愛情に、喝!!
あれから、2日・・・
そう、あれからというのは、土屋の件だ。
アレからというもの、変化があった。なにかって・・・?僕が、僕なんかが、だ。
・・・悩み相談を受けるようになった。
そして、また聞いてみた。
「おい、アカネ」
「ん?」
「・・・僕の体使って、なんかしたか?」
「まぁ、したな」
「何をしたのかなぁあ~??」
「・・・お主がビビッて何もせんから、わしがお主の代わりに行動しただけじゃ。
別に、悪いようにはなっておらんじゃろ」
そう、悪いようにはなっていない。
むしろ、良いようになっている、というか、信頼されるようになったと言った方が正しいか。
「ん~・・・まぁ、そうなんだけどね」
「じゃぁ、良いではないか」
いいのかなぁ・・・
「おはよう~」
「あ、米田!おはよう!」
「おいーっす!米田」
『おはよう!』
・・・・・・あれからというもの、土屋がまず最初に僕に挨拶して、次に亮平といった感じだ。そして、今まで教室に入っても亮平しか気づかなかったのに、皆が僕に挨拶してくる。新鮮だが・・・面倒くさい、気もする・・・
「なかなか、分かりやすい反応よのぅ」
「・・・だな」
「おい、また来たぞ、あの子」
・・・・・・あぁ、来たな
「米田くーん!聞いてよぉ・・・また彼氏のことなんだけど・・・」
はぁ・・・疲れる
ずっとだ。この、彼氏の「木崎佐助」の相談をしてくるのが、「田沼みやび」だ
田沼みやびは、とにかくうるさい。木崎の愚痴をなぜか僕に話してくる。
僕にどうしてほしいというのだ。
「佐助くんがぁ~・・・ほかの女の子とメッチャいちゃついてるんだけどぉ」
「ぁあ~・・・それは、辛いねぇ」
「でしょ!?ホント、マジありえないと思うんだよねー」
これを聞いて、アカネが
「おい、お主。良くこんな無駄なことに時間を使えるな。わしとしては、今すぐ
こいつを殴りたいんじゃが・・・」
「・・・黙れ」
「・・・?なんか言った?」
「んっ・・・いや、何でもない何でもない」
アカネは、田沼が嫌いみたいだ。
すごい毛嫌いしてるのが、ひしひしと伝わる。
「はい、今日は金曜日なので、荷物の持って帰り忘れ等がないように、気をつけ
て帰ってください。ハイ、日直」
「起立」
『ハイ』
「気をつけー、れぇい」
『さよならー』
「はい、さよならー」
そうか、今日は金曜。ってことは、ってことは・・・・・・
よぉっしゃあああああああああ!!!
やっと・・・やっと開放される・・・!!
僕の、至福のときだ・・・特に、アカネが来てからというものの、ストレスって
いうか、疲れが溜まりに溜まってたからなぁ・・・!
と、思っていたら、誰かに呼ばれた。
「米田く~ん」
田沼の声だ。
「あ、ああ・・・何?」
「あのねぇ~・・・ちょっとお願いがあって・・・」
「ただいまぁー・・・」
・・・僕は、今ものすごく興奮している・・・
「お願いがあって・・・
ちょっと、佐助くんのことで相談があって、でも、相談だけするっていうのは
あれだから、遊園地でも行ってどうかな・・・って、だめ?」
「・・・あ、あぁ、大丈夫・・・うん」
あの時は、僕も頭が真っ白で自分の感情がよく分からなかったが、確実に僕は今
喜んでいる!!
「おい、お主。今、気分最高じゃろう」
「あったりまえだろう!だって、だって・・・!!」
そう、僕は全然目立たないタイプだったし、あまり女子とも話したことがなかったから女子と付き合う、なんて考えられなかった。が、これは、別に付き合うとか、そういうのではないが、これは、これは・・・!とどのつまりは・・・
デートだ!!
