表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

突発的SS

私の未来型副交感神経

作者: 藤和クリスティン

 ちょっと悪乗りして流行りに乗ってみました。

 楽しかったです。


 

 明日から新学期、新学年、高校二年生のスタート!


 ――かと言ってやる気漲るでもない脱力系女子高生の私は、逆立つ寝癖を適当に撫でつけてのんびり太陽が頂点に達した頃に起き上がる。オールナイトで朝までゲームが出来るのも昨夜までと、残念がるのは駄目人間の証明だ。

 私が眠りに就く頃には地元のシニアチームに所属する野球少年の弟が練習に出て行った。全国でも強豪チームだから春休みなどの長期の休みだからこそ、練習日の朝は特に早い。実に絵に描いた青春である。

 反対に私は文化系の部活にまったり所属なので休日は暇を持て余す。……訂正、文化系でも吹奏楽部や演劇部など練習に勤しむ部活もあるので、我が校の文芸部がただ集まって季刊誌を出す程度の主立った活動しかないので暇なのです。否、やる事は部活以外もあるから全くのスケジュール白でもないが、この春休みはゲーム漬けだと決めていた。だからこれはある意味で充実した春休みの過ごし方なのである。


 因みに熱中していたのは中古で買ったRPGで候。既に一回クリアした後の二周目突入なのだけど、二周目以降が出現条件や、高パラでないとクリア出来ないでサブイベ、一周目で取りこぼしたコレクターの補完などでやり込んでいるのだ。しかしRPGはストーリーが長いのでやり込むのは結構な気力体力を使う。これが乙女ゲームならやり込んでも既読スキップ機能であっさりと全エンディング、スチル回収が出来るのにね。


 以前の私は割と乙女ゲームも愛好する方だった。スウィーツ系が好き……ではなく、主人公に目標設定があったり、謎やサスペンスに相対する中でいかに友好を高めるかという状況がしっかり描かれたものが好きなので、恋愛込みのストーリーを読むのが好きなんだと思う。恋愛小説を読むより好きだから、つまりは恋愛だけってのは肌に合わないのだろう。乙女ゲームに限らずRPGでもアクションでもそこにストーリーがあれば先を見たくて熱中しちゃうので、単純に物語中毒なのかも知れない。だから文芸部で細々と小説とか書いちゃうのだがそこは余談である。

 余談ついでに言うと、甘い言葉を吐かれてるだけのような印象しか残らない乙女ゲームはあまり好まない。ドラマに欠けるんだよ。なんかヒロインを好きになる動機が弱そうつーか。うん、素人の好き勝手な言い分だけどね。

 とまぁ、脳内でそんな能書きばっか垂れるから当然私には彼氏がいない、これ常考。

 見た目はそこそこ普通に気を使ってはいますよ。化粧をするとかじゃなく、清潔に整える意味で。年相応にときめくのは好きだけど、イコール恋愛にはならないのは何でだろう。運命の人に出会えていないからだ……なんて答えなら鼻で笑うけど。


 どうしてだか不思議な事に私は恋愛が出来ない。

 ゲームのように分かりやすいフラグが転がっていたりしたら私でも恋愛が出来ると思う?

 冗談混じりで友達に聞いたのは去年の今頃だっけか。そしたらその子には「だったら乙女ゲーの世界に転生しろ」と一蹴されました。

 分かってないな。私は今の自分にも家族にも友人にも環境にも愛着があるのに、乙女ゲームの世界に何故だか転生したと自覚しながら「やったぁ前世の知識で逆ハー!」なんて言う以前に前世の記憶の柵でそれどころではないに決まっている。そこまで前向きに状況を楽しめる性格とは思えない。

 まあ、乙女ゲーム転生はそこ突いちゃ進まねーよ前提なんだから、そこは抜きで設定を楽しめっつー話だよね。我が身で考えると拒否しますが、ウェブ小説で流行りの転生ものは結構読んでる。葛藤があると尚良し。やはり私はストーリー重視のようだ。


