新たな住処
僕達はティモール城塞を目指し道中を歩いていた。
「僕も母さんを探しに行こうと思うけど陽葵も9歳になったんだから1人でお留守番できるな。」
「いや、私もお兄ちゃんとママを探しに行くもん!」
陽葵が駄々をこねて道のど真ん中で座り込んでしまった。危険な旅になるから陽葵にはできればティモール城塞にいて欲しいんだけど確かに1人にするのも忍びない気がしないでもない。さて、どうしようか。
「あっ!そうだ。陽葵、今から行く場所は絶対に誰にも言うなよ!いいか、分かったな。」
「うん、分かった。それでお兄ちゃん今から何処行くの?」
「僕達はここから動かない。あっちから来るから!」
「へっ?」
陽葵が小首を傾げた。僕は思念伝達でアリアにインビシブルをここへ移動するように伝えた。すると15分後、上空から凄まじい風が吹いたかと思うとそれは静かに地面に降り立った。
「周囲には誰もいないな。」
人がいないか確認をしてから進み、後ろから陽葵が光輝の袖を掴みながら同じ場所をゆっくりと歩く。
「あれ?あれーーーーっ!!!」
陽葵が酷く驚いた。無理もない。機内に入るとたくさんの人がいて突然周りの風景が変わったのだ。まるで空間の裂け目から別世界に来てしまったという気分だろう。
「インビシブルへようこそ!」
中の人達が温かく陽葵を迎えた。
「よっ、後ろにいる可愛い子は光輝の彼女かい?隅に置けないねー」
「えっ!あのーそのー・・・」
陽葵が動揺している。
「いえ、違いますよ。僕の妹です。今日からここで一緒に暮らす事になりました。陽葵挨拶して!」
「えっ?聞いてないよ、お兄ちゃん・・・あのー初めまして成神陽葵、9歳です。特技は料理です。小さい頃からママの代わりに作っていました。みなさん、よろしくお願いします。」
「おう、よろしくな。ここの主は光輝だから2番目に偉いって事になるのか!困った事があったら遠慮せず言ってくんな!陽葵ちゃん。」
「光輝様、お茶とお菓子の準備ができています。陽葵様とご一緒にどうぞ。こちらです。」
「ありがとう、アリア。陽葵行こうか!」
「うん・・・」
僕達はソファーで寛ぎ、お茶会を楽しむ。
「アリアさんってホムンクルスなんですか?見た目には人間にしか見えないよ。実は私ね、昔からアリアさんみたいなお姉ちゃんが前から欲しかったんだー!良かったらアリアお姉ちゃんって呼んでもいいかな?」
「私の事はどのようにお呼びしてもらっても構いませんが私は陽葵様とお呼びさせていただきます。」
「えー。妹に様付けするお姉ちゃんは何処にもいないよ!私の事は陽葵って呼び捨てにしていいから!」
「ですが・・・」
「アリア、陽葵もこう言っていることだし呼び捨てで呼んでもらえないか?あと僕に様は付けなくていいから!なんだか距離を感じるし嫌なんだ。」
「では陽葵と呼ばせていただきます。光輝様の事は、これからはマスターとお呼びさせていただきます。」
「ありがとう!アリアお姉ちゃん♪」
こうして僕達はつかの間の平和を楽しんで過ごした。




