火炎龍
「お母様?」
下半身を失い切断部位から止めどなく流れる血液を見て陽葵は周りに魔物がいることを忘れ唯々呆然と立ち尽くしていた。
「ここは?」
「私達は一体・・・」
「クピッ?」
理性を取り戻したのか一部の知性ある種族が正気を取り戻した。
「陽葵、後ろ!」
辛うじて攻撃を躱す陽葵だったが放心状態だった。
「危ない!」
僕が声をかけるがこの距離だと間に合わない。尻餅をついている陽葵にサイクロプスが棍棒で襲いかかる。
「きゃー」
しかし、ずんぐりむっくりとしたドワーフの槌によってサイクロプスの一撃を跳ね返しエルフによる魔法攻撃で絶命する。
「僕を信じろ!母さんは必ず助けてみせるから!」
「えぇお兄様・・・」
「リジェネーションボックス」
僕は持続回復する結界で母さんの上半身を包んだ。これでひとまず僕達を攻撃することは出来ないし神代級の魔法でも無い限り壊す事はできない。
「こんな事が!?災害級とも言われるアルラウネをこんな子供が仰してしまうなどありえぬ・・・」
「お嬢ちゃん、大丈夫だったか?あとは儂達に任せてもらおうか!これでも儂達パーティーはA級ライセンスを持つクイーンナイツじゃからな!カッカカカッ♪」
「あのー助けていただいてありがとうございます。私は陽葵です。」
「自己紹介なら後にして。先にこいつらを片づけましょ!あとそこにいる火炎龍は仲間だから攻撃はしないで」
「クピッ♪」
自己紹介をしようとした陽葵だったが途中でエルフの女性に言葉を遮られる。
「はい、分かりました。あと私達もお手伝い致します。」
「確かに猫の手も借りたいが、まさかこんなに幼い子供を闘わせるわけには・・・」
「大丈夫ですわ。」
「フフフ、いいじゃない。この子達が年相応の実力だとはあんたも思ってないんでしょ。この子達の可能性に期待しましょ♪」
「そうだな、お嬢ちゃん頼む!」
「はい、任せて下さい。」
こうして冒険者2人と火炎龍を加えて再び開戦することとなった。
「ゴメス、ハンス私の糧となりなさい。」
「へっ?」
黒衣の男がローブを捲りゴメスとハンスを腹部にある口から吸い込み咀嚼する。
「最初に言っておくけど結界内にいるアルラウネは僕の母さんなので攻撃はしないで下さい。」
光輝が意識を取り戻した冒険者達に説明をする。
「分かった」
「えぇ、分かったわ」
「エンハンスソード」
エルフの女性が具現化した無数の風の剣が魔物達に突き刺さる。
「オラオラオラオラ」
ドワーフの男が槌を振り回し次々と葬っていく。冒険者2人と陽葵の活躍で周囲の魔物達を圧倒していた。
「クピピッ」
火炎龍が放った炎が魔物の体を包みやがて絶命した。
「クピッ♪」
火炎龍がなんだか嬉しそうだった。
「お前の相手はこの僕だ。」
「生意気な小僧だ!おとなしく私の糧となりなさい。」
光輝と黒衣の男が対峙する。
「ダークレイン」
黒衣の男によって漆黒の闇が降り注ぐ。
「ファイアボール」
光輝が炎の球で相殺する。
「バーニングフレイム」
光輝が黒衣の男にダメージが持続する範囲攻撃を放つ。
「デビルウィスパー」
ダメージを受けつつ黒衣の男は僕にステータス効果のバフをかける。
「プレモニーションデス」
死に神が光輝の耳元で死を囁く。即死効果はないが少しでも囁きに耳を傾け同意してしまうと魂を死の世界へと導く禁術だ。黒衣の男は数多の禁術魔法で攻撃し激しくぶつかる魔法による応酬が部屋に鳴り響いた。




