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やりすぎに、喝!!

昨日から、僕の家に住みついた小さな精霊、アカネ

いや、正確には、僕に「とり憑いた」と言うべきだろうか・・・


「はぁ・・・」

学校に行くのが憂鬱だ。・・・なぜかって?

「おい、お主。なぜそんなにため息をついておる?」

・・・・・・そう、なぜか・・・

「てめぇのせいだよぉおおおお!!ってか、お前しかいねぇだろうが!!」

「なぜわしのせいなのじゃ!!意味が分からんわ!」

「昨日、お前がやったこと、覚えてるか?」

「・・・なんじゃ、あのことか。あれだけでそんなにため息をついておるのか?」

あれだけって、こいつホント僕の気持ち何にも分かってないよなぁ・・・

「分かった・・・もう弁当のおかずは食わんから、許せ」

「あ、ああ・・・まぁ、仕方ないな・・・って、そっちじゃねぇよ!

 何があったかは知らないが、僕が亮平を泣かしたみたいになってただろうが」


まぁ、正直言って、覚えてないのだ。

僕が亮平を泣かした、どんな内容であいつを泣かしてしまったのかまったく記憶にない。そして、それもアカネの能力なのだ。

「なんじゃ・・・そっちか。あれは、『塾』とやらのことで、腹が立ったから

 少しばかり意見しただけじゃ」

「少しばかりで、泣かないだろ・・・とにかく、そういうことは金輪際やめて

 くれ。しかも、アカネ・・・お前のせいで僕に『二重人格疑惑』が・・・」

「あああー・・・あぃあぃ分かった分かった」

ホンマかいな・・・


「おはよぉ・・・」

教室のドアを開けた瞬間に分かる。クラスメイトが、僕のことを奇異の目で見ている。なんとなく疎外感があるし、気まずい・・・

そんな気まずさを破ったのは、亮平だった

「おいっす・・・!あのぅ・・・俺、まずは鳴海に感謝を述べたい。・・・って

 いうのもな、俺、もう後悔してねぇんだ。お前に説教されてから、塾にいける

 って、幸せなんだから、もっとちゃんと勉強しようって思ったし・・・」

「お・・・ぉう、そうか。。。」

・・・僕じゃないけどねー


思いのほか、授業中のアカネは静かだった

しかし、昼休みに入り、いつもの『アレ』が始まった途端にアカネの僕に対しての質問攻め、と言うか、文句がやばかった


「おい、土屋ぁ。これ、なぁんだ」

「あ、俺の筆箱・・・!!ないと思ってたら、隠してたのかぃ!」

あーぁ・・・また始まった

いつもこうだ。土屋がからかわれてる・・・

クラスで主な権力を持つ、小西・谷木・八幡の三人から。

初めは、土屋はあの三人と仲がいいと思っていた。だけど、しばらくして明らかに『違う』と分かった。つまり、仲がいいというわけではなく、からかわれている、ということだ。土屋自身はいつも笑顔で流している、が、僕からしたらイジメの一歩手前という感じにしか見えない。それを見ている僕も僕だけど・・・


