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兄ちゃんのこと、これからのこと

ずっとずっと一緒にいるって、小さい頃に約束してくれた。

僕は真似したくて俺って言うようになったし、兄ちゃんの背中を追いかけ回してばかりいた。


あの女の子を連れてくるまでは、普通の兄貴でいられたのに…許さない。

兄ちゃん、ねえ兄ちゃん。

その女の子はだあれ?

今日友達になったの?

そうなんだ。

なら兄ちゃんの友達は俺の友達だよね?

仲良くしてもいいよね?

やったあありがとう!

兄ちゃん優しくて好きー!

へへっ、やっぱり俺の兄ちゃんは最高だ。


…こんな奴に兄ちゃん独り占めなんかさせないから。



兄ちゃんどうしたの?

気分悪い?お腹痛い?

お母さん呼んでこようか?

…え、なんでそんなこと言うの?

に、兄ちゃんが俺に酷いこと言うはずないよね?

だってあんなに優しい兄ちゃんだもん。

体調悪くて気が立ってるだけだよね?

そうだよね?

それとも、あの女が何かしたの?

あ、あああ…吐いちゃった。

やっぱり気分が悪かっただけなんだね。

体も震えてるしよっぽど辛かったんだんだね。

代わってあげられるなら俺が苦しみたいのに。

兄ちゃんが痛いのは俺も痛いよ。

大丈夫、傍にいるよ。

抱き締めてあげるから。

寂しいなんてことはないでしょ?

ずっとずーっとこうしてあげるから。


…俺達を引き剥がした母親に生まれて初めて苛立ちを覚えた。



ねえ兄ちゃん。

どうして友達と遊ばなくなったの?

天気良いからサッカーしようよ。

兄ちゃんが得意な鬼ごっこでもいいよ。

部屋に引きこもってばかりだとカビが生えるって母さん心配してたよ。

俺と一緒に遊ぼうよ。

一緒に遊んでよ。

あ、そうだ!

学校の勉強でわからないところあるんだった!

教科書持ってくるから教えてよ!

兄ちゃん頭良いからスラスラ解けるでしょ?

待っててね、すぐ持ってくるからどっか行っちゃやだよ。

その被ってる毛布も外しておいてね。


…部屋に戻って終わった宿題をバレないように消しゴムで消した。

あの日から兄ちゃんは学校が終われば部屋に引きこもって、何かに怯えるようにベットの隅で蹲っている。

そういえばあの女をここ最近見掛けないが、何か関係があるのだろうか。

探す必要がある。



兄貴!

今日もテストで満点だったんだー!

褒めて褒め、って…いたたたた。

腹蹴ることないじゃんかあ。

なんで手や足が出ちゃうのかなあ。

ま、俺丈夫だから良いんだけどさ。

あんまり気にしてないけど、他の人にやったら駄目だよ?

やるなら俺だけにしてね?

それよりほら、ちょっと破けたけど満点用紙!

兄貴が教えてくれたとこ全部出たからラッキーだったんだー!

嬉しくて部活終わったら一直線で帰ってきたよー。

たまたま?いやいや、兄貴の読みは百発百中だからね!

流石自慢の兄貴だよ!

だからまた勉強教えてほしーな。

忙しいって言ったって、お風呂上がりに本読んでる少しの時間でいいからさーお願い!

ねえねえ兄貴ーつっけんどんにしないでよー。

教えてくれないとまた赤点とっちゃうんだってー。

弟を助けると思ってさー兄貴ー待ってよー後生だからさー。

…え、今からなら良いって?

いやったあ!!兄貴大好きー!!めっちゃ大好きー!!!

すぐ準備する!30秒で部屋行くからね!

この前みたいに外に逃げるの無しだよ!?

約束したからね?


…この前わざととった赤点が効果的だったのか、兄貴が俺から逃げることが減ってきた。

代わりに増える痣の数はきっと、心のジレンマなんだろう。

優しい人だから何かを隠して突き放そうとするけれど、その程度で俺が離れるくらいならとっくに嫌いになる方が先だろう。

きっと俺が離れたら兄貴はとことん独りになる方を選んでしまうから。

逃がさないよ。

今も昔も優しい人だけが我慢する世界なんて、クソ喰らえだ。

幸せにならないのなら、そんな世界は要らない。

過去も、これからも無くなってしまえばいい。



あれ、兄貴がお客さん連れてくるなんて珍しいね。

外人さん?イケメンって奴だね!

会話は出来るの?文字は読めない?

変わってんね!

いいよ、俺が教えてあげる。

兄貴の友達だからね!

兄貴の友達は俺の友達でもあるからさ!

気軽に頼ってくれていいよ!

俺?俺の名前はね…源希っていうんだよ。

正軌と名前が違うって?

それは込められた意味が違うからね。

メシアにも今度教えてあげる!

だからほら、兄貴の部屋行こー!

ダラダラ書くとネタバレ(今更)書きそうになったので、序盤までの彼視点をサラサラっと。

また気が向いたら書いていきたい話ではあるので。

消さずに残せば良かったと後悔してますが、また新しい彼等と会えると思えば。


ありがとうございました。

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