初めての錬成
光輝はホーリースピアでサンダードラゴンを多段突きするがどれも弾かれてしまう。一般的にドラゴンの弱点である逆鱗でさえも単純にサンダードラゴンの纏う鉱石が非常に固くダメージが通らない。そして魔法防御が付与されているホーリースピアでさえも耐久力が落ちて刃こぼれし、ついには剣先で折れてしまった。
「光輝、ダメージが通らないなら僕には勝ち目がないよね?降参してもいいよ。」
まだストックは十分にあるのだが、どれもドラゴンにダメージを与えられるような切れ味のある武器は持ち合わせていない。
「クー、全力でお願い!」
「クーーー」
サンダードラゴンの咆哮で大気が震え空気中の分子の摩擦により電気を発生させ自らを帯電させた。
「このままだと感電して戦闘不能になるかもしれない。」
今も尚、咆哮が続いているため大気中に静電気がバチバチと迸る。
ようやくサンダードラゴンは帯電が終わったようで僕を睨むと同時に帯電した電気を一気に放つ。
僕はマジカルバックから鉄の槍を4本取り出し両手でランダムに勢いよく投げると僕に向かってきている雷撃が次々と角度を変えて槍へと向かっていく。4本の槍は木っ端微塵となり残りの雷撃が僕を襲うが僕が感電することはなかった。雷撃を放つ直前に念のため全身をラバースーツで覆っていたからだ。初めての錬成だったがどうやら成功したようだ。帯電していない今がチャンスなのだが属性攻撃はドラゴンの属性を変化させてしまう。光輝が錬成を始めると両手が目映く光りやがてオリハルコン製の一振りの剣が現れた。
「いくぞー!」
光輝は勢いよくドラゴンに向かって走り出す。ドラゴンは咆哮で威嚇しファイアーブレスを放つ。
光輝がドラゴンの左下腹部を薙ぎ払うとまるで豆腐を切るかのようにドラゴンの皮膚があっさりと切れ噴水のごとく流血する。
「クーーー!!!」
致命傷を負ったドラゴンは動きが鈍り、丸太のような尾を振り回すがそれを素早く躱し剣舞する。
やがて大量の出血により完全に動きが止まったドラゴンは光輝を見つめ早く止めをさせと言わんばかりだった。
「次はシルマだからな!決着をつけるぞ。」
だが返事がない。視線をシルマに逸らすと全身が傷だらけで大量出血している。慌ててシルマの方へと駆け寄る。
「光輝、どうやら私の負けのようだね。やっぱり光輝には敵わないや。私の変わりにアルス・マグナを完成させて・・・」
光輝の腕の中で眠るようにシルマが息を引き取りドラゴンも同時に息絶えた。




