真名
「で、坊主あの黒衣を纏った男はちゃんと倒したんだろうな」
ゴランが真剣な眼差しで光輝に話しかける。
「えぇ、ギリギリでしたが・・・」
「それは良かった。それとシリウスとマリカの仇をとってくれてありがとな。俺等も助けてもらったし困った時はいつでも俺等が助けに行くからな。ところで坊主、名前は?」
「成神光輝です。将来冒険者になることが夢なんです。ところで先輩達の名前を教えていただけませんか?」
「俺はゴラン。で、こいつが・・・」
「シフォンよ、よろしくね、光輝君」
「こちらこそよろしくお願い致します。」
「嬢ちゃんもそうだが光輝も何だか大人びているな。貴族かお金持ちの息子か?」
「いえ、名も無い冒険者の息子ですよ。ハハハ」
適当にごまかしておいた。
「よっぽど、教育熱心な親御さんなんだな。ガハハ」
「光輝達は成人の儀はまだだよな?職業にも就いていないのに魔法が使えてあれだけの闘気をだせるんだから大したもんだ。なんで使えるようになったんだ?」
僕が返答に困っているとシフォンさんが助け船を出してくれた。
「ゴラン!この子達にはこの子達なりの事情があるのさ。察してやんな。」
「そうだな・・・ガハハ。悪い、今のは話しはなしだ。それにしても将来最速でS級ライセンスをとってしまうかもな。」
ゴランが大笑いをしていた。
「じゃ、そろそろ私らは行くね。光輝君、陽葵ちゃん元気でね。」
「光輝、陽葵またな!」
ゴラン達は町へと帰って行った。
「ところで光輝よ、妾にいつ体を貸してくれるのじゃ?」
「お、お兄様この女性とはどのようなご関係で?」
陽葵が僕を冷たい視線で睨んでいる。
「こ、この人は・・・」
「お主、妾の声が聞こえるのか?」
「もちろんですわ。それが何か?」
「驚いたのー。同じ世に我の器が2つも存在するとは・・・」
「それより名前はあるのか?僕は何て呼べばいい?」
「精霊に本来は名などない。勝手に人がつけたのじゃ。好きに呼ぶがよい。」
「じゃルシファーで」
「却下じゃ、妾はこう見えて女性なのだから相応しい名があるじゃろう」
格好いい名前だと思ったんだけどな。
「じゃチャッピーで」
「妾は犬か!もっとこうあるじゃろ?妾に相応しい名前が!」
好きに呼べと言ったのはそっちなのにと憤りを感じる光輝だった。
「仕方ない。お前の名はルナだ。ローマ神話に登場する月の女神なんだが名前負けするなよ!」
精霊は名前を聞いた途端、明らかに動揺していた。
「よりによって妾の真名を自分から発するとはの。手間が省けたわ。フフフ」
「精霊に名前はなかったんじゃなかったのか?」
「本来、精霊は真名を告げた者を主とし絶対服従せねばならぬから真名を知られてはならぬのじゃ。だがすでに妾は精霊ではないからそんな制約も受けぬのじゃ。妾の真名を告げることは反転すなわち絶対服従しますということになるのじゃ。ホーホッホッホッー」
「そんな制約があったなんて・・・」
ルナの思念体が光輝の魂と融合しバタリと気を失ってしまった。




