試練③
僕達は3つめの試練を受けるため魔方陣の前に立っている。
「いよいよだな。シルマ、試練のガーディアンについて知っている情報を教えて欲しい。」
「今度のガーディアンは液体に姿を変化させることができるんだ。液体の時は属性変化準備中で攻撃はしてこないんだけど火、水、風、土属性のどれかに変化していて、この時に魔法で攻撃しちゃうとすべて吸収され体力も魔力も回復されちゃうんだ。実体のあるときは魔法は効くけど属性変化で弱点が変わっているから見極めが大事!」
「シルマ、ありがとう。参考になった。準備はいいか?行くぞ!」
僕とシルマ、そして精鋭100体の魔物を率いて一緒に魔方陣の上に立つと目映い光を放ちガーディアンのいる部屋へと転送された。ちなみに魔方陣で転送出来なかった魔物達も後から援軍として来る手はずとなっているが続けて転送することはできず10分後となるらしい。
「ここが第三の試練の部屋か!」
地面となるものは白雲で眼前に神殿のような建物があり、その前を遮るように甲冑を纏った1人の騎士が立ちはだかっていた。
「よくぞ、ここまで辿り付けたと褒めてやろう。しかし私を倒さぬ限りこの先へは進めぬぞ。」
声からすると女性のようだった。しかもこの声何処かで聞き覚えがあるような・・・
「光輝、まずは僕の魔物に攻撃させるからあいつの戦闘を見ていてくれ。」
「わかった。」
「第一部隊突撃!」
シルマの攻撃命令で魔物達は一斉に騎士に突進していった。この部隊は四足歩行の獣を主軸としている。俊敏な動きで相手を攪乱し牙や爪で一斉に四方八方から襲いかかる。しかし騎士の持つ槍が一閃すると1/3が絶命する。
「続いて第二、第三部隊突撃!」
第二部隊はコボルト、第三部隊はファイアーバードの魔物であった。陸と空からの攻撃ならいけるんじゃないかと思っていたが、騎士はまるで羽虫を払うように次々とファイアーバードを倒していく。
「ぐぬぬぬ」
シルマが次々と倒れている魔物達を見て憤りを感じていた。
「残りの部隊は私に続けーーー。光輝止めは任せたよ!」
「わかった・・・」
1体また1体と次々と魔物達は倒れていくがシルマは四足歩行の王ベヒモスの背に跨がり周囲を鼓舞した。
「皆、一旦離れろ!」
前もっての作戦だったのか統制のとれた動きで騎士の外周を大きく二重に囲んだ。
「放てーーー!」
四属性の魔法攻撃が一斉に放たれた。多くが躱されてしまったが数発が騎士の左腕や右肩に着弾した。火属性の攻撃はダメージを受け逆に水属性の攻撃で回復しているようだった。その他の属性はどうやら無効化されている。
「続いて後続部隊は火属性魔法で攻撃せよ!他の部隊は火属性部隊を死守せよ!」
僕もこれに乗じてファイアーイグニッションで攻撃をする。騎士は弱点属性の一斉攻撃の中でも僕の放ったファイアーイグニッションだけは受けたくないらしく他の攻撃は体に受けても耐え、唯々ファイアーイグニッションを躱すことだけに集中する。僕は続いてもう2発、騎士の左右にファイアーイグニッションをお見舞いする。先の1つを躱されても確実に着弾するであろうタイミングでだ。すると騎士の体が突然溶け出し液体となってしまった。ただ液体と言っても透明の膜のようなものが液体を包み込み魔物で例えるならスライムのような姿だ。この姿の時はどんな魔法も吸収されるってシルマが言ってたな。
「撃ち方やめーーーぃ」
シルマが号令を発したことで魔法による弾幕の一斉攻撃は止まった。スライム状になってから魔法が着弾したものがいくつかあったから、おそらく回復されている。幸いファイアーイグニッションは一発のみの着弾であったがすべて着弾していたら全回復してしまっただろう。2分後、再び騎士の姿へと変化する。僕の魔法は威力が高いから回復量も多く弱点属性を見つけるのは魔物達に任せた。再び魔物達による四属性の魔法による一斉攻撃が始まり今度はどうやら水属性が弱点のようだ。僕はウォーターカッターを連射したので今度もスライムに変化するだろうと思ったが変化せずその身に攻撃を受けていた。着実にダメージを重ねている事が騎士の膝が折れかけている状態から解った。
「あともう少しで我らの勝利だ!」
騎士は再びスライムへと変化したが2分後元の姿へと変化する。どうやら液体変化には時間制限があるようだ。こちらの魔物は半数を割ってしまったが、もうすぐ増援部隊が来て戦力が補充される。僕もシルマもまだ余力を残しているし勝利が目前だ。次の弱点属性はどうやら土属性だ。
「シルマ、試したい魔法がある!一旦大きく離れてくれ。」
「わかった。皆、壁際に大きく離れろ!」
僕は高圧縮した大豆大のストーンバレットを騎士めがけて連射し、すかさず騎士を結界に捕らえて束縛する。結界内で何度も高圧縮したストーンバレットが騎士を襲う。何度も結界に弾かれたストーンバレットは次第に削れ土埃となり騎士の姿が見えなくなっていった。
「最後の仕上げだ!インフェルノ!」
インフェルノは僕がここで一ヶ月訓練した時に習得した火と風を合成して作成したオリジナル魔法だ。対象物を高温で焼き尽くすまで燃えさかる地獄の炎。しばらくして増援部隊が駆けつけていたが炎が消えないのでそのまま待つことにした。
「貴方だけは敵にしたくない・・・」
シルマがぼそっと小さく呟いた。30分が経過し炎の勢いがかなり弱まっていた。誰なのか気になる僕は結界の中にいる騎士に呼びかける。
「おい、決着はついただろ。降参するならここから出してやるぞ。」
だが中からの返答が返ってこない。炎の勢いもかなり弱まり結界内の土煙が晴れる頃には1時間が経過していた。すると結界内には騎士の姿はなく炎も完全に消えたところで結界を解いた。
「殺すつもりはなかったんだけどな・・・」
「やるか、やられるかの戦いだったし仕方ない。」
シルマが僕の頭をポンポンと叩き励ましてくれた。
「そうだな、シルマありがとう。」
「えへへっ」
「よしっ、先へ進むぞ!」
「うん。」
僕は魔方陣より召喚された石版に手を触れルベドを習得してから眼前にある神殿へと足を運んだ。姿の見えない追跡者がいるとも知らずに・・・




