自分の仕事を振り返る。②
かつてのコンビニの店員といえば、レジにボケーッと突っ立っていて、商品を手打ち登録しつつ値段を読み上げて、袋詰めして、お渡しするぐらいでした。
現在は、いろいろと小さなノルマが発生しています。
例えば、TCardの新規会員開拓。ニコニコ笑顔で我々は訊いてきます。
「TCardはお持ちですか?」
持ってないと、お客様が意思表示をされたら、すかさず「Cardを作りませんか?」と畳みかけます。
お客様が、手続きの煩雑さを口にしたら、「確かに、以前のカードの作り方は面倒でした」と認めつつも、「あの反省を活かして、ですね……」と、ポイントだけ貯まるTCardへとさりげなく誘導していきます。
大体は、このやり方でOKですが、時々、こちらの催眠誘導から醒めて、考え方を変えるお客様もいます。
その際は、あっさり引き下がることにしています。
コンビニは、お客様あってのコンビニです。不要な不快感を与えてはいけません。
そのお客様は笑顔で送り返し、もし、次のお客様がそばにいたら、さりげなくCardの話をします。大体の話を聞いてるせいか、一人目のお客様よりは損得勘定も働いています。
お客様の商品に、『値引き対象商品』があればしめたものです。
レジに設置してある、TCardを早速用いて、値引き効果を実感してもらいます。商品によっては、消費税分がチャラになるのもありますので、お得感が生まれます。
お客様が笑顔になれれば、こちらはそれでいいのです。あとは、「但し、」のフォローです。
TCard、対象商品の値引きとポイントを貯める分なら、すぐにでも使えますが、「ポイントを使うこと」だけができません。個人情報を記した用紙をお客様自身によって郵送してもらって、約3週間待つか、そんなに待てない人用に、スマホもしくはガラケーでの登録方法を案内差し上げます。
ここまで来てもなお、お客様の気が変わる場合もあります。
それでもいいのです。お客様がポイントカードを受け取ってくださった時点で、しかるべき時にポイントが使いたくなった時に、さりげなくアドバイスすればよいのですから。
……とまぁ、こんな感じでほかに、恵方巻や土用の丑、お中元・お歳暮、季節に合わせた様々なイベントにしっかりとノルマがついて回ります。
我々は、一昔のように「ボケーッ」と突っ立っているワケではありません。
本音を語るなら、TCard導入前の古き良き時代の、あの鷹揚とした空気が懐かしいです。
あの頃は、今みたいなノルマもなく、ただひたすら出勤日数が多ければ、給料が多く貰えました。
現在は、出勤日数を多くこなしても、最低賃金ぶんしかもらえません。
+αの報酬がほしければ、ノルマをこなし、売り上げを上げ、営業力と集客力を本部にアピールする必要があります。
いやー、営業力と集客力、なかなか難しいですよ。
何てったって、日本のコンビニは「さながら戦国時代のようだ……」と表現されるように、あちこちにコンビニができていますから。
正直、コンビニが増えるたびにお客様の数が減っていきます。
なのに、ノルマはきっついです。本部口癖の”営業力で勝負だ!”とか、アホかと。
大事なことなので、もう一度、言います。
私たちは、ただただ「ボケーッ」と突っ立っていているワケではないのです。