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「おい、聞いたか!今度はイロワーズ海賊団が一夜にして壊滅だってよ!そこで助けられた人達が声を揃えて言うんだ!勇者様の再来なんじゃないかってよ。」
「でも、それだと魔王も復活したって事になるぜ?」
「おれも信じられないが成りは小さいが兎に角めっぽう強くて魔法まで使えるって言うんだ!それに顔は隠していたから分からなかったらしいけど人間業じゃないから、もしかしたら魔族なんじゃないかって噂もある。助けられた人の中に俺の女房の知り合いの生き別れになった兄貴がいて直接聞いたって言うんだから本当かもしれないな。」
僕が街を歩いているとそんな噂話が聞こえてきた。口元は隠していたけど変装って言える程隠していなかったから僕だとばれないように次に行動する時までに何か考えなくちゃいけないかなと光輝は思った。
「そう言えばここを出る前にミルに挨拶しなくちゃいけないかな。」
「光輝、私の事呼んだ~?」
「で、出たーーーっ!!!」
そんな風に考えているとミルが僕の後ろから声をかける。あの時もそうだったけどミルは突然声をかけてくる。しかもミルの事を考えた時に・・・
「もー、人をお化けみたいに言わないでくれるかな。」
頬を膨らませてミルが僕を睨んでいる。
「悪かった。お詫びに何か好きな物を買ってやるから機嫌を直せ。」
「もーしょうがないな~。心が海よりも広~いミルさんだから許すんだからね。じゃ何を奢ってもらおうかな♪」
どうやらミルの機嫌は直ったようで僕の腕を組んで目が合うとニコッと笑いながら僕達は街の露店を見物していた。すると気になる露天を見つけたので僕は店主に声をかける。
「先日助けていただきましたラプラスです。ところで何かお探しですか?安くしますよ。」
「だ、誰かと勘違いされているのでは?僕はあなたとは初対面です・・・」
僕が正体を隠そうとしていることに気付きそれ以上の詮索をされることはなかった。造船技師のラプラスさんだが普段は錬金術で作成した生活雑貨を売って生計を立てているようだ。
「ミル、何か気に入った物はあるか?何でも買ってやるって約束だからな。」
ミルは気に入った物を見つけては、これ、似合う?なんて声をかけてくる。それがなんだか可愛くて家にいる陽葵の事を思い出していた。
「あー光輝ったら私と2人でいるのに他の女性の事を考えてた・・・」
ミルは頬をぷくっと膨らませて僕の顔を覗き込んできた。
「あーミルを見てたら故郷にいる妹の事を思い出したんだ。悪かったな。」
「そうだったのね、妹さんなら許してあげる。私もミュウの事が好きだからその気持ちは分かるしね。」
じゃ妹じゃなかったら許して貰えないのか?と光輝は疑問に思ってしまった。
「これ凄く綺麗で気に入ったかも♪でも高いんだよね・・・」
星と三日月の装飾を施したイヤリングなのだが金貨1枚だった。確かに一般人には手の届かない金額だし僕の懐事情を知らないミルからすると高額で少し遠慮してしまうのかもしれない。
「そうだな、他には何が欲しい?」
「え~とねー、このアクアマリンのリングが綺麗で可愛いって思った。あとはこの腕輪かな。見た目は可愛くはないんだけど何か不思議な力を感じるのよね。私が欲しいって思ったのはこの3つなんだけどすっごく悩んでる。」
「僕もミルになら似合うと思うよ。じゃこの店にある物全部ください。」
「えっ?全部・・・?」
困惑しながらミルが首を傾げている。
「毎度あり・・・って店の品物丸ごとですか!!!全部で白銀貨1枚と金貨80枚銀貨55枚銅貨75枚になるけど持ってますか・・・?うちは分割払いはしていませんから一括ですよ?」
何で全部って顔をしているラプラスさんだったがここで使われている鉱物や魔石はどれも貴重だが錬金術を習得したいと思っているからそんな貴重な物がお金で買えるのなら手に入れたいと思ったのだ。
「あぁ!あと聞きたい事があるから情報量込みで白銀貨2枚でどうですか?」
「あんた、一体何者だい・・・」
「ま、小金持ちの坊ちゃんって事で。ところで錬金術師について聞きたいんだけどラプラスさんの師匠ってどんな人ですか?生きているならその場所とできれば紹介状も書いて貰えると助かります。」
「そうですね。光輝君になら話してもいいかな。ラオスは僕の父であり師匠だったんけど、すでに半年前に亡くなっています。5年程前から不治の病で苦しんでいたんです。けれど父が亡くなる数日前にこんな言葉を残しました。5日後、私はこの世を去るけれど火葬はせず土葬にして棺桶の中にこの本と一緒に埋葬して欲しいとね。それで埋葬してから数日後、何者かに墓を掘り起こされ遺体と本が盗まれてしまい今も見つかっていません。その本は死んだ父が生涯をかけた錬金術の成果が記されていて国宝級の非常に貴重なものだから盗まれるのも仕方のないことなのかもしれませんが・・・」
「そうですか。近くに寄った際は是非お参りをしたいと思いますので埋葬されている場所を教えてもらえませんか?」
「是非お願いします。父の遺体はバルト山の頂上に埋葬しました。」
「ありがとうございます。他の店も見て廻りたいので僕達はこれで失礼します。」
品物を貰い支払いを済ませた光輝は父が探している錬金術師もバルト山だけど偶然かな?と思いながら他の露店を見学し夜も更けたのでミルと別れ今夜は港街の宿に泊まることにした。
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