「おい、お主。・・・おい!」

「・・・ん、あぁ、どうした?」

ぼーっと見ていてアカネのことなんてすっかり忘れてしまっていた

「どうした?ではないわ!なんじゃ、あれは?」

「ああ・・・いつものことだよ、あんなの」

「いつも、『あんなの』なのか?」

やっぱり、アカネは鋭い。早速食いついてきたし・・・

「いつも、物を取られているのか?」

「まぁ、物取られたりとか、あとは・・・上から乗られて押しつぶされたりとか

 上靴を水にぬらされたりとか・・・」

「そんなことされて、なんであいつは黙っておるのじゃ?」

「さぁ・・・遊びの延長くらいにしか思っていないんじゃない?」

まぁ、そんなことは思っちゃいないけど・・・

「あんなことされて、嬉しい奴がいるわけなかろう!」

「・・・まぁ、それは一人一人の価値観の違いじゃない?」

「・・・・・・っ」


その日の放課後、小西・谷木・八幡の下品な笑い声と土屋のいつもの怒った声が

聞こえた。

また上靴ぬらされたのか・・・

僕は見ているだけだったが、状況はすぐに分かった。

土屋がぬれた自分の上靴を持って教室に戻っていく姿が見えて、気になって追い

かけてしまった。声は、かけてあげられなかったけど・・・

そして、見てしまった

「おい、お主。あれでも、土屋とやらは遊びの延長くらいにしか思っておらんの

 だろうか。・・・・・・泣いておるぞ・・・」

「・・・・・・・・・」

僕は、見たくなかったものを見た気がして、急いで家に帰った。


「おい、お主。これでよいのか?」

「・・・さぁな」

「さぁなって・・・お主見なかったのか!?土屋のな・・・」

「見たよっ!!見たけど・・・仕方ないだろう」

本当は、さぁな、とも思ってないし、仕方ないで済まされることではないことも

分かっている。だけど・・・

「はぁあ!?何じゃお主っ、見捨てるということか!?」

「見捨てるって訳じゃないけどっ、僕が言ったら・・・」

「・・・ほーぅ?もしやお主、次の標的が自分にされてしまうのではないか、と

 恐れておるのか?」

「・・・っ」

「はぁ・・・今まで、そうやって逃げてきたのであろう?お主、変わるのではな

 かったのか・・・情けないにもほどがあるぞ」

「・・・怖いに決まってるだろ!当たり前じゃないかっ、僕みたいなのが何かア

 クション起こせば、目ぇつけられるんだよ・・・」

「・・・っもういい・・・」

それから僕とアカネは一言も喋らずに眠った。


翌日

「昨日はごめん。あれから、僕ちょっと考えてたんだ。僕、もう変な噂とか流さ

 れてるし、いまさらだなって。それに、僕も、変わりたいって思うし・・・」

それを聞いて、アカネは驚いたようだった。一瞬の沈黙があってから

「そうか」

と、納得したような、認めたような、優しい声が耳を抜けた。


「お、はよ」

僕は、土屋を見つけると、こそっと呼び出した。

「なんだよ、米田。こんな風に呼び出して」

「いや、ちょっと・・・確認したいことがあってさ」

「確認したいこと?」

「・・・なぁ、土屋。辛くないか?・・・昨日も上靴濡らされてただろ」

「ぁあ~・・・それか、それね・・・別に、今までもあったから辛くねぇよ」

「でもお前昨日泣いて・・・」

「うるせぇな!・・・ってか、何見てんだよ。しかも、今更だろ。米田だって、

 今まで黙ってみてたじゃねぇか。いまさら、そんなこと言われたって、どうし

 ようもねぇだろ・・・!」

そう吐き捨てて、土屋は僕の元から去った。

土屋が去り、しばらくたってから僕も教室に戻った。

教室での土屋は、さっきの事が何でもない事のように笑っていた。しかし、僕と目は合わせてくれなかったけれど・・・


昼休み

「おいー、つーちや」

そう、また始まったのだ。

「はい~、俺たちがお前の上靴洗濯してやったぞぉ!感謝感謝!!」

「もぅ~・・・はぃはぃ、ありがとう・・・」

助けなきゃ・・・!だけど・・・やっぱ怖いよ・・・

「おい!お主、助けるんじゃなかったのか?」

「・・・・・・」

「お主言ったよな?『変わりたい』って。アレは嘘じゃったのか?」

「嘘じゃない・・・!嘘じゃない、けど・・・」

「はっ・・・やはり、怖いか。お主、そんなことじゃ何も変われんぞ・・・

 いっつもそうやって逃げとったくせに・・・!」

「・・・・・・っ」

「・・・・・・わしは、こういうことを見捨てられん性質なんじゃ。

 悪く思うなよ」

「え・・・っ!おま、何する気だよ・・・!!」

「うるさい・・・」

そして、僕が変わった


「おい、土屋」

「お~い、土屋ぁ。米田が呼んでるぞぉ」

「・・・っなんだよ、米田」

「分かっておろう、わしが言いたいこと。・・・もう一度言うぞ。

 『辛くないか?』」

「別に、辛くねぇけど、なに?」

「ほぅ・・・ホント、バレバレな嘘ばかりつく奴ばかりじゃのう。お前、泣いて

 おったではないか。なぜ、無理して笑っておるのじゃ?」

「・・・おいおい、ちょっと見ろよ、皆。なんか、また米田おかしくね?やっぱ

 あの噂本当なのな・・・ちょーウケル!!」

「黙れ!!・・・お前、八幡といったな。で?お前と、小西と、谷木か・・・

 お前らにも言いたいことがいっぱいある!じゃが、今は土屋に聞いておる。

 お前らはその知性も何も感じない締まりのない口をがんばって閉じていろ!!

