ベルフェゴールとマモンのディープでストレンジなお話
「うふふ。ディープディープよ」
「ちーす。ベルフェゴールです。あ、このディープしか言わない残念お姉さんの名前はマモンね」
金を基調としたドレスに身を包むセレブなお姉さんこと『強欲』を司る悪魔・マモン。
今回の彼女は、挨拶もなしにひたすらニンマリと微笑んでいた。
「思えば、マトモな再登場は『真・女神転生if…』以来か。そりゃあ、感激もひとしおだな」
「ウフフ、ディープディープヨ」
「あ、ダメだ。こりゃ『状態異常:HAPPY』だわ」
今回はパートナーズが全員出払っているので、代わりがいない。
だからマモンには正気に戻ってもらいたい。ひとりでボケとツッコミをやるのは相当のスキルを要求されるため、怠惰の悪魔的にはラクをしたいのが本音だ。
一通りの知識で正気を戻す手段を試してみたが、ダメだったので、荒療治。
『ゴールデンハンマー』と天に手を掲げながら叫ぶと、手のひらにすっぽりと黄金でできた戦鎚が具現化する。
それで、彼女の頭をポカリと殴る。
実際には鈍重で致命的な音が聞こえるか聞こえないかのレベルで発生して、自分の目を通して確認できるマモンの体力ゲージがみるみると減っているのだが。
「ハッ、私は何を!」
黄金で殴られたからか、重量ダメージが思いの外、深刻なところまで到達したからなのか不明だが、マモンの状態異常が解除された。これは喜ばしいことだ。
「はい、本日は楽しい出来事が2つあります。
ひとつ目はATLUSが3DSから『真・女神転生DEEPストレンジジャーニー』を発売します。気になる発売日は10月26日です」
「はーい、私が出まーす! イエーイ!」
「アー、ソウデスネ。ヨカッタネ」
「何よ、アンタ、出番がないからって、他人行儀すぎない?」
「いやぁ、別に。しかし、これで出揃ったかなぁ」
「? 何の話?」
「いやぁ、今までさ、メガテンしかりペルソナしかり、ルシファーやベルゼブブ、リリス、べリアルは固定枠で出てたけどさ、ベルフェゴール、アスモデウス、マモンの俺らは扱い低かったよな」
「……そうね」
「俺は物好きの作家が専属で主役をやらせてるし、その影響か、とあるダンジョンの最下層にいなかった。アスモデウスはペルソナ5でボス役として登場。無印の真・女神転生4でもボス役を務めた。んで、マモン、君の出番だ」
「任せておいて。作品ではきっちり仕事をこなすわ」
「おう。一周目のプレイでは誰を連れていこうかな。オーカスとアシェラトはガチ。残る一枠が未定なんだよな。順当ならイシュタルだが、レベルとお前らがどの辺で出てくるか次第か」
「オーカスとアシェラトという人選がアンタらしいわね」
「本当はオークでも良かったんだがな。ゴブリンは出てくるのにオークは出てこないからな。だから、オーカスくん。弱点はイロイロあるけど愛とシステムへの研鑽があれば何とかなる」
「フフン、愛と知恵の女神っぷりは健在ね」
「まぁな。使われているエネルギーがメガテンに注力しすぎだがな」
ここで、両者、沈黙が入る。
何かを話そうにも大したネタがない。
前作になる『ストレンジジャーニー』の話は、作品自体を思い出してしまい、これからのプレイの妨げになるとの判断で見送られた。
「だがしかし」
「何よ、突然」
「これを思い出してしまった。『ゴア隊長に敬礼!』しかも今回の声優は石塚運昇さん。やべぇ、鳥肌が立ってきたわ。それにゼレーニンが坂本真綾さんでしょ。アイギスの人だったよね。前の時は『プログラムされた機械から暖かみのある人の声』への変化を巧みに表現し、今回は『人→人ならざるもの』への変質だからね。どんな雰囲気を纏って立ち塞がるのかね。ゾクゾクするね」
「ねぇ、ヒメネスは?」
「櫻井さんは……チャラ男のイメージはピッタリって感じがするね」
