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ミズノショリガー!

※今回はフェゴールさんたちがスピンオフで登場しています。

「クロノトリガーを10回言ってみてください」

「クロノトリガー、クロノトリガー、クロノトリガー(以下略)」

「では、このゲーム動画をどう表現しますか」


 指示さししめされたモニター画面には、湖畔の風景が載っていた。

 どこからか風が吹き、水面の霧が薄く広くたなびいていた。


「水の処理が、良いですね」

「何でやねん」


 質問者はすぐさま回答者の頭をハリセンで叩いた。


「な、何ですか、いきなり」


 回答者は質問者の突然の行動にたじろいだ。


「ああ、失礼。つい、勝手に手が動いてしまった。次の質問に答えてくれないか」


 次の画像はどこかの国の有名な滝が映っていた。

 ドドドドドッと大量の水が滝壺へと落下している。そして、その音は重厚壮大で何とも言えない。


「水の処理が、素敵ですね」

「またそれか」


 質問者はまたもハリセンで回答者を叩いた。前回は頭にクリーンヒットだったが、今回は回答者が頭をガードしたので、代わりに隙だらけの脇腹を叩いた。


「な、何が気に入らないのですか、あなたは」

「最後の質問だ」


 今度は、洗面所だった。蛇口が壊れていて、水がひたすら出しっぱなしである。


「さっきからずっとそうだったけれど、どれもゲーム画面とは思えないほど水の処理が」


 質問者は回答者の返事を最後まで待てず、ハリセンを乱舞した。





「……とまぁ、こういうことがあったんだ」

「回答者、災難だったな」

「ますたーは、どうして『水の処理が』と言いはじめると怒るのですかぁ?」

「水の処理が、何なんだ?」

「素敵、とか言っておったろう。何が不満なんじゃ」

「ああ、そうですね。言い方を変えましょう。そもそも『水の処理』って何ですか?」

「知らないにゃー。魚の処理なら言えるのにゃ」


 フェゴールはラムのあごを手のひらで転がした。はじめはひたすらこそばゆいだけだったのが、やがて身震いするまでにとろける表情かおへと変わっていき、ついには横になった。

 健やかな寝息を立てるラムに対し、「ご褒美」とうそぶくフェゴール。

 久々に発動したゴールドフィンガーならぬゴッドフィンガーの威力に、シグ・ベレッタ・モナは身もだえた。皆、経験者だからだ。


「水の処理って何なのでしょうね」

「水処理なら聞いたことがあるぜ」

「ふむ」

「私もありますぅ。ニュースで原発問題のときにキャスターさんがそういってましたぁ」

「待て待て、お主ら。今はこのゲーム動画を観たうえでの『水の処理』をフェゴールは言っておるのじゃぞ」

「思いつかねーよ」

「答えられませんですぅ」

「回答は何じゃ、フェゴール」

「そうですね。わたくしもゲームをやる側であって作る側ではないので、ドヤ顔で言いきれませんが、『水の処理が』ではなくて『水を表現する際の演算処理が』が本当に言いたかったことなんじゃないのか、と」

「何だそれ?」

「ゲームの世界では、あの捉えどころのない水の動きを本物そっくりに表現する開発部の技術力を褒める傾向があって、それが『ミズノショリガーうんたら』という褒め言葉らしい」

「ふーん」

「そうですかぁ」

「興味なさげだね、2人とも」

「どうでもいいんじゃね?」「ですですぅ」

「で、お前が怒っていた理由はそもそも何なのじゃ」

「いやー、バカの一つ覚えみたいに、『ミズノショリガー』とか言っていれば褒めていると勘違いしているバカたれが限りなくウザかった」

「無視しとけ、そんなもん」

「ですよぉ。だって『ミズノショリガー』としか言えないのでしょう? でしたら、無視が一番です」

「うむ。周囲がかわいそうな目でそいつを見るようになるからな」

「そんなもんですかね」

「そういうものだって」「ですですぅ」「じゃな」


 ……とまぁ、こんなことがあって、悪魔の苛立ちは、小さな者たちによって鎮められた。


「じゃ、お礼を兼ねて、別の『水の演算処理表現力』でも拝もうかな」


 両手をワキワキさせて、荒ぶる鼻息を吐いてきた悪魔に対し、シグの蹴り攻撃が&ベレッタのパンチ攻撃が冴え、ラムとは違ったピクピクな倒れ方をする悪魔だった。

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