 ・・・して、米田、お前がそこまで無理をする理由は何だ?」

「・・・ないだろ・・・」

「聞こえん」

「・・・仕方ないだろっ、こうしなきゃいけない立場なんだから!俺はっ!辛い

 よ、そりゃぁ・・・当たり前だろ!でも、こうでもしなきゃ、俺はもっと酷い

 目にあうかもしれない!相手にもされないかもしれないっ・・・!だったら、

 上靴濡らされるほうがまだマシだ!」

「言いたいことはそれだけか?」

「それだけって・・・・・・」

「おいおいおいおいおいおいおいっ!それじゃぁ、俺らが悪者ジャンね?それは

 ないでしょぉ??????」

「それなー、だって、土屋笑ってるもんなー。それで分かれって方が無理だろ」

「ってか、米田えらそうに言ってるけど、お前今まで黙ってたじゃん」

「・・・確かに。こやつは臆病者じゃ。じゃが、助けようとしていたのは紛れも

 ない事実じゃ!じゃなきゃわしが出てこんわ!それになぁ、お前ら土屋が辛い

 っていうのに気づけない、といっていたな・・・」

「言ったけど?」

「それがおかしいと言っておるのじゃ!お前らには心がないのか!?こんな、

 イジメじみたことをしていて、気づかんとはバカにもほどがあるじゃろう!」

「はぁ・・・?」

「も、もういいから・・・っ米田・・・もういいからっ」

「土屋・・・お前もバカじゃ。なぜ、今まで誰かに頼らんかったのじゃ!!」

「・・・・・・頼れるわけないだろ。絶対助けてくれない」

「・・・じゃぁ、これからはわしに頼れ。土屋、お前が今まで人に頼れんかった

 のは、『誰も助けてくれない』とか、そういうことだけじゃない。一人になり

 たくなかったからじゃ!!一人になるのが怖くて怖くて、隅っこでずっと震え

 ておったのじゃろう?・・・これからは、わしがおる。大丈夫じゃ・・・」

「・・・・・・土屋」

「それとな、思いは、言葉にせんと伝わらんのじゃ・・・!!黙っておって、

 誰かの助けを待っておっても、無理なんじゃ!言葉にしろ!今すぐ・・・!」

「・・・・・・・・・っ・・・小西くん、谷木くん、八幡くん・・・これからは

 君たちとは、関わりたくない・・・いつも、辛かった・・・もう、ああいう事

 は、やめてほしい・・・」

「・・・言えるではないか」

「っつか、待てよ。さっきからさぁ、聞いてるとぉ・・・なんか俺らが最低って

 感じになってるんすけど?」

「マジ調子乗んないでほしいんだけど」

「後々のこと考えてたほうがいいと思うけど?」

「・・・・・・ホント、脳のない奴らじゃのう。今までも、こうやって、自分よ

 りも弱そうな奴を見つけて、いびっておったのじゃろう・・・それはなぁ、

 自分に自信がないからじゃ!自分に自信がないから、いつまでもウロウロウロ

 ウロして、仲間を探して、集めて、安心しようとする!!そういう奴は、

 ほかのどんな奴よりも最低じゃ!!餓鬼じゃ!!・・・周りで見ておる奴らも

 そうじゃ!!こいつらと同罪じゃ!勇気がないから、一歩が踏み出せない!!

 お前らも、変われよ!せめて、変わろうと本気で願え!!」


僕が気づいたのは、小西たちが

「チっ・・・もういい、行こうぜ・・・」

と、捨て台詞を吐いたところと、土屋が僕に泣きながら

「ありがとう・・・っ」

といったところを聴いた瞬間だった。

そして、なぜか周りの人達から

「よく言った」とか、「ごめんな」とか言われ、救世主のように崇められた。

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