 乙女ゲームのような逆ハーものってね、フィクションで楽しむものだ。現実で楽しめる人はホント尊敬する。


 ははは。いや、マジでもう……楽しめたらどんなに良かっただろう……。


 私は頭を抱えた。

 目線を枕元に移せば長い時間放置してたスマホに目をやる。

 メールやSNSの受信ボックスを開けば、この一年で同じクラスで同じ委員会で仲良くなった飛鳥君に、弟の野球関連で知り合った別のクラスの野球部の高波君、立入禁止の屋上で偶然知合い、とある秘密を共有している周防君、何故かフィーリングが降りて私をモデルにしたいと言ってきた美術部の朝霧先輩に、部活査定で乗り込んできた風紀委員の瀬戸雪先輩、それから部活顧問で副担任だった日向先生に、よく行くTATSUYAのバイトさんで我が校のOBでもある鹿島さんらが名を連ねていた。

 しかもこれ皆さん全てそれぞれ個性的なキャラのイケメンだからバラエティーに飛んでるねツいてるねノッてるねってね。

 知ってますよ。この状態、なんて恵まれているかとか。

 しかもね、皆さんメールの内容が友好的なんだよ。休み前に私が「休み中は色々考えたい事があるから会えないなor遊べないよ、だからちょっとメールも難しいな」的な内容をメールなり直接なり伝えたので、休み明け目前になってから「明日からまた学校で会えるな、楽しみだよ」みたいなのが続々届いてるんだよ。

 もうなんだよコレー、全然パラメータ下がってねぇじゃんかー。

 ぐったりともっかいベッドに潜りたくなる。

 返信しねぇよ、しねぇかんな。




 以上の私の心境てわお分かり頂けたら説明の手間が省けて有難いのだが、いかがだろうか。

 現在、私は今生に於いて乙女ゲームのような逆ハー状態に陥っている。乙女ゲームだから逆ハーなどと思わないでくれ。ゲームにも難易度は寄るし、システム上不可能なものもあるが、同時攻略は基本、面倒で難しい。現実とゲームは一日の行動時間も大きく差異はあるけれど、それでもこれだけの殿方から色好いメールが来るなんてのは難しいだろう。

 加えると私は謙虚でもなく卑屈でもなく言えば、決して美少女ではない。また、彼氏欲しいと行動に移す恋愛ソルジャーでもない。

 そんな私が何故こんな逆ハーレムを築いたのか、そこがミソだ。


 私は超能力者である。

 笑わないで欲しい。だが中二で言っている訳でもないし、仮想と現実の区別がついていない訳でもない。そして超能力者と言ってもスプーンは曲げられないし念力も瞬間移動もテレパシーもサイコメトリーも出来ない。が、普通の人は持っていない第六の感覚という枠にはめるならばやはり私は超能力者と言うしかない。




 最初におかしいと思ったのは去年の春、新入生として迎えた入学式の日である。

 式典後に一人トイレに寄ったら見事に教室に向かう集団に置いて行かれ、校内を迷子になった時だった。不安から注意散漫で曲がり角で飛鳥君にぶつかってしまった私は彼を見て驚いた。

 美少年だから……という以前にその胸のハートのゲージは何? である。

 不思議だ、彼の心臓部にハートのマークと縦に伸びた透明のグラフのようなゲージがあったのだ。

 なんだこれ、奇抜な新入生用のコサージュかと目を凝らせば訝しげな飛鳥君。聞けば彼は出席番号が一番故、同じく女子で一番のパートナーの私を探すよう早くも担任に命じられて此処まで迎えに来てくれたらしい。

 そんな説明を生返事で流し、私は自身の知的好奇心を優先して、第一種接近遭遇で初めて顔を合わせる同級生男子の胸を触ったのだった。

「お前! 何やってんだ、痴女か」と言われましたさ。しかし彼のゲージにピンクの色が差したのを私は見逃さなかった。


 混乱したね。何故ならこのゲージは私にしか見えないし、しかも全ての人間に見える訳でもない。混乱はしたが、興味はそそられた。だからそれが見える特定の人に遭遇すると、敢えて接近し、持ち得る限りのコミュニケーション能力を発揮して交友を深め、一年かけて私はこの謎を追究していった。

 皮肉屋ではあるが、決して非友好的なコミュ障でもないのでこの探求は決して苦ではなかった。

 このゲージが現れるのは異性に限られる。少なくともテレビ越しの異性には視認出来ず、私の生活圏内で遭遇する人に見られるという傾向。

 ミステリー小説も好む私にとって、この謎は大変魅力的な餌だった。


 長い時間をかけ、あらゆる可能性を考慮した結果、年が明ける頃、たとえ非科学的だとしても、私は確信に近い一つの仮説に辿りついた。

 おそらくこれはラブパラメーターを示すゲージなのだと。

 しかも私に対する好感度とか、結論出すのも脳が震えたわ!

