後継者争い
「よし、決戦の場はここにしよう。」
そこは初めてシルマと出会った場所であるマグマ湖畔であった。
「お互い死力を尽くして戦うんだから恨みっこなしだよ。」
「あぁ、分かってる・・・そろそろ始めるか。」
「私はいつでもいいよ」
こうしてお互い距離をとり対峙する。
「シルマ、いつでもいいぞ!」
「光輝、余裕でいられるのも今のうちだけだよ。じゃ行くよ!」
先制攻撃はシルマであった。錬金術師のシルマの後ろには100体は超える魔物が後ろに控えている。控えていたキラータイガーとジャイアントエイプが計30体、僕に襲いかかってきた。キラータイガーは俊敏な動きと鋭い牙でジャイアントエイプは辺りに転がっている溶岩を投げて攻撃してくるが僕は縦横無尽に襲いかかるそれらの攻撃をなんなく翻し次々と倒していく。
「さすがね・・・貴方達も加勢に行って!」
空からも無数のファイアーバードが襲いかかる。陸と空からの攻撃だ。そんな中シルマがニグレドの詠唱を始めた。すると突然、光輝の足下がドロドロの液状となりやがて直径2m程の泥だまりとなってしまった。シルマは次々と地面を泥に変化させたため足場が次々となくなっていく。バランスを崩した光輝の後ろからマグマが襲いかかる。しかも気配はあるのに姿が見えない。いつのまにかマグマ湖に近づいた僕に今度は無数のマグマフィッシュが襲いかかったのだ。
「何か来る!」
僕は危険察知でその場に危険があることを事前に気づき跳躍で離れると突然、地面が大きく揺れ出し崩落すると地の底から1匹の巨大なアースドラゴンが現れた。
「この子はクー。僕の奥の手だったんだけど光輝には最初から全力でかからないと後悔しそうだからね。他の子達は一旦後ろに下がって!」
「フフフ、小僧!せいぜい我のことを楽しませる事だな。」
アースドラゴンは余裕の笑みを浮かべていた。それもその筈で目の前のアースドラゴンからは凄まじい魔力と覇気が周辺を包み立っていることさえままならない状態で今にも意識が飛びそうなくらいだ。あらゆる種族の頂点に立つ龍にとって人など虫けら同然なのだろう。それと同時にシルマがこのドラゴンをどうやって使役したのか不思議に思ったが今は目の前の強敵にだけ集中する。光輝は剣でアースドラゴンに斬りかかるが、ことごとく弾かれてしまう。
「まずは小手調べだ。見事耐えて見せよ!」
咆哮と同時に龍の体を覆っている鉱石が次々と光輝を襲う。魔力によって制御しているのか鉱石がありえない角度からも勢いよく飛んでくる。今はシールドを展開することでなんとかダメージを受けずにいるがそれもいつまで持つのか分からない。しかもこちらが攻撃に転じると鉱石がドラゴンの体を覆い全ての攻撃が弾かれてしまう。何度も攻撃を躱すがシールドにダメージが蓄積していき、やがてガラスが割れるように破壊されてしまった。
「もはや逃げ場はないぞ、小僧!」
宙で待機していた鉱石も一斉に光輝を覆うように襲いかかる。だが光輝の体に触れるか触れない距離に近づいた鉱石が次々と虚空へ消えていった。
「我の攻撃をそのような手段で防ぐとは・・・面白いぞ小僧!」
光輝はインフィニティボックスを展開し鉱石の石つぶてを防いだ。
「貴重な素材をありがとな!」
アースドラゴンが放った鉱石は、アダマンタイト、ミスリル、金剛石、魔水晶といった貴重な鉱物ばかりで中には神話級のオリハルコンなんかも混ざっていた。錬金術をはじめとして剣や鎧の素材にもなるし何より保管場所には困らない。
「光輝はちゃっかりしてるな(笑)」
シルマも思わず突っ込んでしまった。隙をついた光輝が今度はミスリルソードでアースドラゴンに斬りかかる。だが剣は何度も斬りつけているうちに消耗しついには折れてしまった。
「我としたことがダメージがないとは言え何度も攻撃を受けてしまったな。だが次からは我が攻撃を受けることは絶対にない。」
アースドラゴンの宣言通り龍体に攻撃を加えることが出来ないでいた。体を覆う鉱石がなくなり単純に防御力が低下した変わりに素早さが上昇したからだ。
「これなら、どうだ!」
光輝は広大なフィールドを覆い尽くさんばかりのサンダーストームを放つとアースドラゴンが全身に受け帯電し動けずにいた。動けなくなり好機と考えた光輝はマジカルバックから取り出したホーリースピアで多段突きを放つ。だがドラゴンが帯電した電気を一気に放つと光輝の体内に雷撃が迸る。アースドラゴンは動けないのではなくあえて《・ ・ ・》《・・・》動かなかったのだ。アースドラゴンはサンダードラゴンへと属性を変え光輝の前に立ちはだかった。




