非常に個人的な、アトラス小ネタ集。
※作者の脳みそがアレなのは、今に始まったことではないので、ご理解があると助かります。
ベルフェゴールは煙草をくわえずに、ぼんやりと何か考え事をしていた。
煙草はゆっくりとだが確実に燃えていて、灰になったばかりの塊がボロッと落ちた。
落下先は畳。
気づかずにそのまま放置となると、状況によっては火事の原因になる。
「気をつけろ、バカ」
なので、シグが罵声とともに灰皿を差し出して、大惨事は未然に防がれた。
「んん? んんん……」
やや現実に引き戻されたベルフェゴールが、結局のところ、あまり吸わなかったタバコを灰皿で潰し、再び、考えモードとなる。
テレビを見ているわけでもなく、柱時計の時間を気にしている様子もない。
そばに湯呑と急須があるが、湯呑の中のお茶はとうの昔に冷めていて、飲んだ様子もなかった。
「何、考え事しているんだよ。ガラにもねーな。悩みがあるんだったら、耳ぐらい貸してやるぞ」
とシグがベルフェゴールの目の前に立ち塞がり、顔を近づけるや耳を傾けてきた。
ベルフェゴール、銅像のようにしばらくは動かなかった。
「おい、聞いているのかよっ!」
痺れを切らしたシグが再度発破をかけると、またも何やら呆然としていたベルフェゴールが我に返った。
瞬間、シグはサングラスの奥の目が光ったように感じた。
なので、急いで足を閉じ、両手で今履いているスカートを押さえた。
「チッ」
畳の上で顔をこすり付けんばかりに下げたベルフェゴールが舌打ちをした。
その視線からは、本来ならばスカートの中身が見えたはずだ。眼福だったはずだ。
だが、度重なる変態行為から学習した美少女のとっさのガードの方が早く、不発に終わった。
「慣れないことをすると、頭が痛む。考えるのは止めたのさ」
「だからって、変態行為を認める言い訳にはならねーからな」
と言いつつもシグのつま先が、未練がましく、起き上がる気配のないベルフェゴールの顔面に炸裂した。
見事な顔面蹴りを受けては、流石のベルフェゴールも頭が揺れ、大人しくするしかなかった。
―
「さて、今回の題目に対するネタの紹介に入るか」
「ようやくエンジンがスタートしたな。むしろ、おせーよ」
「まぁ、仕方がない。当時の状況を交えたネタ集だからな。記憶をたどるわけだから、少しばかり、慎重にもなるのさ」
「少し、かよ。ま、いいさ。で、お題目は何なのさ」
1 マスター
「一回目からよくわからないネタを持って来たな。説明してくれるんだよな?」
「もちろんだ。コレは『真・女神転生Ⅳ』のターミナル開設時に、アナウンスがプレイヤーに訊ねてくるときの一言だ。とある最底辺作家は、思わず『ドキッ』としたし、心の底から驚いたそうだ」
「はぁ?」
「真・女神転生Ⅳは2013年5月にリリースされた」
「ググるとそう出てくるな」
「かの残念最底辺作家の処女作は2013年2月。当時、あの最底辺作家はメイド設定のキャラに対し『ご主人様』と呼ばせずに『マスター』と言わせていた。
だからこそ、むっちゃ驚いたそうだ」
「自意識過剰って言葉、知ってるか?」
「それ、かの作家に言ってやってくれ。自分に言っても伝わらないからな」
2 ダグザ
「説明を頼もうか」
「んー。来年の2月10日に『真・女神転生Ⅳ FINAL』というのが発売される予定なんだが、まぁ、このダグザってのが、その作品の主人公に取り憑く魔神なわけだな」
「うん」
「ググればわかるんだけど、特にWikipedia先生に詳しく記されているけれど、某最底辺作家が可笑しく楽しく更新している例の悪魔サマと特徴が被るんだよね」
「例えば?」
「破壊と再生、豊穣の神、醜い外見、好色」
「考えすぎじゃね? シヴァとかアスモデウスとか他にも似たような特徴の悪魔、いるじゃん」
「シヴァは破壊神にして、男根の象徴。アスモデウスは好色の魔王。何か一つは該当するけど、そこまでクリソツには該当せんだろ」
「あー、そーかもねー」
「シグ、真面目に答える気が無いだろ」
「だってさ、だから何なのさ? って話じゃん」
「とある最底辺作家さんはダグザをベルフェゴールと同一視してニヨニヨしてるらしい」
「キモッ! そいつ、病院行った方が良くない?」
「だから、ここで発言しても、伝わらないって言ってるだろうが」
3 dance!