「それだけ?」
「いや、最近のこの声の人のイメージって、イケメンなんちゃらにだけしか出てない印象だから。その昔は、シロクマだったけれど」
「扱い、何気にひどいわね」
「酷いって言われてもねぇ。他に特に思い入れがない。あ、アーサーの役が子安武人さんなのには驚いたね。個人的にはニュートラルルートの最後の見せ場に期待したいね」
「ベルフェゴール、それ、すごいネタバレよ。流石に怒られるんじゃないの?」
「いやぁ、この作品を買うのに新規は少ないんじゃないかな。声優投入、金子さんから新しい画家さんへの変更、いろいろなターニングポイントがあるけれど、新規顧客を見込めるだろうか?」
「見込めるか、じゃなくて見込まなきゃダメでしょ。新たなファンを獲得して金の流れを大きくするのよ」
「マモンがそれを言うと説得力が増すなぁ」
「アンタはただただ怠惰にプレイするだけだから、気が楽でいいわよね」
「否定できないなぁ(笑)。あ、あとチョーさん」
「誰よ、それ」
「スティーブンの声を担当している人さ。つい最近、名前を知った。マツダ博士のときのオトボケぶりといい、珍しく記憶に残った方だね」
スティーブン、という名前を聞いたマモンが顔をしかめている。
思い起こせば……ロウ&カオス勢は総じてスティーブンのことをよく思っていない。
正常な認識だろう。
「そうそう。ひとつ、聞いておきたいことがあったの」
「何だ?」
「アンタのことだから限定版の方よね」
「今回のディープストレンジの予約か?」
「それ以外の何があるのよ」
「もちろん」
「メーカー希望価格が1万6800円の方よね」
「当然」
「お買い上げありがとうございまぁすぅ(阿修羅商会のお姉さん風に)」
「何だよ、それが言いたかったのかよ」
「冗談はさておいて、購入の判断はどこ?」
「メガテンマニアの意見なんて参考になるのか?」
「新規顧客さんの購入の判断材料になるかもしれないじゃない」
「いや、新規顧客はどんな作品かもわからんものに一万超える商品の散財しねぇだろ」
「まぁ、ベルフェゴールの癖に正論言っちゃって生意気ね。で、ドコなの?」
「今までのメガテンのアレンジミュージック集」
「え? 気のせいかしら私が想像していた答えと違う気が」
「ひょっとして開発資料云々のことを言うとでも?」
「そうそう。それよ、レアモノじゃない。フツーはそう回答するわよ」
「そうか? 真・女神転生のことをメガテンと言い放つ購入者の場合、過去メガテンが発売したもろもろの書籍をコンプリートしているということへの想像は働かないのか? だから、今さら開発資料云々というネタでこの作者がアマゾンの購入ボタンを押したと考えた……と?」
「違うの?」
「甘いな。この作者はたまたまTwitterでアトラス公式が流したアレンジ曲を聴いて購入の意思を固めたぞ」
「ちなみに、どのアレンジ曲かしら?」
「邪教の館(煌天ver.)」
「非常にマニアらしい回答ありがとうございまぁすぅ(阿修羅商会……略)」
「お前も大概だよ!」
「さて、今度こそここまで、だろうな」
「そうね。発売までまだ時間はあるけど、情報が揃っているわけではないしね」
「ネタ的な情報提供とかないのかよ?」
「アタシのネタは……高いわよ?」
「高いというより、ボッタクリだろ」
「強欲の権化を前に何をいっているのかしら」
「あー、ハイハイ。それもそうだな。じゃあな、マモン。発売日以降にまた会おう」
「ええ、首を長くして待っているわ」
「尻尾は長いけどな」
「面白くないわ。座布団没収よ!」
ここで堅実な売り上げを出して、正統続編である『真・女神転生Ⅴ』に繋がってほしいですね。ペルソナも良いですけど、やっぱメガテンでしょ! という思いがファンにはありますので。(^-^)




