報告
この世界に来てから15年が経過していた。
「お兄様!今日こそは負けません!お願い、火の精霊さん私に力を貸して!」
すると炎の上級精霊が陽葵の体の中へと入り込み内側から炎が溢れだし全身を炎が包む。
陽葵は僕と訓練するうちに尊敬の念が強くなったのか口調が変わっていた。
「ファイアーフィスト!」
具現化して5mに肥大化した炎の拳を連続で放ったがそれをフリージングファングで相殺すると部屋が霧で包まれた。好機とみた陽葵は跳躍で光輝に詰め寄り体術を駆使して襲いかかるが、魔力感知だけでそれらを見切ってすべて躱す。フリージングファングとは氷系の初歩魔法だが魔力の増大で極大魔法まで威力が上昇していた。陽葵は武器よりも魔法、魔法よりも体術に才能があり闘気と魔力を融合しさらに精霊の力を借りて身体能力を底上げしている。ちなみにこの世界では触れることのできない物体も魔法を纏うと触れることができる。陽葵が地面を蹴ることができたのはそのためだ。
「はぁーーー!」
陽葵は素早く交互に空気を蹴ることによって自在に空間を移動できるため今度は上下左右から光輝を襲う。スピードとパワーだけなら陽葵が上だ。徐々に光輝が後ろへと追いやられ壁に背をつけると渾身の正拳突きを光輝に放つ。それを身体強化された拳で受け止めるがパワーで押し返された。
「パリーン」
周囲の被害を考え僕が張った結界が割れてしまった。
「ここまでだ。それにしても強くなったなー。接近戦は僕も陽葵に敵わないな。」
「またまた、ご謙遜を!お兄様は体術よりも魔法の方が得意ではありませんか!わざわざ陽葵の得意な土俵で戦ったのですから当然ですわ。」
「確かに僕が神代魔法や精霊王の力を使えば勝てるけど、それだとこの空間を破壊してしまうかもしれないから結界を張っていてもこの空間では初歩魔法以上は使えない。だからこの空間ではあれが僕の本気だから自信を持っていいぞ!」
それにしても神代魔法も防ぐ僕の結界を破壊するんだから、あまり陽葵を怒らせない方がいいかもな・・・そんなことを思いながら陽葵の方をちらっと見る。
「何を笑っていますの?お兄様?」
「べ、別に・・・」
「とっても、怪しいですわ!怒りませんから正直におっしゃってください!」
「ほ、本当に何もないから!ただ陽葵が我が妹ながら可愛いなって思っただけだよ」
「ま、お兄様ったら!」
陽葵がもじもじとしているが、どうやら機嫌が直ったようだ。
「マスター、お母様のいる場所の手がかりを見つけました。」
アリアからの報告があった。
「分かった。今すぐここから出る。とその前に。」
僕は魔導図書館の奥にある赤い扉の前に立っていた。この扉の向こう側には魔神を封印した魔導書があるとアリアが言っていたのを思いだし万が一の事を考え空間に剣を斬りつける。
「次元斬!」
僕はこことの空間を切り離し部屋を3重の結界で覆い隔絶した。見た目には分からないが万が一結界が破壊されても今度は次元を超えてこの部屋に辿り着かなくてはならない。さらにこの部屋から出ても肉体と魂を魂魄融合しなくては生き返ることができない。これでひとまずは安心だろう。
「よし!帰るか♪」
今日も良い仕事をしたなと満足な光輝であった。