「え、まだネタあるの?」
「むしろ、単発で終わったら『ネタ集』にはならない。まだまだあるぞー。ヨシイクゾー」
「だから寒い季節にことさら寒いネタぶん投げんなって、言ってるだろうが!」
シグの蹴りの乱舞と余すところなく避けるフェゴールとのいつものやり取り。
そんな小休止を挟みつつ、話は続く。
「で、オチは何だよ」
「それでもまずは説明だ。今回のネタ元であるこの『dance!』だが、P4D(ペルソナ4ダンシングオールナイト)のオープニングに流れる歌だ、光るぞ」
「ツッコまないからな」
「チッ。で、肝心のオチだが、歌の一節? に『ファッキン』が出てきてなぁ」
「あ、わかった。『マスター』の時とおんなじ風に驚いたんだろ」
「そう云うことだ」
「だから(略)」
「dance!」
「って何なんだよ、その終わらせ方はっ!」
「最近の作者のなかでのマイブームらしい。知る人ぞ知るレベルだがな」
「くっくだらねぇ……」
「dance!」
「うるせぇよ!」
4 皆月翔
「P4U2(ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド)に出てくる謎キャラなんだが、コイツの肩書がウケた」
「あー、掟破りの駄洒落マシーンねぇ。他には?」
「ペルソナが出せないとか、体力低いとか、そういうキャラ特性」
「で、お前、これ使ってんの?」
「自分じゃなくて、作者がな。ペルソナ出せないのはデメリットではない。ペルソナという駆け引きを考えず、素の格闘ゲームとしてプレイすべし。すべし、すべし、あべし」
「あいっかわらず、寒いし、滑ってるよな。この受験生の敵め」
「ああんっ、急所攻撃はタンマ。意識が落ちるぅ~~」
5 ミロク
「非常に個人的な意見だが……」
「…………」
「マ○コ・デラ○クスによく似てるよな、アレ。口調がオネエなら確信犯だろ」
「シッ! この掟破りめ」
6 一新された悪魔絵
「コレは、『真・女神転生Ⅳ』の一部絵のことをさす。ズバリ、創造神側の天使たちの絵が、なんちゃって天野絵崩れで、ごちゃごちゃして汚かったんだな。特に、4大天使とリリス。モノクロでこの5体を並べられて、当て絵ごっこされたら、答えられない自信がある」
「そんなどうでもいいことに胸を張るなよ」
「いや、ここは張るべきだ。なんてったって、シグちゃんよりは胸があるからな」
「ほほぅ、てめー、死ぬ覚悟があるってことだよな」
シグは殺意のオーラをあらわにし、指をボキボキ鳴らしながら必殺の構えに移行した。
「36系にゲルに如かず……間違えた。三十六計逃げるに如かず」
ベルフェゴールは逃げ出した。だが、回り込まれた。
シグの目が光る。
「アッーー!!」
「――というルートは回避して、話、戻そうか」
「あ、てめー、力の無駄遣いしやがった。イサカにチクるぞ」
「俺はシグちゃんと乳繰りたいな~」
≫ベルフェゴールは、ぞわりと背中に悪寒が走る感覚を受けた。
直感でイサカのものと断定したベルフェゴールは、襟を正し始めた。
「真面目な話、メガテンの絵ってのは、金子一馬が引っ張ってきたからね。描けなくなったのか描く気を失くしたのかは知らんが、金子さんがやらないからと次を引き受けた人たちが一貫していた絵のイメージを無視して、好き勝手にやらかしたのが『真・女神転生Ⅳ』だった。これに対し、従来からのファンが一斉に反発した。かの最底辺作家も、アトラスのホームページにある『お客様ご意見窓口』に文句たれてた。特にある絵描きさんを名指しで糾弾してたらしい」
「誰を?」
「直接の指摘は避けるが、あえてぼかすなら前述した『天野絵崩れの――』ほかに『大天使アエーシェマと魔王アスモデウスの違いがわからない』とか。まぁ、Wikipedia先生曰く”魔王アスモデウスは、アエーシェマの伝承がユダヤに取り入られた結果だから”とのことだったが、だからといって、単なる色違いは手抜きだろ云々、偉そうにほざいとったな」
