ねぇ、三谷くんの裏垢見つけた。
三谷くんは、いつも1人だった。
綺麗な顔立ちで、バカな会話に群れることもなく、いつもクールに携帯に触れていた。
……とは言っても、べつに美しいわけではなかった。
冒頭では美しい感じに述べたけど、あれは三谷くんにある美しい部分を無理やり出しただけだ。
実際、綺麗な顔はしている。
なのに、ダサいメガネ、ぼさぼさな髪、規則は守ってるけどなんかダサい制服。
バカな会話にも入らないけど、真剣な会話にも入らない。
携帯を触っているけれど、実際孤独から逃げているようにしか見えない。
つまり、ただ単に「ぼっち」なのだ。
そして、私は、
そんな三谷くんの、
裏垢を見つけてしまった。
三谷くんの斜め後ろの席になったのが事の発端だった。
少しの好奇心で、その携帯を覗いたのだ。
そろーり。そろーり。
その画面には、とある呟きアプリ。
ハッキリと、アイコンとIDが見えてしまった。
「やばい」
と、思った。
家に帰って、急いで検索した。
なぜかすごくドキドキした。
三谷くんは、色んなことを呟いていた。
「ただいま」
「あのアニメ最高」
「今日の飯まずい」
「またラーメンかよ」
「深夜アニメ録画し忘れた」
かっこよくもないけど、ダサくもない、潔いヲタクという感じだった。
でも、なんか三谷くんらしかった。
「俺を浮かせる教室には入りたくない」
クラスの悪口もあった。
だけど、なんか嫌じゃなかった。
言われてる側なのに、嫌じゃなかった。
なんでだろう。
なんでだろう?
もしかしたら、私は、
何を考えているかわからない、
元は綺麗なのにとてつもなくダサい、
黒い部分がにじみでている、
そんな意味不明な三谷くんの、
人間性に惹かれていたのかもしれない。