「まさか、お主が承諾するとは思っておらんかったがな」
「いやいやいやいや、あれで断る男子はいないだろう!むしろ断る奴のほうが
おかしい!」
「・・・そうか」
「別に相手のことが好き、とかそういうんじゃなくても、こういうのはうれしい
ものだろ」
「そういうものか」
「・・・だろ」
「ヨカッタナーオメデトー」
「・・・すっげー棒読みだな」
「まぁ、そんなことはどうでも良いが、わしも行くぞ、それ」
「えっ!?」
「当たり前じゃろう。わしはお主を観察するためにここにおるのじゃぞ?」
「・・・・・・絶対来るな!!っていっても、来るんだよなぁ、どうせ」
「ほぅ、段々わしのことが分かってきたみたいじゃの」
「まぁ、嫌でも分からなきゃ仕方ないだろ」
「明日じゃよな!!遊園地か・・・楽しみじゃの!!」
「何でアカネがワクワクしてんだよ・・・」
翌日
「おい!お主・・・!!起きろ、もう時間になるぞ!!」
「んー・・・何が?」
「何がって・・・今日は遊園地であろう!?」
「・・・・・・ぁ、ぅわぁああああ!!」
「早くしろ!!」
「うわ!マジかマジか」
やっべ・・・もう集合時間30分前切ってる・・・!!
財布持った、ハンカチ持った、服もちゃんと着た、よし、大丈夫だ!!
「行ってきまーす!!」
「えっ、ナル君、どこ行くの?」
「遊園地!!」
「え、あさごは・・・っ」
「ごめん・・・!」
「ハァ・・・ハァ・・・」
よし、集合1分前!田沼は、来てる!
「ご、ごめん!ハァ・・・ハッ・・・」
「いや、別にいいけど・・・どうしてそんなに息切れてるの?」
「いや、ごめっ・・・僕・・・っ起きたの集合30分前でっ・・・チャリ・・・
ぶっ飛ばしてきたから・・・っ」
「あ、そーなんだ・・・まぁ、とりあえず、落ち着いてから、遊園地へGO!」
「ほんと、ごめんね・・・時間は絶対守らなきゃと思って」
「いや、いーって、いーって・・・っていうか、時間守ろうとするだけ、偉いよ
佐助君なんて、時間決めても、1時間ぐらい遅れてくるし、それであっても、
『ごめーん、ちょぃ寝坊したわー』だけだよ!?ちょぃじゃないし!!!って
感じ。だから、大丈夫」
・・・・・・木崎、1時間も遅刻するのか・・・・・・
「よし、じゃあ!落ち着いたし、遊園地行こうか!」
このとき、一番ウキウキしていたのは、アカネだった
「おほ~・・・!!これが遊園地か!!人がいっぱいおるのぅ!」
まぁ、そういう場所だからな・・・
「よし!じゃあ、とりあえずジェットコースター乗ろうか!」
「え、まじで?僕、こういうのあんまり得意じゃないんだよなぁ・・・」
「はいはい、でも、こういうのはチャレンジすることが大事なんだから!!」
「ぅう~・・・・・・分かったよ」
「うぅううう!!うぎゃあっ!うお、うおおおおおおおお!!」
「きゃぁあああああああ!!」
「おお!!速い速い!!」
僕が騒ぎすぎて、こんなアカネの余裕の声にも気づけなかった・・・
「ぅっ・・・こわかったぁぁ・・・」
「ぷっ・・・あはは!!ホントにだめなんだねぇ、絶叫系」
「だから、最初に言っただろ・・・」
まぁ、久々で面白かったけど・・・・・・
デートも、じゃない・・・これはあくまで悩み相談のための前ふりだ、勘違いするな、僕・・・
その前ふりも終盤に差し掛かったところで、本題を切り出してみた。
「なぁ、田沼。そろそろ、その悩みを聞きたいんだけど・・・」
「あー・・・そうだったねー・・・んー、でもその前に、ここじゃ話しにくいか
ら、アレのろうよ」
「え?・・・・・・いいけど・・・」
田沼が指をさしたアレとは、観覧車のことだった。
もちろん、アカネも乗った。
「でねぇ~・・・その本題なんだけど・・・本当は、そういうのじゃなくて」
「・・・?」
どういうことだ?
