チュクチ村
僕達はミルの転移で隠れ住んでいた村長の背後に立っていた。
「で、でで、で・・・」
泡を吹いてバタリと村長が地面に倒れてしまった。それを見ていた村人達が一斉に僕達を取り囲んだ。
「怪しい奴、武器を捨てて両手を頭の上で組んで座れ!」
どの人も酷く痩せ細っている。村人達と敵対するつもりはないので僕達は指示に従った。
「ねぇ、貴方もしかしてミルちゃんかい?」
近くにいた40代くらいの女性がミルに話しかける。
「あっ!あのとき森の中で怪我をしてた人?」
「そうさね。あの時はホントに助かったよ。あのままだと山の動物たちの餌になっていたかもしれないからね。元気にしてたかい?あんた達!この子は私の知り合いだから安心おし。悪い子じゃないから。」
聞いていた村人達は警戒しながらも剣を鞘に収めた。村の人に拾ったペンダントが母さんのものかも知れないと伝えると快く持ってきてくれたので僕と陽葵はペンダント合わせるとぴったりとパズルのように嵌まり、時計の0時から3時の間が欠けていた。ここには父さんペンダントがはまり家族写真の完成だ。
「間違いありません、このペンダントは僕の母の物です。返して貰ってもいいですか?」
「あぁ構わない。本来の持ち主が分かったんだから当然だ。」
「ありがとうございます。これは拾って貰った心ばかりのお礼です。」
そう言って僕は大量の食料をマジックバックから取り出し山のように積み上げた。
「おぉ!神は我々をお見捨てにはならなかったようだ。」
先ほどまで気絶をしていた村長が突然息を吹き返し慌てて起き上がり両膝をついて僕に両手を合わせ拝み始めた。最近食料の確保もままならず地面に生えている草や僅かばかりの木の実で飢えを凌いでいたらしい。
「ねぇ、かあちゃんこれたべていいの?」
「この子ったら行儀悪いわよ。あとで村の人達と分け合うんだからそれまで我慢しなさい。」
「はーーーい・・・」
その様子を見ていた僕は村の子供達を叫んで集める。
「ちゅうもーーーく!子供達に僕からのとっておきのサプライズがあります。」
僕はたくさんの皿とコップをマジックバックから果物、野菜、卵、砂糖、小麦粉など食材となるものを取り出しその上に載せた。
「おぉぉぉーーー」
子供達は目をまん丸にして驚いていた。
「これ、くれるの?たべてもいいの?」
あちこちで子供達がお預けした犬のように涎を垂らしながら食材を見ていて今にも飛びかかりそうな雰囲気であった。
「もう少しだけ待って。よーーーく見ててね!種も仕掛けもございません。何が出てくるのかは出てからのお楽しみ♪」
僕は自分の身長くらいの大きな布を広げ子供達の正面で隠して少しだけ焦らして、さっと布を横へずらすと皿の上にはたくさんのケーキやお菓子にアップルパイ、コップにはジュースが入っていた。
「すごい!ぜんぜんわからなかったー。」
「僕はすぐに母さんを助けに行かなければならないけど帰りに立ち寄った時、また見せてあげるね。」
「ほんと?やったー♪おにいちゃん、ありがとう!」
こうして村人達は久々の食事を噛みしめながら涙し子供達にも笑顔が戻った。