「今頃、穴があったら入りたい気分なんじゃねぇの、ソイツ」
「どうだろうか。少なくとも金子さんだったら、何かしらの特徴を残しつつ、『ニヤリ』とさせる悪魔の描き方をしてただろう。だからこそ、単なる色違いを許さなかったんじゃないのか。
ファン的には、金子さんから悪魔絵を継承するのなら、『センス』も取り込んでほしいわけだ。
それこそ極論にして暴論だが、『すっきりとシャープな曲線の絵を描くのが上手い絵師』はゴロゴロいるだろう? 何かしら光る特性……えーっと、なんて言うんだか?」
「サムシング・エルス?」
「そう、それ。だからこそ『一新した』と銘打つ以上は、その実力に期待しているわけだ」
「上から目線でヒジョーに偉そうだけどよ、お前、絵、描けるの」
「へのへのもへじもしくは象形文字のできそこないレベルだ」
「それで文句たれるわけ?」
「シグちゃんの理屈だと、少年漫画にて絵はうまいがシナリオの構成その他が壊滅的にダメな漫画家が連載していたとして、そいつに『ダメ』だと烙印を押せるのは絵が上手いやつだけになるよな。
で、絵だけの漫画家の手綱を握る役割を担う編集者の皆さんもその絵描きレベルにならなきゃいけない。しかし、人は『絵は描けないが他の才能にあふれている』というのがザラだ。
人と人は個性を認め合い、意識を高め合うことで更なる一歩を踏み出せるはず。だから、忌憚なく文句を言ってくれる存在というのは、むしろありがたく思わなくちゃな。もちろん、罵倒は論外だ」
「お前にしては珍しくまともに締めたな」
「ホレたかい?」
「チョーシに乗んな」
「……」
7 真・女神転生4の初回特典
「確か、アナーキーのペンダントみたいなネーミングの装備品があった。主な効果は『ほとんどの耐性が弱点になる』という……」
「なんだよ、それ。好き好んで装備するヤツ、いねーよ」
ベルフェゴールは、信じられないといった驚愕の表情を浮かべていた。
心当たりと云っても、それしか考えられなかったシグが「アイツか!」と答えてみると、ベルフェゴールは嬉しそうに微笑んだ。
「あの最底辺作家が創り出したベルフェゴールは弱い。これはATLUSからのメッセージだと彼は受け取ったようだ」
「あのさぁ、悪いことは言わないから、その作者、マジで病院通いをお勧めするぜ」
「本人いわく『これぞロールプレイング・ゲーム』だそうな」
「うわ、ダメだ。手遅れだった」
8 クリシュナ
「真・女神転生にて新宿都庁でインドラジットと相対していた笛吹き青年……と言えば、知っている人は知っていると思う」
「あの薄い布で全身をおおっていた変態一歩手前の」
「お前なぁ、本人の前でそんなこと言ったら、少し泣くぞ」
「お前のトップだって、似たようなものじゃないか」
「アイツだったら、むしろ喜ぶんだろうなぁ」
「こ、これがロウとカオスの感覚の違い……」
「まぁ、それは置いといて。このたび『真・女神転生4 final』にも出演が決まったんだな」
「へぇ~。今度の姿は……半ズボン」
「そう、半ズボンだよ。いい歳して、美少年風だからと半ズボン姿だ。もぅ、これはワシのアイツがいきり立って仕方がないな。ちょっと会ってくるわ」
>暫くして彼は、身体のあちこちにチャクラムが刺さり、棍棒のようなもので殴られた姿となって現れた。
「チョーシこいて後ろから忍び寄って、半ズボンにダイブしたらデスカウンターとかなぁ」
「生きているだけマシだと思えよ」
「そうだな。この悔しさはシグちゃんで代用しよう」
「こ・の・腐れ変態めっ!」
シグの本日一番のクリティカルヒットが、ベルフェゴールの玉袋に嫌な音を立てた。
再生能力でいずれ回復するとはいえ、そのあいだ、多いに苦しむベルフェゴールであった。
<本日の教訓>
親しき仲にも礼儀あり。




