試練①
僕が本に触れると中に吸い込まれ別空間に飛ばされてしまった。どうやら転移したようで周りを見渡すとそこは図書館だと見紛うくらいに本棚がずらりと並んでいた。
「錬金術師を目指す者よ!儂は世界一の錬金術師、ラオスである。ここには儂が生成したガーディアン達が侵入者から研究所を守っている。ちなみに今のお主は肉体から魂が離れた状態で物体に触れることはできないから物理的な攻撃はできないし受けることもない。だが魔法攻撃は可能でダメージも受けるから気をつけるのだな。な~にここで魂が消滅しても儂が集めて疑似魂魄を現世にあるお主の体に定着させてやるから安心せい!ま、消滅した魂を完全に元通りというわけにはいかぬがな。ここには儂の生涯かけて集めたコレクションがたくさんあるから見事、試練を乗り越えることが出来たならすべてを持って行くが良い。」
「分かりました。お願いします。」
「ふぉふぉふぉ、では見事試練を乗り越えてみせよ!」
説明が終わるとラオスさんは消えてしまった。ここには無数の転送魔方陣があったので1つずつ転送していくことにした。僕が最初に転送された場所は菜園だった。そこにはたくさんの人型ゴーレム達が働いていて1体のゴーレムが僕に近づいてきた。
「ピピピピッ。」
攻撃されることなく僕の事を無視して仕事に戻ったので辺りをくまなく探したが特に変わった様子もなかったので一旦戻り別の転送魔方陣で移動する。次は広大な薬草園が広がっていた。先ほどの菜園よりもゴーレムの数が多かった。僕に気付いたゴーレムが1体近づいてくる。先ほどと同じようにラオスさんの試練を受けに来たことを告げると後ろを向いて仕事へと戻っていった。ここもくまなく探したのだが気になる場所はなく戻って別の魔方陣で移動する。すると今度は広大な森が広がっていた。そこには様々な魔獣が生息しているようで広範囲に魔力探知を展開するとかなりの数の魔獣がいることが分かった。明鏡止水で探索していたのだが目の前に1匹の巨大な狼が対峙していた。
「グルルルルッ」
フェンリルが爪で襲いかかってきたが僕の体をすり抜けたため今度は自らの体に風を纏って襲いかかってきた。躱しきれず僕の左腕にフェンリルの纏った風が触れるとダメージを負っていた。
「そういえば魔法での攻撃は受けるって言ってたな。」
サンダーボルトで感電させ僕は先を急ぐことにした。地上はくまなく探したのだが特に怪しい場所は見つからなかった。ここも外れかと思いその場を離れようとした時、突然湖の中心に巨大な渦ができて中から1匹の海竜が現れ有無も言わさずに水魔法で襲いかかってきた。僕はそれを躱しサンダーボルトで攻撃をする。しばらく交戦していると湖底に魔方陣があることに気付いた。だがそこに近づくには海竜を何とかしなければならない。サンダーレインを湖に放って感電した海竜を置き去りにし自分の周囲にバリアを張って湖底の魔方陣を目指した。とにかく今は時間が惜しい。転移した先は周囲に何もない空間で20mはある巨大ゴーレム像が1体あったのだが何か得体の知れない何かがあると肌で感じていた。部屋の奥には小さな石版がありそこに手を触れると突然何処からともなく声が聞こえてきた。
「力を求めし者よ。見事儂の試練を乗り越えて見せよ!」
「ピッピピピ」
先ほどの巨大ゴーレム像が青白く輝きだし突然動き出した。光輝に向かって突進し右腕を薙ぎ払ってきたが、すかさず横に躱しファイアーボールをゴーレムの頭に放ったのだが自分の放ったファイアーボールが勢いと威力を増して光輝を襲ってきた。
「ピッピピ」
巨大ゴーレムが突き出した右腕の人差し指から閃光が放たれたと思った瞬間、躱した先の壁を反射し再度襲いかかってきたのでそれも躱す。
「あれを喰らったら僕もただではすまないだろうな・・・」
光輝は背筋に冷たい何かが流れたのを感じた。
「ピッピッピピ」
閃光を躱し続けているとゴーレムは1つまた1つと指を増やし今では合計10本から繰り出される閃光となっていた。その上閃光は壁を反射してくるため防御に徹するしかなく防戦一方となっていた。僕は属性を変え魔法で応戦していたのだが、ゴーレムの体はあらゆる魔法属性を反射しそのうえ倍加して襲いかかってきた。僕はプロテクションを解き鏡をイメージして体の周囲を魔法で覆う。
「リフレクション」
僕は現存しない魔法を並列思考と高速思考で演算しリフレクションというオリジナル魔法を構築しファイアーボールをゴーレムに放つ。ヒントはゴーレムの反射で得た。ファイアーボールはゴーレムによって反射されたがその反射されたファイアーボールをリフレクションで反射すると反射されることなくゴーレムに着弾した。だがその逆にゴーレムの放つ閃光を一度は僕が反射してもゴーレムによって反射された閃光を再び反射することはできなかった。どうやらリフレクションは一度反射すると機能しなくなるようだ。再度構築するにしても反射してくるコンマ数秒に再構築するのは今の僕にはできずゴーレムも同じようだ。
「ダメージがあるならいける!」
僕は次々と魔法を放ち反射することでゴーレムのダメージを蓄積していった。僕もいくつか被弾したが、ついにゴーレムが機能を停止すると透き通る球体と魔方陣が現れた。球体に触れるとたくさんの錬金術の知識が頭の中に流れ込みアルベドを覚えた。アルベドとはあらゆる液体や気体を固体に変化させることができる錬金術のようだ。流れ込んできた知識から液体から固体にするにはニグレド、気体から固体にするにはルベドを習得する必要があることが解った。アルベドを習得した光輝は魔方陣の上に立ち次の試練に向かった。