「なんていうか、最近・・・佐助くん、全然デートもしてくれないしぃ・・・
なんか、寂しかったんだよねー・・・」
「あ、そう・・・なんだ
別れようとかって、考えたことないの?」
「んー・・・だってぇ、別れたりしたら、また次探すの面倒臭いじゃん?」
「別に、彼氏がいなきゃいけないって訳じゃないんじゃない?」
「でもさぁ、彼氏いないと不安って言うか?」
これを聞いたあとのアカネは、観覧車からの景観を楽しむこともなく、
「何じゃ、お前!?それでは、誰でもよかったということか!!?」
と、田沼に対しての文句だけを言っていた。
そして、その文句は日曜日までも続いた。
「そろそろ、うるさいよ、アカネ」
「でもでも・・・っもおおおおお!腹が立つ!!」
「はいはい・・・」
月曜日、僕が教室に入ったらなぜか木崎がいて、田沼と険悪な雰囲気だった。
「おはよー・・・・・・って、どうかしたの?」
「あ・・・米田君・・・どうって・・・・・・」
「おい!米田!どうした?じゃねぇんだけど・・・お前らさぁ、俺が知らないと
でも思ってんの?お前ら、土曜に2人だけで遊園地行ったろ・・・!ほらっ!
俺の知り合いから写メきてんだよねー。どゆこと?」
「あー・・・いや、どゆことって言われても、答えようが・・・」
「俺の彼女にお前何してくれてんの?」
「・・・・・・」
そうしたら、アカネの声がボソッと聞こえた。
「すまん・・・ちょっとこれはわしが我慢できん・・・おぬしの体、使わせても
らう・・・・・・」
「・・・は?」
そう、もちろんここからの僕の記憶は・・・ない
「いや、は?じゃなくてよぉ・・・!」
「ちょっ・・・佐助くん!暴力はだめ!」
「お前もお前だよ!俺の彼女ならちゃんとわきまえろよ!」
「・・・・・・うるさい」
「は?米田、なんか言ったか?」
「・・・うるさいと言ったのじゃ。猿みたいなキーキー声で怒鳴るな」
「はぁ!?お前、何言ってんの?」
「ああ!?もう一度言ってやろうかぁ!!?それともお猿さんには何回言っても
同じかのう!?」
「お前、俺の彼女に手ぇ出しておきながらよく言うな!?」
「言いたいことはそれだけか?・・・『俺の彼女』なぁ・・・!?笑わせるな!
そんなに大事なら、ちゃんと見ておけばよかったではないか!!」
「だから見たからこうやって出てきたんじゃねぇか!」
「こうやって!?ほーぅ・・・大事な彼女の前でこんな格好の悪い姿を見せて、
よく言うわ!そもそもな!彼女がほかの男のほうに行ってしまうまで、彼女を
放っておくからだめなのじゃ!!しかも木崎、お前・・・デートとやらの集合
時間に1時間遅れてきても平気な顔でのこのこ来るそうじゃの!?」
「・・・ちょっ・・・米田君・・・」
「何じゃ!?田沼、お前もお前じゃ!!お前、言っておったな・・・『彼氏がい
ないと不安』じゃと・・・それは、彼氏という存在がおったら誰でもよいとい
うことじゃろう!?そんなんで、寂しいーとかアホか!!」
『・・・・・・はぃ・・・』
「お互い、彼氏彼女という存在がおって、何も中身のない、スカスカな関係じゃ
!!お前らのやっとるのは『彼氏彼女ごっこ』じゃ!そんなんで、俺の彼女だ
の、彼氏だの、片腹痛いわボケェ!!!」
もう、気づいた・・・
アカネが、また何かしたんだな、と。
「おい、アカネ・・・これ、別に僕が変わりたいとかそういうことじゃなかった
よね・・・」
「・・・すまん。これは、わしが単純にイライラを発散したかっただけじゃ」
「・・・だよな。これで僕、本当の本当に何も関係ないことでまた変な噂を立て
られるんだが・・・・・・」
「・・・・・・本当にすまん、これは、素直に謝る・・・」
謝りゃいいってもんじゃねぇだろうがぁああああああああああああああああ!!
僕、いつかとんでもない噂を立てられそうな気がする・・・
いや、もうたってるか・・・