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閉店後

 時計は、7時を指していた。

 大きな柱時計が、正確に七回、鐘を鳴らす。

 店の閉店時間だ。

 玲奈を送り出した後、甲斐は入り口の扉にかけられた「OPEN」の札をひっくり返した。

 ショーウィンドウに青いロールスクリーンを下ろしていると、背後で声が聞こえた。


「帰った?」

 ちょうど歩道に面した窓のロールスクリーンをすべて下ろし終え、甲斐は振り返った。


「はい、帰りましたよ」

「そう」


 火のついていない煙草をくわえた笠置が、カウンターのそばに立っていた。

 彼の足もとには大きな三毛猫が寄り添って座っている。


「あの子相当驚いてましたよ」

 言いながら、甲斐は店内の明かりを落としていく。

 白色のライトが消え、店内は常夜灯のオレンジ色の明かりとカウンターの明かりだけになる。


「へえ」

 無表情に、笠置は応える。

 猫が何か言いたげに彼を見上げている。


「まあ、笠置さんが決めたことだし、僕は反対しないですけど。

 あの子が来たらお店でる気ないでしょ」


「片づけ終わったらお前帰っていいよ。

 事務的なことは俺やっとくから」


 甲斐の問いには答えず、笠置はそれだけ言って、カウンター内に入っていた。

 レジを操作して、一日の売り上げレシートを出している。

 笠置の様子を見て、甲斐は苦笑する。

 三毛猫はやれやれ、と言った様子で小さなため息をついた。

 甲斐は猫の前に座り込んだ。


「お銀さん。

 掃除終わったら一緒に帰ります?」


 猫はこくりと頷いた。


「じゃあ、ちょっと待っててくださいね。今日はお客様少なかったし、すぐ終わりますから」


 猫は腰を上げると邪魔にならないようにか、カウンターの上にひょい、とジャンプした。



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