ゴホン、失礼、他にも神託の儀を待っている方がいますので早く宣言してください。」
明らかにジト目で僕を見ている。
「降霊術師でお願いします。」
「言っときますが、あなたに選択できる職業は他にありません!」
確かにその通りなので言い返せない。それにしても僕にだけやたらと棘のある言葉ばかりで何か僕、聖女様に悪いことでもしたのだろうか?
「それでは目を閉じてなりたい職業を強く念じてください。」
僕の体が目映く光り輝きゆっくりと消失した。




