錬金術師ラオス
かなりご無沙汰してました。評価も上がらずテンション駄々下がりで執筆も思うように進みませんでした。久しぶりに帰ってくると評価が少し上がっていて見てくれている人もいるんだと思い執筆を致しました。不定期ですが連載を再開したいと思いますのでよろしくお願い致します。
僕は意識を失い神殿の最奥に転移していた。その部屋は司令室とでも言うべきだろうか。無数の画面が所狭しとあり、それはどうやら本の中の部屋を管理しているようだった。
「ようやく目覚めたようだな。そこに座るが良い。」
目の前にはホログラムのように向こうが透けて見える老人がいてゆっくりと語り出した。
「まずは、試練を乗り越えたことを褒めておこう。約束通り儂の集めたあらゆる遺産はお主のものじゃ。」
「ありがとうございます。」
僕は椅子を立ち上がり深々とお辞儀をした。
「しかし、本来全ての錬金術を習得した者だけがここに辿りつけるはずだったのだがお主はニグレドを欠いた状態で到達してしまった。それは驚愕すべきことで観察していた儂も認める十分な素質と資格もあるのじゃが問題は儂の全てを継承できないことなのじゃ。」
「それはどうしてなのですか?」
試練を乗り越えれば全ての遺産を貰えると思っていたのだが、どうやら違うらしい。
「もちろん肉体に戻った際に本の中にある全ての物を好きにして構わない。しかし本来全ての錬金術を極めた者に儂が錬金術の極意とも言えるアルス・マグナに昇華させるはずじゃったのじゃ。お主の目的であるエリクサーを生成するにはどうしてもアルス・マグナを習得せねばならん。しかもニグレド、アルベド、ルベドは各分野に長けた唯一の上位精霊の力を借りているため1人しか習得できぬのじゃ。だから別の者が習得するには習得した者の肉体が魂を離れぬ限り他の者は習得できぬ。今はシルマと言う娘がニグレドを習得しているからお主は習得できぬということだな。かといって故意に娘を殺すわけにもいかぬしのー。困ったのー。」
ラオスさんは本当に困っているようで顔をしかめていた。
「分かりました。ラオスさんの遺産を貰えただけでも助かりました。エリクサーを生成できないのは残念ですが他にもきっと方法があるはずですので探してみます。ありがとうございました。それではシルマも待っているだろうし僕はこれで失礼したいと思います。」
僕は踵を返し転移魔方陣に向かおうとしたがラオスさんに呼び止められた。
「まー待て。方法がないわけではない・・・。しかし娘には一度死んで貰わねばならぬ・・・」
「ですから僕はシルマを殺してまでアルス・マグナを習得したいわけでは・・・」
ラオスさんは僕の話を遮り話を続けた。
「方法と言うのはお主と娘が戦い勝利した者がアルス・マグナを習得し、どちらかの一度肉体を離れた魂を再び呼び戻すというものじゃ。」
「えっ?シルマと戦う?それに死者蘇生は禁忌じゃ・・・」
死者を蘇生させることは多くの生物を殺す代償が必要であり、しかも絶対に成功するという保証がなく科学や錬金術、魔術等あらゆる分野で禁忌とされるものだった。
「それとは少し違う。幸いお主と娘はまだ一度も肉体に戻っておらぬ。自身の意思で肉体に戻れば錬金術を習得した状態で肉体に戻れるが、そうではない場合は再び石版へと戻る。疑似魂魄として肉体に戻せば元通りとはいかぬが再び変わらぬ日々を送れることだろう。」
「それって最初に言ってた試練に失敗しても疑似魂魄で再び肉体に戻してくれると言ってた話ですか?」
「そうじゃ!」
「それなら、ラオスさんが戻してくれた方が確実だと思うのですが・・・」
「それもそうはいかぬのじゃ。儂がアルス・マグナを昇華させると儂の魂も昇華してしまうからじゃ。類い希な素質をもつお主ならきっと使いこなせるだろうて。なーに儂のことは心配せぬとも良い。むしろ儂のすべてを託せる者が現れて嬉しいくらいじゃ。お主と娘のどちらかが全ての錬金術を習得した時またここに来るが良い。娘にも必ず伝えるのじゃぞ。」
「分かりました。一度戻りシルマと相談してみます。」
「うむ、そうするが良い。」
僕は転送魔方陣でシルマの元へと向かった。
「光輝、無事だったんだね。心配したんだよ・・・それで宝は貰えたの?」
「あぁ・・・たった今ラオスさんに会ってきた。」
「会ってきたって!ラオスさんってもう死んでるよね?あの声は録音かなんかじゃなかったの?」
「どうやら魂のみでこの本の中を生きているみたい。それでシルマに話があるんだけど・・・」
先ほどのラプテスさんとの話の要点を纏めてシルマに話した。
「なるほどねー。試練には失敗するけど肉体には戻れるんだね・・・わかった!僕も光輝にはアルス・マグナを覚えて欲しいと思っているけど私も錬金術師として譲れない気持ちがあるの・・・だから正々堂々戦って勝った方がアルス・マグナを習得するってことでいいかな?」
「あぁ。」
「あと1つお願いがあるの。」
言いづらいのかシルマがもじもじしている。
「僕にできることなら何でもするよ。」
僕はシルマが言い出しやすいように後押しをした。
「私がもしも負けてしまったときは光輝の腕の中で死なせて。」
「わかった・・・シルマの魂が消えるまでずっと僕の腕の中だ。」
「交渉成立ね♪」
シルマは上機嫌でそう言った。