 随分初めのうちはライフポイントも考えたのだけど、だとすると初対面時の飛鳥君はライフ0の瀕死状態となってしまうので成り立たない。

 ハートがついているからね、当たりはつけていたのよ。ライフかラブかで。でも初対面はみんなゲージは空だし、親密度を高めればピンクが伸びる。試しに怒らせると下がる。

 それでも半信半疑で、まさかね、友好かも知れないしと手当たり次第に対象者と交遊をはかり個人差を見ながら観念したのだ。

「あ、これは恋愛指数だラブゲージだ」って。


 信じたくなかったんだね、その確信を持った時は皆さんかなり数値は上で、初期よりも簡単な事でコロッとフラグ立っちゃうからいつの間にか同時攻略ほぼ満タン状態、いつでも告白おkになってるんだぜ、今。

 私、マジでひでぇ小悪魔通り越して魔王だ。むしろ淫魔だリリスだ。


 ゲージはほぼ満タンなのでそれはもう皆さん気持ちがかなりだだ漏れ。それが態度でもパラメータでも分かるから私は困った。かなり困った。おおいに困った。コマッタさんである。

 ヤバいと思った私は年明けはパラ調整にはげんだ。わざと素っ気なくしたり、怒らせてみたり。

 でもさ、対面するとダメだよね。パラが分かるから傷ついたら分かってしまう。

 このゲージの高性能なところは、ただ好感度の増減が視認出来るわけでなく、その時点灯したゲージの色で感情も分かってしまうことが。怒りで減ったのか、悲しみで減ったのかとか、親愛で増えたか、……色を含んで増えたかとかね。

 好奇心を満たすために付き合い出したとは言え、かけた時間だけ私に芽生えた好感度ってのはあるんだ。つまり、対面上だとどうしても情と良心の呵責で言葉に出来ない拒否もあって上手くは行かなかったんだよね。


 なので私は決意しました。対面上が無理ならこの春休みは全ての誘いを断り、自宅に篭ろうと! 冷却期間を作ったのですよ。ま、結果、メール等の履歴を見れば甘い事が分かったけどね。


 いかん。フラグは折れてねぇ。

 どうしたものか頭を痛めるが、次の解決策は浮かんでいる。


 誰かとくっつけばいい。


 乱暴な言い方ですね。でも私が誰かと付き合えばその他は割りと大幅に下がると思うのよ。むしろ下がれ。

 標的を絞らず無節操に手を延ばしたから、こんな引く手数多の大岡裁きどころか八つ裂きにされそうに引っ張りだこに陥ったアホな私は、溜息。

 そこでまた新たな問題である。


 私には、本命が、いない。


「みんなカッコいいから迷っちゃうー困っちゃうー」なら殴りたいけど、分からなくもない問題だ。皆さん一芸に秀でたイケメンさんだからね。

 そうじゃないんだ、私は。

 カッコいいと思えるけど、誰一人にも恋をしていない。この一年、友愛以上の気持ちが持てなかったんだ。あんなにゲージを満タンにしといてね。

 もし告られても受け入れられない自信がある。

 こんな状態になって発覚した自身に驚愕だ。まさか私がこんなに恋愛不感症だなんてさ。


 泣きたい。

 この報われない殿方の輪と恋愛不感症な自分に。


 神様はどうして私にこんなギフトを与えたもうたか、持つだけ無駄な能力と溜まったメールを横目に私はがっくりうなだれる。


 明日なんて来なければいいのに――……。


 そう願ってスマホを握る。

 そこに恋はなくとも愛がない訳ではない私は泣く泣く全員に返信を打ってしまうのだが、今後の告白フラグの回避方法に重い重い息を吐くのだった。


 そんな憂鬱なヒロインもどきな私に、翌日、運命の出会いが待っていようとはきっと神様しか知らないのだが、その話はまた後日。


 悪ふざけSSでした。

 なんか最近、乙女ゲー転生小説系を読んだりして「自分が書くならどんなだろう」と思いながら書いてみた。

 ある意味のテンプレ、ある意味ではなりそこないです。

 ちなみに連載も何もないのであしからずです。お粗末様でした。




2013/04/01

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 王道っぽくていいですね。 今後も執筆活動を頑張ってください。
2013/04/02 11:37 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